2013年04月14日

安倍政権の経済政策に対するオバマ政権の生暖かい視線

 私と20代の女性が数人で画面を見ながら、「すごい・・・」とか「ありえない・・・」とかため息が漏れます。言ってみれば、ハーレム状態ですが、見ている動画はもちろんぷよぷよ関連でして、こちらの動画を見ていたら、女性陣でも一人がダントツにレベルが高くて、解説に聞き入ってしまいました。ついつい、弱い私が「これはミスケンの暴発w」みたいな発言をすると、「暴発かもしれませんが、ここで連鎖していて、ALFさんの形が悪いのでフィールドが埋まりますね」という冷静すぎる分析をされて、初代だろうが、通だろうが100戦100敗が確定しました。たぶんゲームで負けて初めて涙がボロボロこぼれる経験をしそうなので、「とうそう」を決め込むことに。『ぷよm@s』part31を見てから、凝視もちに勝てる気がしないです。

 ミスケンの強いところはたくさんあるそうですが、「セカンドを組むときを見れば明らかなように、タフな決断が必要になるほど、ぷよの置き場所に迷いがなくなること」だそうです。ミスケンさんとALFさんの実力差を判定してもらいましたが、「私が言うのはおこがましいですが、ほとんど紙一重だけれども、ぷよ操作ではやはりミスケンさんが上ですね」とのことでした。星の差ほどではないようで、このあたりの機微は難しすぎる感じです。素人にはよくわからないのですが、ここで発火すれば相手のフィールドが埋まるという判断をするためには、まず自分のぷよ操作が常に正確だという自信がないと無理なようで、時間を掛ければ凡人でもあるレベルまでは行けますよと、上から目線で言われてしまいました。「もう一度、ぷよぷよをやってみようかな」と言い出す始末で、私みたいな底辺ではない、あるレベルを超えている人も熱くなるプレイであるのは間違いないのでしょう。



 そんなわけで私の周囲は平和なのですが、北西方面は物騒ですし、日米関係も微妙な感じです。私などは口さがないものですから、2012年12月27日の「寝言」の中で、「あとは、公共放送様によると、オバマの覚えがめでたいとのことですが、露骨な円安誘導はアメリカ側の理解をえているんですかね。中国と同程度に為替操作国と指定されても不思議ではない発言を、総理大臣を筆頭に繰り返している印象があるのですが」と書いてしまったりします。大本営発表では安倍政権とオバマ政権は意気投合されているそうなので、はあ、そうですかと疑っているわけではないのですが、そんなに強調しなくてもという感じでしょうか。WSJ日本版の記事では、米財務省の報告書を引用しながらも、米中関係は悪くて日本はそこまでひどい目で見られているわけではないという感じですが、日本語版の元になったであろう、WSJが2013年4月12日付で配信したThomas Catan and Ian Talleyの"U.S. Warns Japan on Yen"という記事がより詳細に伝えていますが、安倍政権の経済政策というよりも、通貨政策を明確に変更しないと、他の政策で内政干渉に近い目にあっても不思議ではないというところでしょうか。会員限定の記事ですので、引用しても控えめになると思います。

 オバマ政権の経済政策全体を理解しているわけではないのですが、安倍政権よりもはるかに経済成長を重視した政策をとろうとしているのは事実だと思います。たとえば、Washington Post紙が2013年4月10日付で配信したJoel Achenbachの"Budget generous toward National Science Foundation"という記事によると、オバマ米大統領は全米科学基金に対する支出を前年比で8.4%増の76億ドル(うち3200万ドルはNational Robotics Initiative向け)に引き上げる決定をしました。財政支出削減に関する圧力がかつてないレベル達している現状で、NSFへの支出金額は総額で見れば決して大きいものではないとはいえ、過去最高水準を維持していることは、オバマ政権が科学研究をインフラストラクチャーとみなして、将来の成長に向けて投資を行っていることを、オバマ政権の政策に疑問符を常に持ちながら見ている私でも否定できないところです。

 対照的に安倍政権は、参院選で与党が勝利するために、まず高齢者の医療費負担を特例として1割にしているのを2割(これでももはや現役世代には耐えがたい水準だと思いますが)にするのを先延ばしするという決定を真っ先に行いました。「3本の矢」(笑)となるのは、死にゆくけれども、投票所に行きそうな世代を優遇して将来を先食いする点では民主党であろうが、自民党であろうがまったく変わらないということが政権交代でよく理解できましたという冷笑的な見方が背景にあります。

 WSJの記事に戻るのですが、ドル高円安は金融緩和の副次的な効果にすぎないと黒田とかが言っておりますと。日本を不況から脱出させることは「世界経済に好ましい影響を与えるであろう」と黒田が述べたと伝えた後で、パラグラフを変えてWSJがお説教を垂れているのですが、まあ、ごもっともとしかいいようがないです。

  Amid sluggish global growth, governments face the temptation to lower the value of their currencies to juice exports. Those pressures are aggravated as central banks in the U.S., Europe and Japan seek to spur their economies by pushing cash into the system−policies that have the effect of weakening their currencies. Seeking higher returns, investors are putting their money into emerging markets, putting upward pressure on those countries' currencies and making their exports more expensive abroad.

 世界的に成長が停滞する状態では各国の政府が輸出を潤す目的で自国通貨を引き下げる誘惑に直面する。この圧力は、アメリカやヨーロッパ、日本における中央銀行が経済を刺激する目的で金融システムに現金を流し込むことによって悪化する。この政策が自国通貨を弱くする効果をもつからだ。より高い収益を求めて、投資家は資金を新興国市場へと回すが、結果として、新興国の通貨を引上げ、海外への輸出がより高くつく状況になる。


 日本国内では、アメリカやユーロ圏が金融危機にかこつけて金融緩和をやって、日銀がちんたらしているから円だけが勝手に上がってしまったという被害妄想(日銀が阿呆でひどい目にあっているという被害妄想と米欧に好き勝手やられているという開港以来の被害妄想)が支配的なようですが、金融システム危機が生じていない以上、日銀の金融緩和がアメリカやユーロ圏と異なる性質をもつのは当然でしょう。他方で、金融緩和の手段としてREITまで買うとか、率直なところ、白川氏でさえ、国際協調という点で金融緩和で足並みをそろえるのはやむをえないとはいえ、そんな危なっかしいものまで買うんですかという若干の嫌悪感もありました。ドル円市場などというのは通貨全体の取引の数%程度(2010年のBIS統計(暇な方はこちらから入手できます))にすぎないので、思惑で動く世界ですから、ある程度までは安倍政権の通貨政策は成功した側面もあると思いますが、やりすぎると、アメリカ側の反発を招きやすいのでしょう。

 さらに、記事はアメリカ政府が日本政府と協調して日本の経済成長を促す政策をとるよう関与してきたと指摘しています。TPPにJAの関係者はともかく、これほど感情的な反発が強いこと自体が理解できないのですが、経済成長を促す政策にオバマ政権が積極的に発信しすぎると、かえって日本国内の反発が強くなり、その指摘がまともであっても、まともだからこそ反発が増幅される可能性すらあるので、安倍政権がアメリカが日本の成長政策に口を出す前に円安を招きかねない政策を抑制しないと、政治的にあまりにつたないのではと思います。


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2013年01月29日

戦争じゃなイカ?

