2011年03月14日

Operation Tomodachi

 報道を追っていると、痛ましさとともに、なんともいえない無力感に苛まれます。ツイッターの方が、イライラするツイートが稀にあるのでかえって助かる感じでしょうか。もっとも、大半は炊飯の時間をずらしたりと、首都圏の人たちのまともさにホッとしますが。テレビは危なくて、日曜日の午前に自衛隊が漂流していた男性を救出したという報道が接すると、うれし涙が出そうになり、惨状を見ると、重い涙が出そうになるので、どの道、今日からテレビどころではないので、「安全地帯」にいるなりのことをしておこうというところです。

 多少はツイッターの使い方がわかってきたので、土曜日あたりから"#Japan"タグで検索した結果を見ていると、流れの速さについていけないのですが、この非常時に世界中に善意の人たちが多いので、素直に感謝してしまいます。ここで見つけたのか、他なのかは自分でもあまりに多くの情報を見ていたのでわからないのですが、"Operation Tomodachi"には驚きました。通常の外交政策に関するアメリカの「善意」には複雑な心境なのですが、これはアメリカでなければできない、惜しみのない善意で、アメリカの同盟国であるということがどれほど幸運なことであるのかを実感します。以下で引用するツイートには、事実の描写のみです。これほど雄弁な善意は少ないので、無断引用ですが、こちらに保存しておきます。

Operation #TOMODACHI involves ~14 US #Navy ships, more than 100 aircraft and 1,000s of US servicemembers assisting or prepared to do so.less than a minute ago via web



 下の動画はニコニコ動画で検索したら出てきました。ミリオタではないので動画で出てくる艦船や航空機などがパッとはわからないのですし、今回の作戦そのものとは直接関係がなさそうですが、14隻の艦船、100機以上の航空機をイメージするのにはよいのかなと(当初の動画が投稿者によって削除されておりましたので、別の動画に差し替えました)



 国会の休会は大人の知恵でしょう。この事態に国務大臣をはじめ、国会に縛りつけておくのは得策ではない。当初、岡田氏が理解できないようでため息が出ましたが、落ち着くところに落ち着いたようです。もはや救命活動に関しては時間との闘いですが、政府の対応は、事後的に検証する必要はあるのでしょうが、現時点では最善かどうかまではわかりませんが、あまり不満はありません(もともと期待していないし)。情報の混乱はつきものでしょうから。1995年に比べれば、格段に危機対応が向上していると思います。

 福島第一原子力発電所に関しては海外メディアも注視していますが、わからないことが多いので、書くべきではないかと。首都圏の計画停電は、住民の人たちに負担が大きいのでしょうが、需要に対して供給能力が25%(NHKのニュースでは3月14日の予想では4100万kWの需要に対して3100万kWの供給能力しかないとのこと。テレビで見たので誤った数字かもしれません)ではあまりに厳しいでしょう。「平成22年度 数表で見る東京電力」という資料では1969年にピークが冬期から夏期に移っていることが確認できます(資料は東京電力のサイトからPDFファイルでダウンロードできますが、アクセスが集中して非常に重くなっているのでリンクは貼りません)。かつ1969年度の冬期の最大電力が1,342.4万kW、夏期の最大電力が1,356.9万kWであったのが、2009年度には冬期が5502.2万kW、夏期が5449.6万kWと概ね4倍に拡大しています(19頁)。興味深いのは、資料の30頁の図で、原子力がベース供給力としてほとんどの部分を担っている現状がわかりますが、石炭火力もベース供給力として今後、拡大していくというあたりでしょうか。東北地方太平洋沖地震による福島第1原子力発電所の事故によって、どの程度の期間になるのかはまったく予断を許さないのですが、資料44頁にある「エネルギー別発電電力量構成比の推移」では2009年度の場合、原子力発電が全体の28%を占めています。石炭火力は12%で原子力の半分にも満たないのが現状です。なお、火力では石油火力が占める割合は9%と極めて小さく、LNG・LPGが45%を占めています。1973年度には石油火力が実に73%を占めていましたが、石油危機を経験した後、1980年度には35%にまで減少してしました。対照的に、1980年度には既に原子力発電が22%を占めていました。「脱石油」を先進的に進める役割を果たした福島第1原子力発電所があまりに残酷な形で、その役割を終えようとしているのが現状なのでしょう。

 東京電力は2019年度には原子力発電の比率を48%にまで高める計画を掲げていますが、今回の福島第1原子力発電所の深刻な事態は、原子力発電の開拓に大きな抵抗を生む可能性が高いのでしょう。新しいタイプの原子力発電所を古いタイプの原子力発電所と切り離して進めるべきとの意見もみかけましたが、命にかかわるのかどうかを別として、被爆した方がいらっしゃる以上、東京都心に設置できるほどの安全性が確保できなければ、極めて困難な状況が続くのでしょう。同じことは他の大都市圏についてもいえるのでしょう。当面、ある一面においては米軍基地と同じ問題が生じ、首都圏の慢性的な電力不足が続く可能性があります。

 なお、東西の電力融通に関しては、資料55頁にわかりやすい図があります。中部電力と東京電力で新信濃で60万kW、佐久間で30万kW、東清水で10万kW(最大)となっており、首都圏の供給能力を補うのにはあまりに力不足です。余談になりますが、父親の仕事の関係で上越火力発電所の話を聞きました。燃料はLNGで中部電力が主たる建設者ですが、東北電力と協力して建設を進めています。現場では、東北電力向けの工事が進んでいますが、発電所自体は中部電力の60Hzの規格に合わせているため、50Hz(東北電力)に変換しなければなりません。これが原理的にはわかっていることが多いのにもかかわらず、技術者の総力をあげて取り組んでもトラブルが続いているとのことでした。2年前ぐらいの話ですので、既に解決しているのかもしれませんが、日本国内で電力の「断層」があることは危機に際して対応が難しいことを示していると思います。逆に、東海地震や東南海地震、南海地震などに類似する地震が発生し、60Hzの地域で供給制約が生じた場合には、東京で起きていることは他地域にとっても他人事ではないと思います。もっとも、言いにくいのですが、電力以前にどれほどの人命が犠牲になるのかを考えると、ゾッとしますが。

