2012年11月01日

まあ、なんでも、いいですけれど。 日銀編

 「日銀は阿呆だ」の方々には私には見えないものがお見えになるようで、ほうほうという感じ。日銀は消費税率引き上げに伴う駆け込み需要まで考慮に入れているようだと書くと、日銀が世界で最悪の組織にお見えなんだろうなあと。どこで書かれていたか、パーマリンクを貼ってもよいのですが、貼り返されると、アクセス数が増えて面倒なので、興味のある方は勝手に探して下さい。まあ、なんでも、いいですけれど。

 まるでやる気がないのですが、出展が明示されていないので、リーダーを見ていると、ああ展望レポートが出る時期だと気が付いたので、全文の方を拾い読みました。正直なところ、長い割に退屈なので、全部を目を通すのは極稀です。展望レポートに関しては、日銀のサイトに簡単な説明と過去の発表文のリンクがあります(参考)。今回、取り上げるのは2012年10月の背景を含む全文です。

http://www.boj.or.jp/mopo/outlook/gor1210b.pdf

 まずは、5頁を読みますと、次の記述があります。これはひどい(棒)。

(中略)2013年度下期には、消費税率引き上げ前の駆け込み需要が相応の規模で発生すると予想されるため、一時的にかなり高めの成長となると考えられる。


 「日銀が阿呆だ」説が正しいじゃないかとなりそうですが、残念、残念。これにはちゃんと注があります。

 消費税率の引き上げは、経済に対して、主として税率の引き上げ前後の駆け込み需要の発生とその反動(異時点間の代替効果)を通じて、影響を及ぼすと考えられる。物価上昇に伴う実質所得の低下を通じた影響も考えられるが、やや長い目でみて家計はわが国の厳しい財政事情を踏まえ、将来の消費税率引き上げをある程度織り込んで行動しているとみられることを勘案すると、その影響は所得の減尐から機械的に計算されるほどには大きくならないと予想される。以上を踏まえて、今回の消費税率引き上げが実質GDPに及ぼす影響について定量的に試算すると、2013 年度の成長率を0.3%ポイント程度押し上げる一方、2014 年度の成長率を0.7%ポイント程度押し下げると見込まれる。なお、今回の引き上げにおいては、自動車や住宅に関する激変緩和措置の取扱いなどの詳細が現時点で固まっていないこともあり、経済への影響は不確実性が大きく、上記の試算も相当な幅をもってみる必要がある。


 2014年度以降の消費税率の引き上げによって、2013年度の実質成長率が0.3%程度、上昇する(駆け込み需要の発生)と予想している一方で、2014年度の実質成長率は0.7%程度、低下する(異時点間の代替効果)と予想しているわけです。地の文では2013年度の下期だけを書いているので、不用意ではありますね。こういう切り取られ方をすることを考慮しない日銀というのも、よく言えば政治的に中立であり、悪く言えば世間の意地悪な視線を意識しないお公家様集団といったところでしょうか。まあ、なんでも、いいですけれど。

 さらに、進めていくと、13頁に次の記述があります。消費税率引き上げの影響がどのように表れるのかは、日銀も読み切れない部分があって苦労しているのですよ。学者先生のように、1997年の引き上げの時には計量分析で消費税率の引き上げが成長率の低下を招いたという相関はないという論文をもちだして、だから今回も大丈夫なんて日銀が言えるわけがありません。

 第3に、消費税率引き上げの影響に関する不確実性がある。今回の中心的な見通しでは、内外の過去の事例も参考に、消費税率引き上げに伴う駆け込み需要とその反動の規模を見積もっているが、これは前述した成長期待の動向や消費税以外の制度変更によって変化し得る。また、消費税率の引き上げにより、人々の財政や社会保障制度に関する将来不安が軽減されれば、経済にプラス方向に作用する可能性もある一方、実質購買力の低下により、人々の節約志向が一段と強まる場合には、消費が想定以上に下押しされる可能性もある。


 「日銀文学」なんて言葉を学生時代に聞いたことがありますが、巫女の言い回しは好ましくないものの、うっかり断言して言質をとられてはまずいので、このあたりは仕方ないのかなと。それだけに、5頁でなぜ2013年度下期と限定しているとはいえ、駆け込み需要の増加だけを地の文で触れたのかはよくわからないですね。まあ、なんでも、いいですけれど。

 全体を通しての印象は、政府の成長戦略の評価が高すぎる点は問題かなと。たぶん無駄でしょうねとは書けないでしょうが、本気で効果を期待しているのはちと引きます。白川総裁肝いりの成長基盤強化を支援するための資金供給との関連なんですかね。海外はかなり丁寧になりましたねという感じでしょうか。4月と比較してどうかというのは本職(自称「にちぎんかんさつにっき」)のにお任せです。