 本題の「寝言」の前に、さらに斜め上の「寝言」ですが、高校生に「体罰」というのは理解しがたいです。大阪民国だけの問題かもしれないので、あまり触れないできましたが、愛知県の事例を見ると、暴行ではないかと。他方、どの地域にも、あえて死語を使うと、DQNはいるので、体罰をする方が熱心だととる(その責務を事実上果たせない)保護者もいて、なかなか難しいでしょうなというところです。駅伝選手に体罰とは中々、新鮮でありまして、私が部員でしたら、体の一部とはいえ、教師風情が触ろうものなら、即刻、退部させていただきます。単に嫌な奴という気もしますが、私だったら、怒鳴るのもどうかというレベルで、陸上のように、相対的に練習成果がストレートに結果がタイムなり、記録で反映する競技なら、練習メニューを工夫できない指導者は無能呼ばわりするだけでしょう。ちなみに、高校時代の部活で体罰どころか、怒鳴られたこともないです。どちらかと言えば、遅い方だったので、ハーフマラソンで1時間18分程度でも、顧問の先生(女性です)や女子部員(いい子ばかりだったのでさっさと手を付けておけばよかったみたいな感じ)が心から喜んでくれたので、よほど励みになりました。今の時代には合わないのかもしれませんが、高等学校ともなれば、「体罰」よりも退部や退学の方が強い措置なので、それを実施しないということは、単に気に食わない生徒を暴行して恐怖で自分の意思を集団的に強制したいたととられても、やむをえないのでしょう。

 「底辺校」の「現実」を見ない空理空論だと言われれば、あえて反論する気もありません。ただ、ある確率で納税の義務すら果たさずに、生活保護をはじめ、憲法25条で定められた権利を享受する人たちが生じるのも現実でありまして、体罰をしたところで確率が下がるわけでもなく、さじ加減もできない教師が無視できない以上、体罰自体を禁止するのもやむをえないのではと。この種の基準はバカに合わせざるをえないのでしょう。

 それはともかく、Wall Street Journalが2013年1月21日付で配信した"Rumors of War"という社説が翻訳される気配もないので、取り上げましょうという適当な話です。"The world keeps intruding on Obama's dreams of easy peace."というのはストレートすぎて面白みが欠けますが、「世界はオバマの安逸な平和のお花畑に侵入しています」と機械語翻訳っぽく訳すと、悪くないかなと。『侵略!イカ娘』に侵略された脳みそだと、「戦争じゃなイカ?」となります。

 悪ふざけはこの程度にして、このWSJの社説は会員向けではないこともありますが、反オバマというWSJの基本姿勢は別として、同盟国重視の傾向が鮮明です。この点がなければ、後で指摘する点を除くと、事実そのものに関しては大したことは書いていないのであえて取り上げないでしょう。同盟国重視の論調がアメリカに無視できない程度に存在することが大切な点です。むしろ、反オバマの修辞を無視すると、2001年のテロ以降、アメリカの外交政策が内向きに戻るのかという点で、同盟国の住人としては最も望ましい論説を、内容はやや粗雑な印象もありますが、展開していると思います。

 まず、社説は、現時点では北アフリカと西太平洋が注目すべき点だと指摘しています。第1に、アルジェリアのガスプラントをテロリストが襲撃した事件を取り上げています。アルジェリア軍の攻撃によって、イスラム過激派が数十人ほど死亡したものの、単なる処罰であればアルカイダの分派は襲撃は成功だとみなすだろうと指摘しています。

 誠に遺憾ながら、日本国ないではベンガジのアメリカ領事館襲撃事件は、せいぜいオバマ政権が問題を揉み消そうとしたという程度でしかとらえられていないようです。社説は、オバマ米大統領は犯人が司法の場に引き出されるだろうと述べたが、この言は、昨年9月、ベンガジでクリス・スティーブン大使と3人のアメリカ人が殺害されたときと同じだと述べ、もしテロリストが安全にアメリカ人を殺せると確信すれば、700万人に上ると推計されているアメリカ人の命が危険にさらされると指摘されています。

 さすがにアルジェリア軍の攻撃で3人のアメリカ人が命を失ったために(この時点でのWSJの社説を書いた人物の認識ですが)、アルジェリア軍の行動をストレートには肯定していませんが、オバマがベンガジのアメリカ領事館襲撃事件で見せた甘さを批判して、テロリストたちが秩序を脅かすのに対して秩序を守る側の覚悟を説いています。そして、アルジェリアの事件の背景にあるマリへのフランスの介入を強く支持すべきだと主張しています。

  The U.S. is also dithering over how much to help the French in their intervention to stop al Qaeda allies from overrunning Mali, which is south of Algeria. The French have now confirmed our report last week that the U.S. is reluctant to back them with drones and other assets.

  The French may have undermined the U.S. in Iraq in 2003, but this is the time to show the French that America isn't as flighty a friend. Even if we don't like the way the French intervened, now that they are there the worst outcome would be if they get bogged down or are forced to retreat. The U.S. needs to help them win as rapidly as possible.

 アメリカはマリから侵入するアルカイダの同盟者を食い止める介入に関してフランスにどの程度まで協力するのかということをためらい続けている。フランスは先週のレポートでアメリカは無人機や他の資産でフランスを支援することを躊躇っているとはっきりと述べた。

 2003年、フランスはイラクをめぐるアメリカの立場を弱体化させただろう。しかし、今こそフランスにアメリカは移ろいやすい親友ではないことを示す時だ。たとえ、われわれがフランスの介入のやり方を好まないとしても、もしフランスが二進も三進もいかない状態になったり、撤退しなければならない状態になったりすれば、最悪の結果となるだろう。アメリカは可能な限り速やかにフランスを助ける必要がある。


 さすがに、フランスには散々、煮え湯を飲まされてきただけに、説得のためのロジックという側面もあるのでしょうが、言いたい放題の面もあります。他方で、オバマへの批判を通して9/11後の安全保障は同盟国重視でいくべきだということが、まずテロ対策ででてくるのは興味深い点です。この点は、国家対国家という、古典的な問題が多い西太平洋ではより鮮明です。

  Meanwhile, rumors of war grow as China challenges Japan's control over islands in the East China Sea. Both countries are now sending military jet sorties into the area, and Chinese denunciations extended to the U.S. after Secretary of State Hillary Clinton said on Friday that the U.S. opposes "any unilateral actions that would seek to undermine Japanese administration" of the islands. She urged both sides to "resolve the matter peacefully through dialogue," but China denounced her for ignoring facts and confusing "truth with untruth."

  This is another case when stalwart solidarity with an ally is the best policy. Instead of mere words, the U.S. should send a signal to China by inviting new Japanese Prime Minister Shinzo Abe to the U.S. at an early date. Even better, send a U.S. carrier group to the area the way Bill Clinton dispatched a carrier through the Taiwan Strait in the 1990s.

 一方、戦争の風聞は東シナ海の日本の支配下にある島々に中国がちょっかいを出すにしたがって強くなっている。日中両国はこの地域に軍用機を出撃させており、ヒラリー・クリントン米国務長官が「日本の統治をゆるがせにするする一方的な行動に」反対すると述べてから、中国の批判はアメリカにまで拡大した。クリントンは「対話を通して平あて気に問題を解決する」よう両国に促したが、中国は、クリントンを事実を無視し、「真実と嘘と」を混ぜていると批判した。

 これは同盟国との強固な結束が最良の政策となる別のケースである。言い換えれば、アメリカは早い時期に新しい日本の安倍晋三首相を招いて中国に対してシグナルを送る方がよい。もっとよいのは、ビル・クリントンが1990年代に台湾海峡に空母を送ったように、この地域に空母打撃群を送り込むことである。


 社説の具体的な提言は疑問もあります。安倍首相の訪米が早いのに越したことはないと思いますが、対中政策以外にもTPPをはじめ、日米で固めておくべき内容があるので、事務的に目途がついてからでも手遅れにはならないと思います。空母打撃群の派遣はありがたいのですが、既に実施してるのではないかと思います。これは勘違いしているかもしれませんが。もちろん、象徴的に増派するというのはありうる手段でしょうが、アメリカの財政負担も無視できないでしょう。

 ただ、提言として魅力は乏しいものの、アメリカの有力紙が尖閣諸島の名を出さないとはいえ、"Japan's control over islands"と明確に述べたことの方が、日本にとって大きなモラルサポートになると思います。一般的には"disputed island"とされてぼかされていますが、米紙の社説でここまで明快に述べているのは、私の不勉強かもしれませんが、初めて見ました。この社説がオバマの外交政策への批判とともに、対案として同盟国重視という最もオーソドックスな姿勢を鮮明にしているからでしょう。この傾向がアメリカの外交政策の基調となれば、アメリカの軍縮という米軍の抑止力の低下を招く問題をクリアできることが条件となりますが、勢力均衡を破ろうとする勢力を断念させ、テロリストの行動を制約するのはオバマの「夢」ではなくなるのでしょう。他方で、アメリカのハードパワーの退潮傾向に加えて、同盟国を軽視すれば、既に単独で国際秩序を維持する能力を失いつつあるアメリカは負担に耐えることができず、戦争は単なる風聞ではなくなり、無法がはびこる世界が待っているのでしょう。


