2007年09月23日

リーダーの育て方(後編)

(@時の最果て)

ボッシュ:ふう。あまりに急な展開でびっくりしたわい。あんまり大したものがなかったが、ラファエル総帥の歓迎会じゃな。
ラファエル:すみません。お気遣いを頂いたようで。おや、このワインは、地中海周辺とは違いますね。
ボッシュ:時代も違うことも大きいが、最近は南米、昔の新大陸でもワインがとれるんじゃ。
ラファエル:……なるほど。びっくりですね。
ハッシュ:ところで、おぬしはあのデブとどうして知り合ったんじゃ?あのデブにあまり関わらない方がよいと思うんじゃが。
ラファエル:前も少しお話しましたが、Hacheさんは私たちの商会を七つの海で交易だけでなく、探検から海賊の取締りまで行えるようにした影の功労者なんです。あえていえば、影の総帥というところでしょうか。以前、リスボンに遊びに来てくれたので、ずいぶん話し込んでしまいましたが。
ハッシュ:……影の総帥か。あのデブにそんな才覚があるとは思えないんじゃが。
ラファエル:なんでも、パソコンという機械で私たちを導いていたようです。
ハッシュ:まさかと思うが……。ところで、おぬしが総帥ということはリーダーそのものじゃな。
ボッシュ:なるほど。ワシらでは話が行き詰まっていたゆえ、ここは手助けを頼むには絶好じゃな。
ラファエル:……はあ。
ハッシュ:あのデブがリーダーの育て方についてワシたちに語れと無理難題を押し付けたんじゃ。おぬしが来るまであれこれ話しておったんじゃが、どうも見通しが悪い。ワシたちは古代王国では「賢者」などと呼ばれておったが、実態は好きなことをやっていただけなんじゃ。ところが、あのデブが何を勘違いしたのか、ワシたちが指導者育成にも関わっていたように思い込んでおってのお。実際とは違っていて、参ったんじゃ。
ラファエル:私だって同じですよ。海の向こうがどうなっているんだろうと思って旅にでただけですから。
ボッシュ:ラファエルさんの商会は、どのぐらいの規模かね?仕事に携わっている人数や事業内容など、もう少し詳しい話を教えてもらえんかね。
ラファエル:そうですねえ。海での活動だけでゆきますと、それぞれの海域で活動している提督は7人。予備役になっている人を含めると、10人ちょっとです。私は、船乗りからは引退しましたが。メインの事業はやはり交易です。今に至るまでは他の商会や他国の軍とも戦闘を行いましたが、今ではカストール商会が全世界の海を通した交易を事実上、独占しています。海賊もほとんどがおとなしくなりましたし。交易に携わっている人数からすると、提督以下、水夫や交易所での取引の従事者などを含めると、ざっと1万人前後でしょうか。交易からえられる収益の大半は、交易に再び回しますが、最近は航海で犠牲になった水夫への慰霊や世界中から集めた文書の研究へも相当、お金を投じております。
ボッシュ:……。ワシの店とは桁違いじゃな。
ハッシュ:いよいよ、リーダーにふさわしいな。本題とはそれるが、現役時代のおぬしが、仲間をまとめる上で一番、心を砕いたことは何かね?
ラファエル:……。むずかしいお話ですね。最初は、気心の知れた仲間だけでしたから、統率というのはあまり考えませんでした。航海も、最初はほとんどが沿岸をたどって行くだけでしたから、安全でしたし。ただ、途中から仲間が増えて、他勢力と戦うようになると、統率を意識していたかもしれません。遠洋航海も増えると、水夫の不満も増えますし、仲間も疲れてきますから。
ハッシュ:そのとき、どんな心構えだったんじゃ?
ラファエル:私がいい加減なだけですが、とにかく寝てリラックスすることに専念していました。
ハッシュ:寝る?
ボッシュ:これを聞いたら、あのデブが喜ぶぞ。