 先の引用部分の続きです。こちらはかなり厄介でしょうね。

 第4に、わが国の財政の持続可能性を巡る様々な問題がある。すなわち、財政の持続可能性に対する信認が低下するような場合には、人々の税負担等に関する将来不安の強まりから、経済の下振れにつながるおそれがある。他方、中長期的な財政再建の道筋が明らかになり、また、社会保障制度の維持可能性が高まれば、人々の将来不安は軽減され、経済に好影響が及ぶと考えられる。なお、金融市場のグローバル化が進展している現状を踏まえると、多くの先進国で公的債務残高への懸念が生じている中で、わが国の財政運営に対する市場の監視も厳しくなってきているとみられる。そうしたもとで、財政再建に向けた取り組みが徐々に進みつつあるとはいえ、これが不十分であると市場参加者の多くが評価した場合は、長期金利の上昇を招き、金融機関の経営ひいては日本経済全体に悪影響が及ぶと考えられる。


 当たり前と言えば当たり前のことが書かれていますが、「日銀が阿呆だ」説の方からすると、物価だけが問題で日銀の政策目的のもう一つの柱である金融システムの安定は視野にないのでしょう。他と比べても厳しいトーンになっているのは、現在は長期金利が歴史的な水準にあるものの、その状態が安定的ではないという暗黙の認識があるのでしょう。


 本音を言えば、「日銀は阿呆だ」説とはかかわりたくもないです。この手の人たちは日銀が阿呆ではない証明を反論している人に求めていて、唖然としたこともあります。陰謀論というより、論証を自分ではせずにそれはおかしいんじゃねと言ってくる人に求めたりと民主党っぽいので、政権交代以前から民主党への拒否感が強かった私からすると、かかわりたくもない典型ですね。面倒くさいんですよね。向こうは日銀が阿呆だからといっているだけですが、それ違いますよというためにはいろいろ考えなければなりません。今回は、軽く済みそうな話ですが、それでも、この程度は書かないとダメなので、面倒なだけです。そんな面倒なことをどうしてするのと言えば、そんなに話が単純だったらいいのにねというある種の諦念と反発が同時にあるからかなあ。まあ、なんでも、いいですけれど。

 「デフレ脱却に向けた取組について」の性質に関しては、「総裁会見」に出てきますね。こちらは読んでいませんでした。『日経』が「幻に終わった政府提案 共同文書、日銀との攻防」という記事を配信していますが、日銀と対等に手を縛られるのは嫌という財務省の抵抗ぶりには脱帽です(前なんとかさんは日銀と政府がアコードを結ぶということが日銀側だけでなく、財務省にも特定の目標にコミットすることになるので抵抗することすら予想できなかったんじゃないでしょうか。「インフレターゲット」論の震源地の一つは間違いなく財務省ですが、日銀に金融緩和を求めることは、当然ながら政府側で政府支出の増加を行うことになります。その後、「リフレ派」が財務省の希少種となったのは必然といってよいと思います)。

 それから、「アコード」に関するご質問についてです。「アコード」の定義は定かではありませんが、いわゆる「アコード」としてよく知られているのは、中央銀行の独立性に対する意識が高まる中、円滑な戦費調達のためにFRBが行ってきた国債金利上限維持政策の終了を宣言するため、1951年に米国財務省とFRBが公表した共同声明文です。要するに、FRBの独立性を回復した共同声明文がいわゆる「アコード」です。
 本日発表した文書については、再三申し上げている通り、わが国経済のデフレ脱却に向けた当面の取組みについて、政府と日本銀行がこれまで共有している認識を改めて明確に示すものであり、いわば、両者の「共通理解」であるということです。日本銀行としては、もちろん、これまでもこういう認識を共有していますが、物価安定のもとでの持続的成長の実現に向けて、これからも努力をしていきたいと考えています。


 こういってはなんですが、白川総裁は、アコードを中央銀行の独立性を高めるものとしてとらえて、今回の「デフレ脱却に向けた取組について」がアコードなのかそうでないのかは答えずに、アコードとしてとらえるなら、日銀の独立性を保つものですよと主張しているんですね。展望レポートの消費税率引き上げで2014年度には実質成長率が0.7%程度、低下するという話も、景気悪くするのは財務省さんですから、私らも全力はつくしますけれど、問題を作ったのはあんさんですから、そちらでたのんますとも聞こえますね。財政再建もたのんますねと。ちょっと妄想が入っていますが。まあ、なんでも、いいですけれど。
posted by Hache at 07:00| Comment(0) | TrackBack(0) | ふまじめな寝言
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