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2012年12月13日

善意の怖さ リビア

 『ぷよm@s』part31を何度も見ているのですが、その度に元気になる私はやはり厨二病というビョーキなんだろうなあと。あまりよい見方ではない気もします。ツイッターで鱈Pの周りでルヨルさんのサイトの評判が良いので見たら、納得でした。実は、Bぷよでルヨルさんの千早式究極連鎖法を、動画を見ながら真似をしようとしていた時期もありました。ふと、気が付いたのですが、初心者レベルなら、その前に階段連鎖、あるいはズラース法をやっておいた方がいいなと。なぜと言われると困るのですが、確実に5連鎖が組めるようになりたいのと、デスタワー、あるいは2連鎖マルチのどちらも組んでみたいという欲張りな気持ちがあって、階段連鎖、あるいはずらすというのが連鎖の基本だと気が付いて、これが正確にできないと連鎖のセンスが行き当たりばったりでしか向上しないと思ったからです。Bぷよにはまってから、鱈Pの番外編を真剣に見た影響でしょう。SFCでやっていた頃はpart8を見て組んでいたら、不思議なぐらい5連鎖が簡単に組めましたが、ぶっちゃけまぐれでした。Bぷよを始めて、これはいかんと。以上はpart31を見る前の話です。

 しかし、いい動画を見ていい気分になると、ダイエットの一環で一駅前で降りるどころか、1時間ぐらい散歩しても平気だったり、階段の上り下りも6階ぐらいまでならまったく息が上がらないとか、かなり元気が戻った気がします。気が付けば、禁煙して1年を超しましたが、まだ禁煙前の集中力が戻らないものの、以前だったらタバコを吸わないとできなかった作業も楽にできるようになりました。さすがに仕事となりますと、他のことを一切忘れて、せめて一日のうち、14時間はそれだけに2年ぐらいは専念したいのですが、漸く金曜日を確保できるかもという感じです。これだけは本当に悲しい限りで、私の年齢ですと、私自身のキャリアの問題ですね。

 そんな廃人の目から世界を眺めると、ヨーロッパは相変わらず安定化したと思ったら、不安定要因がでてくる感じで、なかなか楽しいです。地味に怖いのはアメリカの国内政治と対外政策です。以前、「善意」の怖さ 摂津・遠江・尾張(上)」などという「寝言」を書いておりましたが、今回は「リビア」編、あるいはといったところでしょうか。ただ、今回取り上げる記事以外で裏がとれていないので、冗談半分、あるいは「寝言」として読み流していただければ幸いです。これは逃げ口上やヘッジクローズというより、こんなところまで読まないと、オバマ政権の外交政策が分からなくなっている気がするからですね。

 とりあげるのは、New York Timesが2012年12月5日付で配信した James Risen, Mark Mazzetti and Michael S. Schmidtの"U.S.-Approved Arms for Libya Rebels Fell Into Jihadis’ Hands"という記事です。まずは冒頭部分ですが、この部分で地味ですが、記事の内容の信憑性が高いのなら、事態は深刻でしょう。

WASHINGTON − The Obama administration secretly gave its blessing to arms shipments to Libyan rebels from Qatar last year, but American officials later grew alarmed as evidence grew that Qatar was turning some of the weapons over to Islamic militants, according to United States officials and foreign diplomats.

No evidence has emerged linking the weapons provided by the Qataris during the uprising against Col. Muammar el-Qaddafi to the attack that killed four Americans at the United States diplomatic compound in Benghazi, Libya, in September.

But in the months before, the Obama administration clearly was worried about the consequences of its hidden hand in helping arm Libyan militants, concerns that have not previously been reported. The weapons and money from Qatar strengthened militant groups in Libya, allowing them to become a destabilizing force since the fall of the Qaddafi government.

The experience in Libya has taken on new urgency as the administration considers whether to play a direct role in arming rebels in Syria, where weapons are flowing in from Qatar and other countries.

(ワシントン) 昨年、オバマ政権はカタールからリビアの反政府勢力への武器輸出に対して極秘裏に承認していた。アメリカの政府高官や外国の外交官によると、カタールがイスラム武装勢力に兵器を渡している証拠が増えるにしたがって、政府高官の間で懸念が広がった。

 ムアンマル・カダフィ大佐に対する反乱の間にカタールによって提供された武器と、今年の9月にリビアのベンガジにあるアメリカ領事館で4人のアメリカ人が殺害された攻撃とを結びつける証拠はなかった。

だが、数か月前には、オバマ政権は明らかにリビアの武装勢力へ武器を援助することにひそかに手を貸すことの帰結を憂慮し、それまで報告されていなかった懸念を抱いている。カタールからの武器と資金はリビアの武装勢力を強化した。このことによって、武装勢力はカダフィの政権が崩壊してから不安定にする力として作用するになった。

 リビアにおける経験は、カタールや他の国々から武器が流れ込んでいるシリアの武装した反乱分子に政権が直接的な役割をはたすべきかどうか考慮するよう、緊急の問題を提起している。


 ベンガジのアメリカ領事館襲撃は、対外的にアメリカの権威を失墜させたオバマ政権への信認を地に落とし、アメリカ大統領選挙を左右しかねない、深刻な事態でした。うろ覚えですが、ロムニーがオバマにこの点で厳しく追及しなかったため、アメリカの各紙が痛く失望を表明していたことを思い出します。ロムニーがこの問題をあえて追及しなかったのは、一面では見識ではないかとも思うのですが、そのような捉え方はアメリカ国内では手ぬるい印象しか与えなかった状態だったのかもしれません。

 これに続いて、国防総省の高官の発言として、リビアのイスラム武装勢力について「より反民主主義的で、より信仰に凝り固まっており、イスラム過激派により近い」という評価を紹介しています。上記で引用した部分でも述べられているように、この記事で問題となっているのは、オバマ政権がアメリカ国内で直接的に批判されたベンガジの領事館襲撃ではなく、リビア国内のイスラム勢力へカタールから武器を輸出していたことを黙認していた政権の姿勢です。読み手としてはまず、カタールから武器がリビア国内のイスラム武装勢力の手に渡っていたのをオバマ政権が実質的に黙認していたのは事実かという点が問題です。この記事を読む限りは、信憑性が高いと思いますが、残念ながら、私の語学力ではこの記事を検証する、あるいは反証する記事が見つかりませんでした。

 あまり、この種の空想は「時の最果て」とはいえよろしくないと思うのですが、抽象的に、イスラム武装勢力を強化することが妥当かどうかという問題であれば、オバマ政権の中東政策はアメリカの利益から説得するロジックが十分ではなく、同じことはアジア政策にも言えると思います。「アラブの人のため」、「アジアの人のため」ではなく、アメリカ人にとっての利益計算が外交政策の基礎になければ、それは持続的な政策たりえないでしょう。率直に言えば、2011年の段階でベンガジでカダフィ政権側が虐殺を行うのを防止するという「人道的な目的」で介入を是認する意見(藤原帰一氏など)を冷笑的に見ておりました。端的にその気分を書いたのが、「アメリカはリビアに深入り無用?」という「寝言」です。ハースは私ほど冷笑的ではないので、人道目的で港湾の中立化などに触れてはいますが、これもアメリカの利益にかなうのかはやや疑問です。露骨に言えば、アメリカの理想主義というのは、アメリカをその気にさせるには一番ですが、しばしば意図とは全く逆の結果を招く傾向がありますから。

 オバマ政権のアジア重視政策もなんちゃってじゃないのとからかってしまうのは、どうもアメリカの自己利益とどのように結びつくのか、面倒でもロジックが十分ではない印象があるからですね。ロジックといっても、学者先生の論理ではなく、リビアの内戦に介入すると、アメリカにとってどのような利益があるのかということです。もう一つは、やはり投入できるアメリカの外交上・安全保障上の資源の制約です。この両者を明確にすれば、外交政策が定まるというよりも、アメリカの取りうる選択肢がそれほど多くないことが理解できるのではと思うのですが。経済だけ決まるわけではありませんが、ブッシュ政権のように、クリントンが倹約した金を湯水のように使うわけにはいかないですから。

 それにしても、オバマ政権は中東で善意にもとづいてのみ行動したわけではないと思いますが、リビアの反政府勢力への支援は、カダフィ政権が崩壊した後も、リビア情勢を不安定化させた可能性があるという点で、理想に傾き、現実的な打算を欠いていたと思います。後知恵ならいくらでも批評できるとはいえ、2009年にカイロ演説に代表される理想を前面に出した演説は、現実的な打算を欠いていたのだと評価せざるをえないと思います。もっとも、この点は、子細に検討した場合、反対の結論になることもありうることをお断りします。