ラファエル:……。私が疲れた顔をしていると、仲間は気を遣いすぎますし、水夫の士気が下がります。かといって、私は疲れているときに虚勢をはるタイプでもないので、船ですから限界もありますが、みんなに疲れた表情を見せることだけは避けようと。それに戦闘となると、斬込隊長が一騎討ちをするのですが、万が一、敗れると私の出番になりますから、体力が第一で次に気力でしょうか。当たり前ですが、疲れている状態では適切な指示も出せませんし。常に体力と気力を維持することが最優先でした。
ハッシュ:当たり前すぎる気もするが、なるほどじゃな。しかし、おぬしが優れていても、仲間がダメだとどうしようもあるまい?
ラファエル:正直に言えば、操船から交易、戦闘、他勢力を追い落とす謀略など私が最も優れているんです。でも、仲間にできるだけ任せて、口を出さないようにしました。当然、ミスもするんですが、あまり責めたりしません。ただ、失敗を挽回しようと力まれるのも困るので、適当に配置を換えたりなど、このあたりは人を見て対応を変えました。
ボッシュ:なんだか、あのデブに聞かせてやりたいのお。
ハッシュ:しかし、それだけでは話は済むまい?おぬしの言うことを聞かないものもでてくるじゃろ?
ラファエル:幸いですけれど、深刻な対立はほとんどありませんでした。ただ、意見がどうしても一致しないときには、仲間に好きにしゃべらせて、賛成も反対もせず、話を聞いて一晩、寝てからもう一度、意見を聞きました。不思議と、すっきりと相手が考えを整理してくるので、即採用。言いにくいですが、その程度の判断ができなくては、いつどこで座礁するかもわからない船に乗って生き残ることはできませんから、私も仲間を信頼していますし。それでは済まない対立は影の総帥とはありましたが、仲間どうしでは、これでなんとかなりました。
ボッシュ:あのデブとソリがあわないとはまったくもって健全じゃな。
ラファエル:……。そういうわけではないんですが。気がついたら、副官が交代して、いつの間にかに尊敬する提督と戦うはめになりまして……。
ボッシュ:あのデブらしい。陰険じゃな。まさに、陰謀じゃ。
ハッシュ:しかし、それなりの理由があるじゃろ。
ラファエル:ええ。私どもの商会の本拠地はリスボンですが、アルブケルケ軍が無視できないシェアを握っているので、戦闘をして勝ってシェアを削るか、策謀でシェアを削るしかないんです。気の進まない戦いでしたが、結果的に、本拠地を固めて地中海の西側を抑えて、遠出をするのには万全になりました。
ハッシュ:ということは、旅の航路はあのデブが決めていたのかね?
ラファエル:指示は私が出しますが、事実上、影の総帥に操られていたようなものです。序盤は、船の性能も低いですし、私をはじめ、仲間のレベルが低いせいでしょうか、ほとんどが沿岸航海で、無理のない船旅です。中盤のアフリカ航路はなかなか辛いのですが、補給にはとにかく気を遣いました。東の果てまで行ってからですね。かなり無理な航海をしたのは。一切、寄港せずに、3年間も航海を続けたこともあります。
ボッシュ:むごいのお。あのデブは自分のことじゃないと思うと、人殺しのようなことまでやりかねんからのお。
ラファエル:厳しかったですが、それまでに厳しい航海に耐えるレベルにはなっていましたから。逆に、若い時期にいくら苦労しても、中年に差し掛かる頃に苦労しないとダメだなと。副官も水兵の不満に手を焼いて何度も港に戻りましょうと進言するのですが、こういうときはすべて却下しました。この時期には戦闘を仕掛けられるリスクは少ないので、航海を続けて仲間のスキルを挙げるチャンスでしたから。幸か不幸か、スキルを試す機会がありませんでしたが。手回しがよすぎて歴史が変わっちゃったという感じですね。
