2011年05月08日

電力融通の現状に関する「寝言」

 リプライで意を尽くさない点がありましたので、いくつか補足をしておきます。まあ、データをとれない部分が多いので、憶測が多いのですが。

 「新報道2001」で海江田経産相は、次の認識を示しました。(1)東京電力が東北電力に融通している。(2)仮に中部電力浜岡原子力発電所が運転を停止しても中部電力等からの融通はこれまで通り実施し、関西電力から中部電力への融通を促す。どうも、(1)が怪しいですね。

 東北電力の「平成23年3月の供給力概要」を見ますと、2011年3月全体の融通は1億5000万kWhです。3月11日以前と以後の差などがあるので乱暴であはありますが、ざっと見て1時当たり平均20万kW程度の融通を受けた計算になります。

http://www.tohoku-epco.co.jp/ICSFiles/afieldfile/2011/04/28/at2.pdf

他方、北海道電力のプレスリリースは、2011年3月13日から北本連系設備を利用して本州本面に最大60万kWの融通を行っていると公表しています。供給量のデータが見当たらないので、実績値がわかりませんが、仮に、東北電力が主に受電していたとしても、最大容量のすべてを融通していたとは考えづらく、東京電力にも実質的に融通されていたのでしょう。ここは憶測にすぎませんが。

http://www.hepco.co.jp/info/2011/1187601_1445.html

東京電力のプレスリリースは、福島第一原子力発電所に関する発表にほとんどを割いているため、残念ながら基礎データを含んでおりません。このため、誤っている可能性もありますが、次のように考えます。

(1)東京電力管内の需要家は、60Hz地域のみならず、北本連系からの融通によって恩恵を被っている。

(2)海江田経産相は、仮に浜岡原発が停止しても、東西融通を行うと明言している。

(3)中部電力・関西電力管内で電力需給が逼迫した際のことには明確に述べられておらず、首都圏の電力確保に最も高いプライオリティが置かれているように映る。仮に、今夏、全国的に猛暑が襲った場合、23区内は通常通り冷房が行われていても、中部地方や近畿地方で計画停電が実施される可能性が排除されていない。

 まあ、(3)は菅首相のみならず(この方に原発のみならず電力問題を理解することを期待すること自体が時間のムダ)、海江田経産相も菅首相から突然、言われて事態を把握できていないのではという単なる嫌味ですが。東京電力と中部電力の融通は公表されていないので、わからない部分が多いのが実情です。経済産業省が、無能な政治家による「政治主導」を排除して、全国的な視野で電力各社に融通を促していれば、次の可能性が高いのでしょう。

(4)東北電力の発電能力は女川原子力発電所の停止をはじめ、大幅に低下しているため、北本連系からの融通そのものは最大で60万kWhにとどまるが、北海道電力からの融通に依存している。

(5)周波数変換所から60Hz地域から東京電力が融通を受け、融通された電力の全部ではなくとも、部分的に東北電力に融通を行っている(東西融通の電力を東北電力に直接、融通しているという意味ではない)。

(6)中部電力浜岡原子力発電所の運転を停止した場合、東西融通の余地が少なくなり、被災地が集中している東北電力管内の需給がさらに逼迫する可能性がある。とりわけ、今から東北電力管内の復旧を重点的に行わない場合、需要のピークを迎える冬季が厳しい可能性がある。

 東西融通そのものは最大で100万kWhですから、被災地に与える影響はそれほどではないのかもしれません。他方、先の東北電力のデータによれば、2010年3月期には9億2100万kWhほど他社へ融通していたのが、2011年3月期には1億5000万kWhほど融通を受けていました。3月期でさえ、東北電力が、おそらくは東京電力向けでしょうが、他の電力会社向けに、現在、融通を受けている電力量の6倍もの電力を融通していたのが、逆に、融通を受ける状態です。震災による電力需給の逼迫は被災地が集中している東北電力が深刻な状態であり、復興をめぐる議論であまり問題にならないこと自体が不思議です(太陽光発電や風力発電を促進するとか、東京のテレビ局というのは、地理的には近くても所詮は他人事ですから無責任ですなあ)。

 ちなみに、中部電力の発受電量に占める原子力発電の比率が低いこと自体は事実ですが、2011年3月期には、水力発電の落ち込みが大きい要因とはいえ、15.8%を占めています。この分を火力発電で代替するのは容易ではないでしょう。今回の騒動は、菅首相の場当たり的な対応に振り回されているだけだと思いますが、しみじみ「苛政は虎より猛なり」を実感します。

http://www.chuden.co.jp/corporate/publicity/pub_release/press/3154221_6926.html


 久々にテレビをつけて将棋名人戦を見ましたが、森内俊之九段の差し回しが、羽生善治名人に相手に形を決めさせてポイントを稼ぐという強みを封じているのが目を引きました。第2局の印象が強いせいかもしれませんが、羽生名人が自陣を整える前に戦いが始まり、手を戻す暇がないというのは厳しいなあと。それにしても、終盤の入り口あたりで森内九段が指した▲5八銀は素人目には、すごいなあと。通常の対振飛車の形としては5七の地点の金と5八の銀が逆転していますが、先手陣が途方もなく堅くなったように見え、あとは眺めただけでした。陣形の差がそのまま結果につながったという印象です。

 中部電力浜岡原子力発電所の運転停止をめぐる問題を主として電力の供給制約として考えてみました。菅首相ご自身は自覚がないと思いますが、今回の問題は、短期的には電力の需給ひっ迫、長期的には原子力発電の是非など資源・エネルギー政策全般にかかわりますが、より重大な問題をはらんでいると思います。今回の「要請」を中部電力が受諾するのか否かは、現時点では確定しておりませんが、仮に、首相の要請を中部電力が受諾すれば、総理大臣が法律にもとづかない要請を行った場合でも、民間企業が実質的には従わざるをえないという前例となるでしょう。「法の支配」を覆す、あるいは民主主義の否定といった大げさな感覚はありませんが、露骨に言えば、政治的リーダーに碌な人物がいないのに、その資質に大きく依存する政治システムへと移行するのはあまりに危険だというところでしょうか。

 危機の時代にはトップダウンの意思決定が効率的であり、それが機能するためには政治的リーダシップが不可欠なのでしょう。しかし、それにふさわいしい人物がいなければ、ボトムアップのままでよいではないかというのが、今回のもう一つの「寝言」です。
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