 人間が自己利益だけで動くというのは粗い単純化ですが、自己利益で動く側面を明確にしないと、「善意」はしばしば、他人を陥れようとする自己利益からくる「悪意」よりも自らを滅ぼしかねないきわどさをもっているというのがエゴイスティックな「時の最果て」のスタンスです。NYTの記事から話が逸れてしまいましたが、「善意の怖さ リビア編」を完結させる余裕ができたら、書きたいですね。あっという間に再生数が3万を超えてしまう動画と違ってこちらは期待されていないので、のんびりできて助かりますね。


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2012年11月10日

有権者には優しくないアメリカ大統領選挙

 木曜日まで実質的に休みがない状態で2週間が過ぎました。もう、なんだかヨレヨレのワイシャツみたいな状態になって、水曜日には咳が出ていたので、会議でもマスクをしている有様でした。のども腫れていたので、早々に病院に行きました。「ビョーキ」は治らないので、まあせめて人様の迷惑にならないようにしようというところでしょうか。金土日と実質的に三連休ですので、とにかく睡眠不足を解消することを最優先にしています。

 まあ、火曜日ぐらいから、少し余裕が出てきて、『ぷよぷよ』を30分程度やっていたのは職場では公言できませんが。疲れているときには、連鎖が組めないことがよくわかるので、体調のバロメーターとしてみております。それにしても、『アイドルマスター』よりも『ぷよぷよ』の方にはまるとは思わなかったです。『トロピコ』も、なにをやろうとしていたのか、セーブデータを見てもわからなくことも多いので、『ぷよぷよ』のように、履歴があまり関係のないゲームの方が長続きするようになったのだなあと。「練習ステージ」を5分だけやって止めることもよくあります。5連鎖だけではなくて、ガンガン掘る練習もして、いったい何をやっているんだろうと思うこともあります。本当は、録画して見直すと、配ぷよを見ながら、改善を図れるのですが、余裕がないですね。2手までで4色が2回に1回ぐらいは来るので、5連鎖をつくれずに終わることも多く、コンピュータ側が速いペースでおじゃまぷよを送ってくると、段差の把握に苦労します。

 それはともかく、アメリカ大統領選挙ですが、日本語のサイトをほとんど見ずに、ワシントンポストやウォールストリートジャーナルなどのトップページで見ていました。日本語のメディアは割と早く当確を伝えていたようで、向こうのテレビの報道が元のようですが、速報性という点では確かにテレビなのかなと思いました。結果自体は意外感がなく、とくに感想もないので、放置しておりました。"change"をキーワードにして当選したオバマが、現状維持とも異なりますが、再選を目指すときにはどうするのかなと思いましたが、想像以上に苦戦して意地悪な目で見ていたことは率直に告白しておきます。

 下院は共和党が優勢でベイナーさんの動向を見ておくのが基本ではと思うのですが、あまり日本語では報道がないようで、「財政の崖」で騒ぐ割に詰めが甘いのではと思うのですが。オバマは富裕層への減税を止めたくて仕方がなく、ベイナーは実質的な増税には反対ときては最後は妥協するだろうと思いたいのですが、あまり見たくない光景も考えておかざるをえず、精神衛生によいものではないと思います。ブッシュ政権の"legacy"をどのように処理していくのかという点で、イラク戦争よりもはるかにやっかいな問題で、富裕層の消費が個人消費のウェートが高い現状を無視すればオバマが正しく、税の公正さを無視すれば共和党が正しいという問題でもあるので、現状では解が見当たらない感じでしょうか。

 大統領選こぼれ話というほどでもないのですが、Washington Postが2012年11月6日付で配信したJessica Goldsteinの"Which voters had the longest waits?"というブログ記事のグラフを見ると気が遠くなります。メジアンと平均値の区別をしていないようなので、若干、信頼性が欠ける気がしますが。記事を読むと、待ち時間のメジアンではなく、投票所に入って出るまでの時間の平均をとっているように読めます。気になる点が多いのですが、フロリダ、マサチューセッツ、サウスカロライナの諸州とD.C.で投票を終えるのに90分もかかるというのは苦痛と言ってよい水準だと思います。ジョージアの10分ですら長く感じます。だいたい、私の場合、投票所に入って出るまで5分程度です。まあ、大統領選挙の投票だけではないのでしょうが、それにしても長いなあと。

 でもまあブログ記事だしと読み流しておりましたが、Washington Postの2012年10月8日付の"Long voting lines suggest a need for reform"という社説を読むと、なかなか有権者に過酷なんだなあと実感します。「私に最初にコーヒーをもってきてくれた陣営を支持するよ」とツイッターに書き込んだティム・ホプキンスさんの年齢はわかりませんが、過酷な状況でもジョークを飛ばす余裕があるんだなと。しかも、「寒い。だが投票を決してあきらめない」というあたりは、オバマに一票を投じた人のようですが、なかなかヤンキー魂とも申しますか、アメリカの民主主義を支える「草の根」の質は決して低くないことを実感します。"Washington region"が都市圏を指しているのか、それ以外の慣用句なのか、ちょっとわからないというレベルなので恥じ入るしかないのですが、それでもバージニア州で投票率が70%というのは脱帽するレベルです。他方、全米では1億2000万人が票を投じたとあります。WaPoの社説は、政治参加を促すために電子投票の導入など根本的な改革が必要だと主張しています。

 この話はいったんおいて、投票率がよくわからないのですが、WaPoのデータをもとに計算すると、オバマとロムニー、独立系の候補が集めた票数が1億2123万7554、2008年の投票総数が1億3114万2144となります。ロムニーはマケインほどの表を集めることができず、ブームが去ったオバマでさえ、刺せなかったことが実感できます。2008年の投票率が57.1%ですので、これよりも低い投票率だったと推測できます。日本の衆議院議員選挙の投票率の推移が下記のPDFファイルで確認できますが、もし、アメリカ国内で大統領選挙への投票率が下がっているのなら、投票所の問題だけを取り上げるのはやや一面的な印象があります。任期が4年の大統領選挙に予備選挙から2年近くをかけるのも異常な感じがしますし、中傷合戦が続けば、うんざりするのが当然という気もします。アメリカ大統領選挙の投票率は50%を切ったこともあり(1996年)、アメリカの民主主義がこのまま衰退するという状況ではないと思いますが、極端な党派間対立が続くと、本格的な衰退を迎える可能性もあると思います。

総務省「目で見る投票率」
http://www.soumu.go.jp/main_content/000153570.pdf


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2012年09月19日

ミサイル防衛をめぐる米中のさや当て

 ここ数日、咳が時々出て、それほどではないのですが、体力を地味に削っていきます。なんだかけだるい感じ。「寝言」も書くほどのことはなにもないので放置しておいて大丈夫だと感じますね。というか、まあ騒ぎの割には中国側に不利な話が多いので、尖閣諸島にきている中国の武装漁船と当局の船を上手に追い出した上で、向こうが泣きついてくるまで放置プレイでもいいのではと思ったりします。あんまり私自身がわかっていないので、日中関係でしたり顔でもっともらしいことを言う前に、Wall Street Journalが2012年9月17日に配信したJulian Barnesの"Panetta Announces U.S. Expansion of Missile Defense”という記事を読んでおいた方がよいのかなとは思いました。

TOKYO−Japan will host a second land-based radar to defend against ballistic missiles, U.S. Defense Secretary Leon Panetta said, underscoring America's deepening military and security engagement in the region, but potentially complicating Mr. Panetta's trip to China this week.

China has raised questions about the U.S. investment in missile defenses, saying they could be aimed at reducing the effectiveness of Beijing's nuclear deterrent. Analysts have said the missile-defense system expansion could feed Chinese fears about containment by the U.S. and encourage Beijing to accelerate its own missile program.

But defense officials said Monday the new deployment of the early-warning system, known as X-band, wasn't aimed at China. At a news conference, Mr. Panetta said he will continue to make clear to the Chinese that the U.S. ballistic-missile defenses are aimed at North Korea.