ハッシュ:(ううむ、あのデブめ、やはり)ワシにはチンプンカンプンじゃが、苦労はするときにしておくものかもしれぬな。しかし、見たところ、おぬしは軍人という感じではないな。戦闘は素人だったはずじゃないかね?
ラファエル:正直なところ、最初は、刀を抜くだけで震えました。練達のゲルハルト提督が仲間になってひたすら訓練です。最初は戦闘もまったくありませんし。でも、訓練しただけではあてになりません。私の時代の船は帆船ですから、まず、風向きから強さ、海の状態、すべてが戦闘にからんできます。戦闘のスキルと体力は当然として精神力、そのときどきの精神状態、敏捷さ、有利な位置に船をもってゆく操船の技術など総合的に問われてきます。交易も楽じゃありませんが、戦闘はすべての能力が試されます。……ただ、私たちを操っていた方は欲張りなのか、ほとんどが白兵戦でしたが。
ハッシュ:はくへいせん?
ボッシュ:それはな、海戦で水夫どおしが戦闘するんじゃ。陸での戦闘もきついが、海戦で白兵戦となると、逃げ場がないから、勝ったほうも相当ダメージを受けるはずじゃ。そこで、大砲を乗っけて、敵の船を沈めようとなる。さらに、今ではミサイルというもので狙い撃ちじゃ。もちろん、まともに食らってはかなわないから、対空システムがものをいう。……ついワシがしゃべってしまったが、おぬしの時代なら、大砲があっただろうに。わざわざ、白兵戦かね?
ラファエル:戦闘に勝つだけですと、射程・砲撃力が最高のキャロネードを積んでいますから、あっという間に敵艦を沈めることができるんです。ただ、敵の旗艦を拿捕すると、賠償金みたいなものでしょうか、大量の金貨が手に入るんですね。どうも、影の総帥はそれを逃すのが惜しくて、白兵戦の連続でした。さすがのゲルハルトも「最近は年齢を感じます」と愚痴をこぼすほどでしたし。
ボッシュ:まったく、あのデブのやることときたら……。ところで、戦闘で決定的なのは、なんだろう?
ラファエル:……。難しいですね。船の性能や武器は当然として、やはり経験でしょうか。それも勝つ経験です。まず、実戦が伴わないと、訓練だけでは想定外のことがびっくりするぐらい起きます。さらに、誰でもそうでしょうが、かならず勝つという確信はもてないんです。だから、勝ちを経験しないと、すぐに弱気になってしまう。勝ったり負けたりして強くなるのが普通でしょうが、私が思うに勝った経験がないと、危ういです。とにかく、訓練で抜群でも実戦ではからっきしというのは散々見ましたから。
ボッシュ:現代ではちょっと古臭いが、そんなところじゃろうな。
ハッシュ:ところでリーダーに最も必要な資質は何かね?あるいはカストール商会じゃったかな、その総帥にふさわしい資質じゃな。
ラファエル:……。あまり考えなかったのですが、幼なじみがちらと漏らしていたのは、途中からお前が指揮していると船が沈まない気がしたということでした。私自身は、そんなつもりはなかったのですが。自分が指揮下にあったら、確かにこの人が指揮していたら、船が沈む気がしないというのは心強いです。
ハッシュ:なるほどな。あとはどうかね。
ラファエル:Hacheさんによると、信義でしょうか。商売でも信用が肝心なんですが、それと似ていてちょっと違う感じですね。
ハッシュ:信義か……。あのデブに最も不足しておるな。
ラファエル:……。
ボッシュ:おーい、おしゃべりもいいが、料理とワインを召し上がれ。シェフが話を聞いておおはりきりじゃ。しゃっべってばかりでは冷めてしまうぞ。特別な客人にしかださない、ボッシュの店の極上の品ばかりじゃ。メニューの名前を決めておらなかったが、これで決まりじゃ。「ラファエル・スペシャル」。
ラファエル:そ、それではお言葉に甘えて。
ハッシュ:変なお題を振られてまいったが、よしとするか。ワシたちはご飯を頂くゆえ、あとは適当に頼むぞ。

