2007年08月01日

見落とされている「格差」?

 あまり他のブログを読まないで記事を書いたら、もっと熱のこもった、真摯な分析を拝見しましたので、安倍総理の話題は打ち切りです。一言だけ「時の最果て」らしくお下劣なことを書いておきます。若い人にプレゼンの練習をするときに、安倍総理の演説を見せて、「なにをおっしゃっていたかわかる?」と尋ねると、「ええと…」となります。要は、悪いプレゼンの見本として活用していただいております。『日経』の2007年1月3日の塩野さんがインタビューで国際会議における安倍総理の演説の内容をせめて半分にしてもらわないと国益を損なうとおっしゃっていましたが、むべなるかなというところでしょうか。幹事長時代の安倍総理と岡崎久彦さんの対談をネットで拝見しましたが、北朝鮮の脅威で日本人が日米同盟の大切さを痛感したという結論部分にいたるまでのプロセスが異常に複雑で聞き手役の岡崎先生も安倍幹事長(当時)の言葉に真剣に耳を傾けつつも、結論に至るまで理解が難しいご様子でした。まあ、自民党には安倍総理の首を頂こうという覇気のある方は見当たらないですし、民主党も党首候補はいても総理候補が見当たらないので、失礼ながら、安倍政権がじりじり出血して衆院解散後はさらに凡戦という感じでしょうかね。無節操なのが丸出しですが、集団的自衛権の行使ができないという現行解釈の下で当面10年をどう凌ぐのかということも考えておかざるをえないかなと思います。

 参院選に関して唯一、驚いたのが47都道府県の選挙区のうち、いわゆる「1人区」が29、全体の6割強という数字でした。参院選も半ば以上は小選挙区制に近い状態になっているわけで、今後も極端な結果になるのかもしれません。

 今回の選挙は、「時の最果て」としてもかなり変な「寝言」ですが、「国家の品格」対「格差社会」の対決だったとも見えるわけでして、書籍の売れ行きはともかく、表面的には「格差社会」に「軍配」があがったようです。どちらも「同根」と見るのが「時の最果て」のスタンスですので、正直なところ、どちらに「軍配」があがってもどうでもよいのですが。民主党の農家への「個別所得補償制度」にはしびれました。国語が苦手な私には農業の活性化ではなくて、農業はホスピスに入る状態でカンフル剤ではなく、麻薬を打って痛みを和らげようというのはなるほどと感心してしまいました。「格差是正」は無理だから、格差の痛みを和らげようというわけで、カネがかかりそうなのでご免こうりますが、このわかりやすさには感心しました。

 格差がらみではかんべえさんがしきりに愛知県の有効求人倍率を取り上げていますが、雇用の、それも地域間のミスマッチの解消は厳しいと思います。『三原・生島のマーケットトーク』では都道府県単位の雇用行政の是正を挙げておられましたが、沖縄県の方が愛知県で働こうという気になりますかね。かんべえさん自身が愛知県に何度も足を運ばれて魅力を感じないとこぼすところへ雇用機会だけで移動するかなあというのが率直な実感。

 愛知県の構造的な人手不足は当面、解消するのは難しいと思います。雇用の内容にもよりますが、他の都道府県から若いうちに愛知県、あるいは東海地方に移動する機会の一つとして大学進学がありますが、非礼を承知で申し上げると、愛知・静岡・岐阜・三重の東海4県はともかく、他地方から見て積極的に進学したいという「名門大学」がほとんどないというのが現状です。「めいだい」と言って名古屋大学を真っ先に思い浮かべるのは、愛知県と静岡県でも浜松あたりまでぐらいでしょうか。静岡市になると、名古屋大と明治大のどちらになるのかが微妙です。岐阜や三重は土地勘がないのでちょっとわからないです。余談ついでですが、両親がとりあえず「目指せ!名古屋大学」と言っていたので、高校2年生ぐらいまでは名古屋大学を目指しておりましたが、恥ずかしながら高校3年生になってから旧帝大だということを知ったというぐらい、ローカルなイメージです。さらに、放談ついでに静岡の中学生の大半は静岡大学(しずだい)を目指すようですが、たいていは無理となるわけで、まあ似たようなものかと。手遅れ感がありますが、どちらも素晴らしい大学ですよとフォローしておきます。

 いずれにせよ、愛知県の景気が安定しているのは事実ですが、内閣府の「平成16年度県民経済計算(平成19年3月6日)」データを見てちょっと驚きました。1996年度(平成8年度)から2004年度(平成14年度)のデータが掲載されていますが、中部と近畿の各ブロックの県内総生産(実質・連鎖方式)の合計の差が2兆円弱にまで縮小していて、同期間内の平均成長率は近畿が約0.5%、中部が約9.8%です。なお、関東ブロックは同期間で平均成長率が約9.9%。統計的にはかなり粗い部分もあるとは思いますが、関東・中部が成長し、近畿が停滞していたことが一目瞭然になります。さらに、中部・近畿のなかで東海4県(岐阜 静岡 愛知 三重)と京阪神(京都 大阪 兵庫)をとりだすと、前者の平均成長率が約10.7%、後者がなんと−0.3%です。もちろん、単純な規模では中部が関東の4割弱、近畿が4割強なので関東の成長率の高さは、成長率を計算する際の分母の大きさを考慮すると、際立っています。地域間格差という場合、たいていは大都市圏と農村部との格差を指しますが、大都市圏でもこれだけ成長の「格差」が広がり、とりわけ近畿圏が停滞した状態で続くと、まず近畿圏の生活水準を維持することが困難になるのは当然としても、西日本の地域に波及効果や雇用機会を与えるという役割を期待することは難しいように思います。中国や山陰、九州あたりから他地域に移動する場合、まず京阪神が浮かび、次に首都圏が浮かぶようです。最近は、首都圏への指向が強まっているという話も聞きます。このあたりは私の調査能力の不足で正確な意識調査が見当たらないのですが、東海圏のプレゼンスは首都圏や京阪神圏と比較すると、非常に低いのだろうと思います。的確な雇用に関する情報が全国的に提供されても、現実にはあまり効果を期待しない方がよさそうです。もちろん、やらないよりはマシだとは思いますが。