(東京)日本は対弾道ミサイル防衛を目的とする地上配備型のレーダーを受け入れるだろうとレオン・パネッタ米国防長官は述べた。パネッタは、この地域における軍事的および安全保障上の関与を深めることを強調したが、潜在的にはこの週のパネッタの中国への旅を複雑にした。

 中国は、アメリカのミサイル防衛への投資が、中国の核抑止の有効性を減じることを目的としていると指摘して、疑問を提示した。アナリストはミサイル防衛システムの拡張は中国の、アメリカによる封じ込めの恐怖を助長し、独自のミサイル計画を加速させるだろうと指摘した。

 しかし、月曜日に国防省の高官はX-bandとして知られている早期警戒システムの配備は中国を標的としたものではないと述べた。記者会見でアメリカの弾道ミサイル防衛が北朝鮮を標的としたものであることを中国に理解させることを続けると述べた。


 北朝鮮の弾道ミサイルを防ぐためにずいぶん手間をかけますなあと中国側ではなくても、嫌味の一つも言いたくなりますが、「おめえの弾道ミサイルがうざいんだわ」と中国に面と向かって言われても困るので、説明としては苦しいですが、まあやむをえないかなと。ミサイル防衛が対中「封じ込め」となるか否かは、中国の行動と意図にも依存するので、アメリカ側としては結果的に封じ込めとなる手段をとること自体はやむをえないでしょう。非常に粗雑に、中国が日本を実質的な支配下に置けば、アメリカは、少なくとも太平洋の西側で行動の自由を失うので、ゼロサムゲームを避けようとすると、かえって危険だと思います。どの道、ほとんど言いがかりのように、「悪いのはアメリカ」(参考)と言われるのは避けられないでしょうから、開き直って頂いた方がありがたい面もありますが、まあ、言わぬが花という面もあるので、当座は「悪いのは北朝鮮」としておくのは、大人の知恵でしょう。

The first X-band radar is located in northern Japan. A U.S. team landed in Japan in recent days to discuss where the second facility will be located, according to a U.S. defense official. Officials have said they want to locate the radar, formally known as AN/TPY2, in the southern part of Japan, but not on Okinawa, where the U.S. military presence is deeply controversial.

 1基目のX-bandレーダーは日本の北部に配置された。アメリカの国防省の高官によれば、日本に駐留しているアメリカの一団は最近、2基目の施設をどこに配備するのかということを議論を重ねているという。高官は公式にはAN/TPY2として知られているレーダーを日本の南部に配備したいと述べた。だが、米軍の駐留が深刻な議論の的となっている沖縄以外の場所だとも述べた。


 沖縄の感情にも配慮しているようにもとれますが、ミサイル防衛の拠点として沖縄が除外されているのは、考えすぎかもしれませんが、微妙な感じです。日本の報道をざっと追うと、パネッタの発言のうち、尖閣諸島が日米安全保障条約の適用範囲であることに集中していますが、この時期にぼかすのは日本に対しても中国に対しも危険すぎるので、当たり前だろうと。それよりも、中国を中心とした現状に不満をもつ諸国の動きを抑えて太平洋の西側の秩序を保つためには、まず、アメリカが日本に対して核抑止を確実に提供することが、素人目にも根本でしょうと。それまでは核報復による、いわゆる「核の傘」が基本でしたが、ミサイル防衛が実用化されてくると、両者のミックスになるのでしょう。さらに、陸上配備型が整備されてくると、イージス艦に配備されているミサイル防衛の柔軟性が増すので、相乗効果が大きいと、これは完全に素人の発想ですが、思います。パネッタ国防長官の発言は巧妙ではないかもしれませんが、西太平洋の秩序はアメリカが担保し、日本が最も重要なパートナーだとは言っていませんが、そういっているのとほぼ同等の意味だと考えてよいと思います。沖縄が配備の対象から当初から外されているのは気になりますが。

 日中関係はと言えば、誰が見ても官製デモで、いくら憎っき日本相手とはいえ、領事館からスーパー、工場まで無茶苦茶するなあと中国人の文明の程度を世界にさらしているよとせせら笑いながら、笑いをこらえて見ております。他方で、力の使い方を知らない蛮族がカネをもち、腕力もつけてきているので、対抗措置は必要だろうと。その点でミサイル防衛でアメリカが「二の矢」を飛ばすのは歓迎なのですが、日本側の対応が尖閣諸島という局地的な問題で終始しては困ります。

 まあ、素人の杞憂だとは思うのですが、財務省のサイトの「平成25年度予算」(参考)から「平成25年度一般会計概算要求額等」をPDFファイルで見ると、概算要求の段階で605億円とはいえ、前年の当初予算から減少しています。もちろん、予算額を増やすことばかりが防衛の充実につながるとは限らないと思いますが、年金は3割カットして、長寿医療制度など生温いので、75歳以上も現役並み負担にした上で、本人負担は青天井にしますと。防衛費そのものは倍ぐらいに増やして、やっと最低ラインではとすら思います。きっと防衛予算の拡充を訴える方々の多くは、口を開けば「お国のために」と出てきますから、「お国のため」だったらこれぐらいが当然ではないかと。もちろん、自衛隊を安く運用できるのなら、それに越したことはありませんが、海軍の運用ができるかもしれない蛮族への備えを考えると、それなりにカネがかかるのは当然ではないかという「寝言」が浮かびます。


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2012年08月28日

進行するユーロ危機 ギリシャ(3) (長文注意)

 ギリシャのサラマスサマラス首相が先週末に独仏を訪問したおかげでギリシャ関係の記事が若干ですが、目につきました。Wall Street Journalが2012年8月24日付で配信した記事のタイトルが"Germany Tells Athens to Stick to Plan"で、New York Timesが2012年8月25日付で配信した記事がSteven Erlangerの"French Leader Hails Greeks for ‘Painful Efforts’ in Crisis"となっていて、どちらも当初、配信した記事からタイトルが変わっているので(RSSリーダーが日曜日に読み込んだ時点ではNYTのタイトルは"France Reassures Greece on Euro Zone Membership"でした)、米紙のニュアンスも日曜日にざっと目を通したときからかなり変わっていますが、とりあえず、表面的な問題だけ自分の整理のためにメモしておきます。

 サラマスサマラス首相が改革の継続を約束する代わりに、ドイツのメルケル首相がギリシャの改革実行を前提にユーロ圏に留まらなければならないと言明しました。フランスのオランド大統領も改革が遂行されることを条件としてギリシャがユーロ圏に留まることを再保証しました。まあ、ここまででなんか変だなという感じです。なぜ、今更、ギリシャがユーロ圏に留まる再保証をするのかなと。パッと素人が思いつくのは、メルケルが国内の説得に行き詰まりつつあるのではという点ですが、ブルームバーグが日本語で流していた記事が今回のメルケルとサラマスサマラスの会見の背景の一つとして、ドイツの議会である議員がギリシャの退出を促す発言をしていた記事を配信していたと思うのですが、月曜の未明の段階で記事がネットでは見当たらないので、あまり根拠のない話としておきます。もっとも、ギリシャ救済でメルケルがドイツ国内の説得に苦労するというのは今に始まった話ではないので、ありそうだなぐらいの話です。日曜日の段階は独仏が協調していること、ギリシャが民営化を中心とした改革を約束したという点を確認した程度です。

 ユーロ危機に関して言えば、私の見通しを先に明確にしておいた方がよいでしょう。自分でも自分のバイアスがはっきりしますし。ユーロ圏は最終的に溶けてしまうだろうが、溶けるまでには時間がかかる。時間稼ぎにすぎなくても、国際経済への打撃を和らげる時間が必要である(可能ならばユーロ圏を隔離したいところではあるが、これだけ相互依存が進むと、その手段はなかろう)。緊縮策は確実にユーロ圏の死滅を早めるので止めさせたいが、ドイツ人はケチで頭が固いので、難しいだろう。したがって、ユーロ圏の延命を図るだけではなく、消滅するという想定に関して手を打つ必要があるが、現政権にはなにも期待できないし、代わりが出てきても同じであろう。無為無策でユーロ圏が崩壊するのが最も危険なのだが、その確率は極めて低いものの(いつ起きるのか現時点では予測できない)、無視できない程度であろう。

 とまあ、われながら粗雑です。実はユーロ圏が崩壊する絵がなかなか描けないので、かなりひどいバイアスだというのが率直な実感ですね。逆に言えば、ドイツがユーロからマルクに戻ったときに、経済がもたないことがユーロ圏を延命もし、緊縮策を各国に強いているという点ではユーロ圏を経済的に停滞させる大きな要因になっているのだろうと。IMFも想定通りダメダメで、さすがという感じでしょうか。アジア通貨危機で見せた「破壊力」はまだまだ健在なご様子で、ドイツの緊縮策を抑えることはできないでしょう。

 独仏が「一衣帯水」に近い関係に入っていることは先のNYTの記事を読むのがよいと思います。短い描写ですが、これはこれでよい感じでまとまっています。オランドに関しては大統領選挙前後で懸念する声が多かったのですが、どこぞの島国の家電メーカーが人材(笑)を大量生産しようとして失敗したのとは対照的に(本業では曲がりなりにも一時的には成功したが、ぺーはーぺーは大量生産して大失敗でしたね。こちらは廃材しかないようでお気の毒で済めばよいのですが、政治家となると迷惑でしかない)、現実に直面すれば変わりますね。

During his presidential campaign, Mr. Hollande was critical of the pain the Greeks have been put through in the name of austerity, and he has presented himself as a critic of austerity and a defender of growth in the euro zone.