 えー、どうまとめろと。私も、「ラファエル・スペシャル」が食べたいのですが……。ダイエットをまずしろと、そういうわけですか。そうですか。

 本来なら、安倍総理の辞任表明を受けて何かまとめが必要なんですが、まず、違和感を感じたのは、戦後生まれの政治家への信頼が失われたという話でして、それでゆくと戦前の政治的リーダーシップの欠如は何なのよという感じ。イギリスで首相の座を降りたブレアさんが日本で総理をやったら、「世代交代」というのもびっくりしますが。辞任表明が唐突でタイミングが最悪という点で、安倍政権の「功績」はほとんど失われてしまったと思いますが、世代で政治的リーダーシップが変わりますかね。私が日教組所属の教員だったら、「指導力不足どころか欠如している総理にあれこれ言われたくはないわね、フフン」というところでしょうか。もちろん、悪い冗談ですよ。

 総裁選でどちらを応援するかというのも興味がわかなくて、失礼しちゃう話ですが、こんな状況でも手を上げる方というのは立派だなあと。これは皮肉じゃありません。間違っても、私に声をかける方はいらっしゃらないわけですが、「今日、耳、日曜日」と世代がわかるベタベタの話で終わらせてしまいそう。リーダーなんて御免真っ平という人間のリーダー論なんてあてになりません。

 某大手HPはまだしも、その他の麻生さんを応援しているサイトを見ると、福田さんが総裁、そして総理になったら日本が滅亡するかのごとき雰囲気でちょっとねえという感じ。「麻生陰謀論」を記者クラブで尋ねる記者もあれですが。まあ、外野を見ていると、それなりの国民にはそれなりの政治的指導者がふさわしいでしょうねと他人事のように見てしまいます。

 それにしても、議院内閣制というのは、意外と過酷なのかもしれません。戦前でも政権交代はあったわけで、あるコンセンサスの下でリーダーが育ってゆきました。そのコンセンサスが崩れたときに、政治的リーダーシップが機能停止したという印象があります。端的な表現をすれば、ウィルソン主義の下で同盟が解体されたとしても、英米の覇権に挑戦する側に与さなければよかったわけで、昭和史の「闇」は世論が英米の覇権に挑戦する側に回ってゆくなかで、それを抑える政治的リーダーシップが政軍問わず、発揮できなかったのはなぜかということでしょうか。

 つくづく思うのは、この国の官僚は優秀すぎるのではと。どうしようもない野党を宥めるために国連決議をださせてしまうというのは、並々ならぬ仕事ですが、どうでますやら。国連という枠組みは、今日では集団安全保障という枠組みだけでは議論できない部分も大きく、この国が周回遅れもいいところの状態だったのが、宮澤内閣以降、ようやく遅れを取り戻してきた状態。「ガソリンスタンド」って何を考えているのやら。気がついたら、もう給油はいいよ、日本の協力は当てにしないからとなって、「米朝接近」の次に「米中接近」となると、もう目も当てられないですね。否応なく、経済だけでなく政治や軍事においても相互依存が深化している現代に歴代の自民党内閣は、完璧はありえないですが、地を這うようにして対応してきました。遺憾ながら、それが政党を超えたコンセンサスとはなっていないように映ります。人がいないわけではなく、官僚機構も腐敗や堕落を免れないでしょうが、仕事はできる。要は、限られたリソースを有効に使うよう説得できる方が欠けているわけでして、そのような資質です。「リーダーの育て方」というお題に答えるだけの能力はありませんが、意識的に事前に設計することに限界があるというどうにもならない部分を認めることからはじめるしかないのかもしれません。

 私信ですが、とりあえず、福田総裁は歓迎。かんべえさんのおかげで、中日のリーグ優勝フラグが立ったことを喜んでいるわけではありませんよ。フフン。ったく。阪神なんかに喩えるから。中日にしておけばよかったのに。ぶつぶつ。まあ、票数からすると、クライマックスシリーズ(それにしてもどういうネーミングセンスだ?)への挑戦権はありでしょうから、まだまだですかね。
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