 率直なところ、地域間の雇用のミスマッチの解消は、現在のところ、有効な政策手段がないと思います。戦後復興期から高度成長期にも、様々な「二重構造」が指摘されましたが、成長率の上昇が決定的で、農村部から都市部への人口移動が成長を支えたというのが、大雑把な構図でしょうか。雇用機会を地域に広げるために工場などの立地の分散を図る政策をとった先進諸国は少なくありませんが、めぼしい成果は挙がりませんでした。ちょっと悲しいのですが、これらの事情に政策レベルで対応するとすれば、人口移動や地方への諸事業の分散を妨げているディスインセンティブを丁寧に取り除くことぐらいしか思い浮かばないです。数年前に地方での新しい産業集積を生み出すインセンティブを与えたり、はては起業家支援までインセンティブの一つとして取り上げられましたが、費用対効果の点で分析している文献を見たことがなく、基本的に成長というのは民間部門の自発的な経済活動の結果というあまりにベタな私の思考様式からすると、なんとも無駄なことばかりやっているように映ってしまいます(根本的に意地が悪いので、これらの施策は結局、新しい利権づくりじゃなかったのかなと。これは寝言そのものですけれど)。

 「続き」は、内閣府のデータの要約です。お好きな方は御覧ください。

(追記)「続き」を含め、平均成長率の値に誤りがありました。下線部を訂正しました(2007年8月1日)。


【地域ブロックの内訳】

  関東:茨城 栃木 群馬 埼玉 千葉 東京 神奈川 山梨 長野
  中部:富山 石川 福井 岐阜 静岡 愛知 三重
  近畿:滋賀 京都 大阪 兵庫 奈良 和歌山



【関東・中部・近畿の各ブロックの県内総生産(実質・連鎖方式)】 

     1996年度 2004年度   平均成長率
  関東 190,500,535   209,281,068    9.9%
  中部 75,658,416 83,063,173    9.8%
  近畿 84,332,757 84,804,425    0.6%




【東海圏と京阪神圏の県内総生産(実質・連鎖方式)】

        1996年度 2004年度   平均成長率
  東海4県計  62,845,433  69,562,879    10.7%
  京阪神  71,500,125 71,272,571 −0.3%
この記事へのコメント
遅ればせながらレスを。

京阪神の平均成長率はこのところマイナスなのですね。関西人の私は、暗澹たる思いであります(笑)
実は訳ありまして、私は転職と言うものをしました。人材紹介会社を利用しての転職活動でしたが、やはり東海方面の人材需要が強いみたいですね。
三河・豊川の話も出てたのですが、結局大阪の製造業に(小企業ですが)勤めることになりました。神戸から大阪への引越しになりましたが、関西圏に残れて良かった、と言うのが正直なところです。停滞している関西ですけど。
関東・関西に比しての東海圏のプレゼンスの話ですが、やはり「文化」の問題なんでしょうか?全国ネットにおける東海テレビのポジションなんてのを考えてしまいます(笑)
Posted by やすゆき at 2007年08月08日 23:02
>やすゆき様

平均成長率の計算が間違っておりますので、訂正をしなくてはと思っております。修正が遅れていることをお許しください。

名古屋出身者からすると、首都圏は別格ですが、京阪神と比較すると、別の意味で田舎だと思います。京都、大阪、神戸とそれぞれ独自の文化を誇る都市というのは東海圏ではあまり見当たらないと思います。

他方で、京阪神がそれぞれ個性があるがゆえに、よそ者には連携がうまくいっていないようにも見えます。経済的な問題以上に、たとえば琵琶湖の浄化など滋賀を含む形で行政だけでなく、いわゆる「草の根」の運動が目立たない印象があります。これは私の認識不足かもしれません。

東海テレビは…。正直なところ、中日戦を試合終了まで中継する愛郷心の高いテレビ局というイメージぐらいしかなく、あとはガンダムぐらいでしょうか。個人的には浜松・静岡あたりが気候も温暖で、とくに浜松の人は気性がからっとしていて住みやすい印象です。両親は沼津が一番いいと言っていますが。

大阪の環状線に乗ってちょっとびっくりしましたが、緑が少ないのですね。神戸や京都はそうでもないと思いましたが、景気には悪影響があるのでしょうが、オープンスペースを確保することに疎かったのかなと思います。地域活性化という話題になると、産業振興に目が移りがちですが、総合的な都市政策を考えないとなかなか難しいのかなと思います。

最後になりましたが、ご転職が無事に終わり、おめでとうございます。今後も、コメントを賜りますよう、お願い申し上げます。

Posted by Hache at 2007年08月10日 05:09
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