But he agreed with Ms. Merkel in Berlin on Thursday not to make any commitments to Greece until a report next month on its compliance with the terms of a second bailout deal reached with the so-called troika of the European Union, European Central Bank and the International Monetary Fund. The troika will also examine how Mr. Samaras proposes to find an additional $14.4 billion in savings and revenue over the two years of 2013-14.

When the report is complete, Europe needs to make decisions about Greece “the sooner the better,” Mr. Hollande said. “In the face of ordeals, we must show more solidarity.”

 オランドは大統領選挙の活動中に財政緊縮の名によるギリシャが受けた痛みに批判的であったし、自分自身を財政緊縮の批判者とユーロ圏の成長の守護者として世論に映し出そうとした。

 だが、木曜日にベルリンでオランドは、EUとECB、IMFのいわゆるトロイカと合意に達した2回目の救済交渉の条項に従っている来月の報告までギリシャにいかなるコメットメントを与えないことでメルケルと合意していた。トロイカはサラマスサマラスが提案する2013年から14年の2年間にわたる歳出削減と収入増による追加的な144億ドルをどのように確保するのかを精査する予定だ。

 報告が完成すれば、ヨーロッパはギリシャについて「より早く、よりよく」、「危機に直面してわれわれが結束をより固めていることを示さなけばならない」とオランドは述べた。


 この前のパラグラフで、サラマスサマラスが脱税に対して厳しく対処する方針を表明したとあるのですが、徴税装置すら整っていない状態で脱税を取り締まるのにも予算が必要でしょうにとため息が出ます。しかし、たかだか144億ドルなら、朝鮮半島統一のご祝儀(可能性は低いが起きれば必要になる)はミニマムアクセス米の余剰分で済ませて、ギリシャにポンとあげたら、ギリシャは飯はうまいし、観光も楽しいので親日国にしてしまえばよいのにという「寝言」が浮かびます。

 それにしても、オランドは元々、緊縮よりも成長をと訴えて当選したのに、態度をコロッと変えたという皮肉を記事のタイトルから感じますね。ただ、皮肉ばかり言ってもあまり意味がなく、オランドの選挙中の言動は多分に大衆受けを狙っていた部分があるにしても、経済成長の視点が皆無の「トロイカ」では死期を早めるだけだという本質を突いた部分も、おそらく結果論ではありますが、あったのではと思うのですが。露骨に言えば、ギリシャ経済を滅茶苦茶にすることが救済の条件というのでは話にならないということです。財政緊縮が必要なのは市場で資金調達できない時点で自明ではありますが(当たり前ですが緊縮そのものを否定する人は少ないでしょう)、一時的に痛いどころか、将来にわたって経済成長を停滞させかねないレベルまで税収増と歳出削減を進めるのは、あまりにもリスクが高いでしょう。平均的な失業率よりも若年者の失業が50%前後ともされるようでは労働市場改革はおやりになったらよろしいとは思いますが、この手の改革の効果は5年、場合によっては10年というスパンで効果が出てくるので、その間、「失われた世代」が続くことになります。教師の年金が削減されるぐらいですから、教育に関する予算そのものも削られている可能性が高いでしょう。これらの投資の抑制は人的資本の蓄積を長期間にわたって妨げる効果をもつでしょう。

 そこで再びWall Street Journalが2012年7月19日付で配信したMarcus Walker and Marianna Kakaounakiの"Greeks Brace for More Pain on Wages"という記事に戻ります。正直なところ、ギリシア編も完結せずに終わってしまうなあと思いましたが、思わぬ形で戻ってきました。続きの部分はギリシャの主要産業である観光業に関する叙述が中心になっているのですが、やや焦点が絞れていない印象もあるので、この点に関しては簡単に要点をメモするだけにします。観光業の場合、観光客が減少している上に、トルコを含む地中海諸国が新しい競争相手として出現してきています。ドイツやイギリスの旅行関連業者はギリシャを去り、ポルトカラスではロシアの業者が力を増しています。もちろん、この状況に観光業界も手をこまねいているわけではなく、ホテル業や旅行業の労働組合は15%の賃金削減に合意しました。ホテルの場合、新しい最低賃金は月568ユーロですので、これでもコスト競争では苦しいのかと驚きます(これではさすがに私の家賃(今住んでいる都市圏ではかなり安い方です)も払えないですね。日本の物価と調整せずに比較するのはほとんど意味はないのですが)。また、2003年以来のECBの低金利政策によってバブルが助長されました。ギリシャでは公的部門が、スペインやポルトガルなどでは民間部門が借金を増やしました。ECBがユーロ圏をあたかもドイツなどと均質な経済圏であるかのようにみなしていたため、南欧諸国にとっては金利は低すぎたという指摘は的確だと思います。ギリシャの場合、財貨やサービスの輸入が増え、物価は上昇し、ビジネスコストは上昇しました。

Wages in much of Greece's economy have already fallen some since the country's recession began in late 2008. But the EU and the IMF say internal devaluation has a long way to go before Greece is competitive enough internationally to begin an export-led recovery.

Estimates vary on how much prices need to fall in the euro-zone periphery, relative to the core economies. Economists say Greece and Portugal face the biggest challenge, while Spain and Italy need smaller but still painful adjustments.

The EU-IMF bailout program for Greece seeks to cut labor costs by 15% in the next three years. A recent report by economists at Goldman Sachs says that, without major structural reforms, Greece would need an internal devaluation of nearly 30% to turn around its trade balance and end its dependence on foreign borrowing.

Greece would need less wage-cutting if its economy weren't so cluttered with red tape and cartels, economists say. Reforms to make the economy more flexible would help competitive export industries to grow.

But such overhauls are politically contentious and usually take years to work. Meanwhile, fiscal austerity is hampering the ability of Greece and other southern euro nations to educate and train workers, and a lack of demand from elsewhere in Europe is giving exporters little incentive to hire.

The IMF's latest report on Greece warns that internal devaluation can fail. The few cases of countries regaining their competitiveness by suppressing labor costs, such as Germany and the Netherlands some years ago, happened in a better international environment, and in more flexible economies with less debt. "Most of the conditions for success are missing in Greece," the IMF report said.

One such condition is functioning banks. Greece's banks, pummeled by losses on Greek government bonds, are barely able to lend, starving even healthy businesses of liquidity for daily operations, let alone for investments that might take advantage of falling wages and costs.

 ギリシャ経済の大部分における賃金は、2008年以来の景気後退から低下してきた。しかし、EUやIMFはギリシャが輸出主導の回復を始めて国際的に競争的になるには国内の「通貨切下げ」が長期間にわたると述べている。

 ユーロ圏の周辺においてどのぐらい物価が下がる必要があるかということに関する推計は幅がある。経済学者はギリシャやポルトガルは最も大いなる挑戦に直面する一方、スペインやイタリアはより少ないものの、痛みをともなう調整を必要とすると述べている。

 EUとIMFのギリシャに対する救済プログラムは、次の3年間で労働コストを15%ほど削減しようとしている。ゴールドマンサックスのエコノミストの最近の報告では、主要な構造改革がない場合、貿易収支を均衡させ対外的な借入への依存を終わらせるためにはギリシャ国内の「切下げ」は30%程度であると記している。

 経済学者が、ギリシャ経済が「お役所仕事」やカルテルによって乱されていなければ、ギリシャの賃金削減はもっと少なくて済むだろうと指摘している。改革によって、経済はより柔軟になり、競争的な輸出産業の成長は促進される。

 しかし、そのような見直しは政治的な論議を呼ぶし、機能するまでに通常は数年を要する。そうしている間に、緊縮財政はギリシャや他の南欧のユーロ圏の諸国が労働者を教育し訓練するようにできることを妨げている。また、ヨーロッパにおける他地域からの需要の欠如が輸出業者に雇用するインセンティブを与えないでいる。