 なお、東京電力をはじめ電力各社が電力自由化に反対していたから、新規参入が生じず、供給不足が生じたのだという、電力業界を批判する意見をツイッターでみかけました。現実には電力自由化は卸売分野から始まって独立系発電事業者(IPP: Independent Power Producer)が参入しました。この段階では既存の電気事業者がIPPから電力を買い取るという限定的な制度でした。その後、小売分野の自由化も進み、2005年から契約キロワット数が60kW、受電電圧が6,000Vまで引き下げられました。特定規模電気事業者(PPS: Power Producer and Supply)から安い電力を買うことが可能な状態です。もっとも、需要家に配電するのは、既存の電力会社であることが多く、託送制度も設けられています。また、東京電力の資料98頁では1975年度から電力料金が1985年度まで上昇していますが、それ以降、電力料金は低下しています。資源エネルギー庁の「電力小売市場の自由化」では、自由化以降、電力料金が低下したことを強調していますが、自由化によらなくても、資源エネルギー価格の低下やヤードスティック競争などでも料金の低下がみられたことに注意が必要でしょう。料金が低下して電力消費が増加することは、通常の財とは異なって、資源利用の点から、また、近年では温暖化との関係で経済効率だけでは議論できない部分もあります。また、電力に関しては、製品・サービスの貯蔵が困難であり、ピーク時に対応するために在庫ではなく余剰設備を抱えざるをえず、電力自由化の議論が盛んだった頃に、報道であったように電力会社の人件費が高いというのはあまりに一面的でしょう。

 電力会社の回し者ではありませんが、単純な市場機構の活用では解決できない問題があるから自由化が限定的になっているのが現状だと思います。なお、発電電力市場の創設に関しては、経済学の教科書のように設計されていますが、取引価格のスパイクなどの問題もあり、電力会社も金融分野の知識を取り入れていますが、本来の金融業者が参入してくると、投機的な行動が電力市場を混乱させるリスクも指摘されています。被爆の問題がある中で、東京在住者のごく一部の不謹慎な意見にイライラしたので、つい長くなりましたが、現時点では事態の収拾が最優先であり、検証は材料が十分に揃ってからでも遅くないと思いました。
この記事へのコメント
今回の地震はとんでもないですね。

災害対策だけを考えると
周波数を統一することに意味があると思うのですが、
やはり費用、リスクを考えると難しいのでしょうか?

または、発電所単位で周波数を切り替えるなど、
電力のやりとりをすることは
やはり難しいのでしょうか?

全くの素人考えなのですが、
技術的にはどうなのか、気になっています。
Posted by 匿名 at 2011年03月14日 22:12
>匿名様

おはようございます。被災された方々はもちろんですが、首都圏の混乱に関する報道もつらい思いで見ております。

以下、電気事業の、とりわけ技術的な問題に関しては素人ですので、明確なリプライを差し上げることが困難ですが、ご了解ください。

発電所単位で周波数を統一するとなりますと、発電機そのものを交換する必要が生じます。統一する周波数が50Hzにせよ、60Hzにせよ、莫大な投資が必要となるため、災害対策を目的としても、費用便益に見合わないのでしょう。

発電所単位で周波数を切り替えるというのは、やはり困難なようです。本文で書いた上越火力の場合、発電機は中部電力ですので60Hzですが、東北電力が供給する際に50Hzに変換するとのことです。2年前と書きましたが、4年ぐらい前かもしれません。技術的なことはよくわからないのですが、発電機そのものを50Hz/60Hzの両方に対応させることは現実には難しく、発電された電力の周波数を変換するのも技術的には困難が多いようです。変換そのものというよりも、安定的に供給する装置が意外と難しいようです。

ちなみに、電力の東西融通に関しては、2007年頃に東電の方に聞いてみましたが、災害時には必要ではとの問いに、コスト面で一笑に伏されました。今回のように、最大で1000万kwもの需要不足に対応する周波数変換所を建設するのは、やはり非現実的なのでしょう。
Posted by Hache at 2011年03月15日 06:43
ご返答ありがとうございます。
やはり、莫大な費用がかかるのですね。

関東は計画停電(いまいち計画されていない気もしますが)のために
多くの鉄道が運休していて、
私自身、現在も職場へ向かうことができません。
この状況が続くと、経済活動にも
大きな影響が出るように思います。

優先順位を付けた停電をおこなうなど、
少しでも影響を軽減できるような
運用がおこなわれると良いのですが。
Posted by 匿名 at 2011年03月15日 09:27
>>匿名様

首都圏の混乱は報道等で承知いたしております。くれぐれもご自愛ください。

現状では、東電の最大発電能力の6割程度ですので、全面停電に至らないのがやっとだと思います。気になるのは、むしろ、夏場までに最低でも8割程度まで回復できるかどうかでしょうか。厳しい状況だと思います。

不謹慎かもしれませんが、東電の時価総額が3月15日終値で2兆円を切っています。まだ、下がるのかもしれません。東電のもっている技術や人材を考えると、さらに株価が下がれば、安い買い物ができるのかもしれません。いずれにせよ、資本市場で資金調達が困難になりますと、被災地、首都圏の電力再建にはさらに時間がかかると思います。
Posted by Hache at 2011年03月16日 00:20
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