 IMFは最新のギリシャに関する報告書で内部的な切り下げが失敗するだろうと警告した。数年前のドイツやオランダのように、賃金の切下げで競争力を回復したのは、よりよい国際的な環境と債務が少ない、より柔軟な経済においてである。「成功の条件の大半はギリシャには欠けている」とIMFの報告書は主張する。

 その条件の一つが機能する銀行である。ギリシャの銀行は、ギリシャ政府の国債で打撃を受け、健全なビジネスが日々の事業のための流動性が枯渇していても、貸出能力はほとんどなく、賃金や他のコストを下落を利用するであろう投資に対しても独力に任している。


 この後に、記事はPetas氏の工場の話に戻っており、余韻がありますがカットします。ギリシャでは既に小泉政権の「構造改革」などお遊戯レベルとすら感じるほど苛烈な賃金カットと緊縮財政が進んでおり、IMFやEUはさらに厳しい改革を要求していることが第1のポイントです。第2に、Walker and Kakaounakiが指摘するように、緊縮財政下のギリシャ経済のオーバーホールは政治的困難と機能するまでのタイムラグがあまりに大きく、ギリシャ経済のみならず、ギリシャ社会そのものを不安定化させかねないリスクを伴う点です。第3に、IMFは緊縮財政と経済成長の両立が困難なことを理解しているようですが、解決すべき具体策はないのが現状だという点です。最後の点は私自身が思い浮かばないのですから、IMFを責めようとは思いません。ただ、「トロイカ」の一角にありながら、残念ながらバブルの発生と拡大、後始末など金融政策において統治能力を欠いているフランクフルトを牽制し、無能なEU官僚を誘導する能力はないのが悔やまれます。

 ずいぶんと長くなりました。サラマスサマラス首相は、改革へのより具体的な取り組みを表明する一方で、経済成長がなければ、ギリシャ経済を弱体化させるだけだとも発言しています。Walker and Kakaounakiの記事を読んでいると、ギリシャにあまりに同情的になるのでいったん離れたのですが、サラマスサマラスと独仏首脳の会談の記事を読みながら、力を持っていながら使い方を知らずに非力な存在を振り回す姿は醜く、最後は自らも滅ぼすのではないかという「寝言」が浮かびました。


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2012年07月25日

進行するユーロ危機 ギリシャ(2)

 あまり時間がないので、早速、本題です。WSJが2012年7月19日付で配信したMarcus Walker and Marianna Kakaounakiの"Greeks Brace for More Pain on Wages"から引用が続きます。以下の指摘は目新しいものではありませんが、あとででてくるIMFやEUの見方と対比すると興味深いと思います。

Greece, Spain, Portugal and Italy all face the same arduous route to recovery as Mr. Petsas's business. They must push down wages and prices at the same time as they labor to pay down heavy public or private debts.

There is hardly any successful precedent. In advanced economies, wages generally fall only amid long recessions and mass unemployment, and even then, only slowly. In Greece, the public backlash against such immiseration has brought the nation to the brink of ungovernability.

To make matters worse, the more incomes fall and economies shrink in the crisis countries, the less confidence financial markets have in their ability to repay their debts, adding to capital flight from banks and government bond markets.

If the euro zone unravels, the deeper reason won't be fiscal indiscipline or political dithering. It will be because struggling nations' euro membership, coupled with Germany's approach to its own economy, leaves them with a route to recovery that some economists say is barely feasible−socially, politically or financially.

 ギリシャやスペイン、ポルトガル、イタリアはすべてPetsas氏の事業と同じように、困難な回復への道に直面している。これらの国々は、重い公的負債または民間の負債を返済すると同時に賃金を引き下げなければならない。

 成功した先例はほとんどない。先進国では、賃金は、一般的に長期の景気後退と大量の失業が生じている最中でのみ、ごく緩慢にしか低下しない。ギリシャでは、そのような窮乏化に反対する社会の反発が、国家が統治できないという危機を招いた。

 問題を悪化させているのは、所得がより減少し、危機に陥った国々の経済が収縮すると、金融市場でこれらの国軍の債務を返済する能力に対する信頼がさらに失われてしまうことだ。加えて銀行や公債市場から資本逃避が生じる。

 もし、ユーロ圏を解体すれば、財政的な規律が乱れていることや政治的混乱がより深い理由ではないことがわかるだろう。より深い理由は、ユーロに参加している諸国が、ドイツの自国経済へのアプローチに連結されていることである。ドイツのアプローチに関しては、経済学者の中には社会的に、政治的に、あるいは金融の面から実現可能性がほとんどないと述べる者もいる。


 実際に紙にノートしているだけなら不要のお断りですが、私は上記の見解に近く、ギリシャの財政規律などを無視してもよいとまでは思いませんが、ドイツのユーロ圏における失政がユーロ危機の原因の主たる要因であり、南欧諸国自体の問題は従だと考えております。これは、一般的とはいえない特定のスタンスで、私の知る限り、アメリカの経済学者でも支配的な見解ではないと思います。ただ、日本と比較すれば、クルーグマン先生はちと極端すぎてついていけないのですが(案外、こういう変態(失礼!)の方が異常な時代には物が見えている可能性があるのではと思うこともありますが)、ドイツの緊縮財政がユーロ危機の主たる要因として捉える立場の専門家が存在するように思います。

 この点に関しては、だから日本の専門家はダメだというつもりはまったくなくて、IMFやドイツ流のアプローチ、すなわち危機が生じている国の財政規律を回復して、労働市場などで構造改革を行うという方法は、通常の事態であれば、排斥するほど問題のあるアプローチではないと思います。また、私自身はちゃらんぽらんなので、WalkerほどIMFやドイツのアプローチに批判的ではない部分もあって、財政規律の回復や構造改革などは危機の解決の本質的な手段ではないけれども、ドイツを宥めておくにはあるレベルまではやむをえない部分があるだろうと。これは不純な政治的理由ですが、ドイツの言い分を完全にシャットアウトしてしまうと、ユーロが本当に壊れる可能性が高いでしょう。これは避けたいということですね。寄り道はこれぐらいにして記事に戻りましょう。

Germany could help these nations recover, many economists say, by increasing spending to boost domestic growth and imports, or by tolerating significantly higher inflation so that Mediterranean wages become more competitive in relative terms. But Germany isn't prepared to take either step because it fears for its own hard-won stability and competitiveness.


 上記引用では、要はドイツが財政刺激でまず自国の内需を拡大して地中海諸国の競争力を回復させるべきだが、そんな気はないと指摘しています。この点は、前回ちょっと疑問ですねと書いた部分です。ドイツに同情するというより、反論としては弱いのですが、ドイツが財政支出を拡大して地中海諸国の需要を補おうとしても、輸入先として地中海諸国の財貨やサービスのみが選択されるわけではないでしょう。また、債務危機は金融市場の問題で実体経済が仮に多少でも回復すれば、地中海諸国の犠牲は軽減されるかもしれませんが、根本にある信用不安そのものは財市場から切り離すことはできないとはいえ、財市場だけを見ていては解決しないだろうと。もっとも、ドイツは緊縮財政を実施しているおかげで低金利という恩恵を被っているのだから、その恩恵を地中海諸国の救済に回すべきではないかという主張に反論を考えているのですが、なかなか難しいです。現実のドイツの政策は救いようがないというのが率直な実感ですが。

 想像以上に長くなってしまいましたので、労働市場に関する部分は「続き」に回しました。内容的には素人が、根拠薄弱なまま「寝言」を呟いているだけですし、お暇な方だけでよかろうと。十分な検討がないまま、ずいぶん大胆なことを書いてしまったなと思いますが。なお、この「寝言」のタイトルを「進行するユーロ危機 ギリシャ(2)」としたため、前の「寝言」のタイトルを「進行するユーロ危機 ギリシャ(1)」としました。


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2012年07月23日

進行するユーロ危機 ギリシャ(1)

 ユーロ圏の話は、さすがに疲れていたのですが、目を通してはおります。ユーロ圏がデフレーションに転じたというのはいよいよユーロが袋小路に入っていることを象徴しているように思います。対ドルで下げている通貨が域内では価値が上がってしまうわけですから。

 思えば、2010年2月15日に書いた、「ヨーロッパを変貌させた『ギリシアの悲劇』 "The Greek Tragedy That Changed Europe"」という「寝言」は、たまたま取り上げたSimon Johnsonの記事の見通しがよかったおかげで、ぶっちゃけ読者の方には申し訳ないのですが、自分が一番、読み返して助かるなあと。ユーロ圏の諸国にとっては、ユーロの存在自体が、国内経済に与える影響という点で、第2次世界大戦前の金本位制と酷似するという洞察は、その後のユーロ圏の動向を見る上で、非常に有益な視点でした。「ユーロ本位制」の下で将来が見えない消耗戦をギリシャが強いられている記事と緊縮財政でますます煮詰まっているスペインの記事が目につきましたが、まずはギリシャから参りましょうか。

 Wall Street Journalが2012年7月19日付で配信したMarcus Walker and Marianna Kakaounakiの"Greeks Brace for More Pain on Wages"という記事は、「ユーロ本位制」がギリシャの経済的・政治的安定を今もなお破壊している状況を描写しています。ジャーナリストらしく、コモティニというギリシャの北東部に位置する都市の製造業の描写が中心です。冒頭でユーロ加盟当時には90近くの工場で賑わっていた工業団地が現在では26にまで減少したと述べています。これに続けて、「ユーロ本位制」という表現は用いていませんが、ユーロが存在するおかげでギリシャの国内経済が破壊されるメカニズムを端的に表現しています。

Greece, like other euro members that now need financial help, struggled to compete in the European and global economies as cheap credit and structural problems inflated prices and wages faster than its palette of products could justify. Now, lacking a national currency that can depreciate to make its goods cheaper in foreign markets, it must embark on a grinding "internal devaluation," pushing down its wages and prices.

 ギリシャは、他の財政的な支援を必要とするユーロ加盟国と同じように、低金利と生産量の増加よりも価格や賃金がより速く上昇するときに、ヨーロッパ経済と世界経済で競争するよう努めた。外国市場で財を安くする自国通貨を欠いているために、ギリシャは過酷な「国内的な通貨切り下げ」、すなわち賃金と価格の押し下げることに手を付けなければならない。


 訳にてこずったので、実は日曜日に「寝言」を書き始めたのですが、全体を読んだだけで寝てしまいました。お世辞にも訳として正確でもなければ、こなれてもいないと思います。ギリシャ危機が本格化して1年ぐらいしてから自国通貨がないことが問題の解決を困難にしているという指摘を日本語でも見るようになりましたが、この問題を記事の軸に据えて、ジャーナリストらしく、取材内容を整理している水準の記事というのは残念ながら日本語では見たことがありません。私程度の英語力でニュースの大半を英語に依存するというのは無謀極まりないのですが、記事のレベルが違いすぎるので、辞書を引く手間をかけても、英字紙を読み続けるでしょうし、そうせざるをえないのが実情です。

 余計なお世話ですが、どこぞの経済専門新聞はオリエンタルランドの決算でまたやらかしたようで。いまどきインサイダーまでやっているとは思わないのですが、疑うほうが普通ではと思います。この国のトップや周囲の知的階層は能力が低く、人の上に立つ際に最低でも要求される道徳もないというのが現実なのでしょう。東北地方太平洋沖地震とそれに伴う津波、東京電力福島第一原子力発電所の事故などは日本人が自分の歴史として記憶する、欠かせない「歴史」ですが、最も公的な機関が議事録すらまともに残せないようでは論外です。驚くのはメディアの扱いが異常に小さくて、日本ではコソ泥が厳罰をくらい、(現行犯の)強盗犯が無罪放免されるのかと驚き入ったしだいです。

 それはさておき、ギリシャですが、この記事は分量がやや多いので、全訳するのは無理です。他方、部分的な訳では記者が冷静に観察する一方、ギリシャ人への温かい視線が伝わらないと思います。残念ながら、この「寝言」では後者を犠牲にせざるをえません。後者は参照した記事をお読みいただいて、感じていただけばと思います。何様なのかは知りませんが、訳知り顔で選挙のたびにまたギリシャがやらかしたみたいな論調で平気で論評できる輩の精神の背後を疑いますが、(背後にはなにもないだけかもしれませんし)「時の最果て」のモットーである「他人がそうであってもお前がそうであってはならない」にだけ従うことにします。

"When we became one with Europe in currency, many Greeks thought we were all one economy," says Dimitris Petsas, whose underwear factory is one of Komotini's survivors. "We forgot that we have to actively export, to bring the euros of Germany and core Europe to Greece." Instead, he says, "the core countries stripped us naked."

 「ヨーロッパが一つの通貨になったとき、ギリシャ人の多くは一つの経済になったと思いました」とDimitris Petsasは言った。彼の肌着工場はコモティニの生き残りの一つだ。「私たちは積極的に輸出してドイツやヨーロッパの中核国からユーロをもってこなければならないことを忘れていました」。もっとも、彼はこうも述べた。「中核の国々は私たちを丸裸にしたけれどね」。


 この記述に続いて、Petsasが賃金の3割カットを実行し、肌着工場を中国やインドとまともに競争しても、やっていけるところまで復活させたと記述されています。他方、工場で働いている従業員の賃金はモーゲージや車のローンの支払いでなくなる水準にまで低下していると指摘しています。後半で指摘がありますが、単にギリシャがダメだと批判するのは簡単なのですが、ギリシャを襲っている、ウォーカーの表現を拝借すれば、"internal devaluation"(国内における通貨切下げ)の過酷さを考えると、ギリシャの政情不安が、必然とまでは言えないとは思いますが、"internal devaluation"の辛さが政治に反映しているのだろうと思います。

 「寝言」とはいえ、あまりにひどい脱線もあり、予定よりも長くなりました。このあたりで、公開して(あるいは後悔して)楽になりたいなと。続きは、睡眠時間が確保できたときになりますので、あまり期待なさらないで下さい。


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2012年07月02日

ユーロ危機が続くメカニズム

 ユーロ圏関係の記事が土曜日で出尽くした感じで、見ているのは、WaPoとWSJ、NYTの3紙ぐらいですが、あっという間にオバマケアの方に関心が移っているご様子です。Caluculated Riskが2012年6月30日付で掲載した"On Europe"という記事がよくまとまっていて、いつも感心します。クルーグマンの見方でも私から見れば十分、楽観的です。ヨーロッパ版のTARPとQE(Qualitative Ease 質的緩和と訳すぐらいですが、(原文で"a very small version of quantitative easing"とあるので、どこをどう読んでも普通の意味のQE(quantitative easing)です。ここは単なる読み間違い(なにか妙な深読みをしていた気がします)ですが、完全に誤りなので訂正しておきます)この文脈では要するにECBに各国の債券を買い取れとクルーグマン先生はおっしゃっておりますな)で成長を回復するには力不足だが、危機を防ぐことができるというのは、感覚的ですが、アメリカではそうだったかもしれないですが、ヨーロッパではどうなんでしょうねというところです。この記事で一番感心したのは、最後のところですが、話を急がずに、少し適当に散歩でもしてみましょう。

A comment a few weeks ago from Mark Dow keeps ringing in my ear: "Germany is now pot committed."


 まずは、New York Timesが2012年6月26日付で配信したEduardo Porterの"Why Germany Will Pay Up to Save the Euro"というコラムが当初はユーロ危機に関する楽観的な見方としてだけ読んでおりましたが、上で紹介されている見方を読むと、異なる視点から立場が見えてくる感じがあります。タイトルの通り、ドイツがユーロ圏の救済資金を担保せよという主張ですが、理由や論旨は明快です。

  But Ms. Merkel knows that Germany must ultimately underwrite the euro’s rescue, pretty much regardless of whether its conditions are satisfied. There are three good reasons. First, the euro has been very good to Germany. Second, the bailout costs are likely to be much lower than most Germans believe. Third, and perhaps most important, the cost to Germany of euro dismemberment would be incalculably high − far more than that of keeping the currency together.

 メルケル首相は条件が満たされているかどうかにほとんど関係なく、ドイツが究極的にユーロの救済を裏書きしなければならないことを知っている。3つのもっともな理由がある。第1に、ユーロはドイツにとって有利な存在であり続けていることだ。第2に、救済の費用はドイツ人が考えているよりもはるかに小さいことだ。第3に、これが最も重要な点かもしれないが、ドイツがユーロから離脱する費用は、ユーロを続ける費用よりも計算不能なほど高くなるだろう。


 日本語ですと、ユーロ債だのそういう話がすぐにくるのですが、ドイツ政府とドイツ政府にドイツ国民を説得する道具を整理すために、単刀直入に利害得失を論じているのが好感をもてます。このコラムで興味深いのは、やはり第3の指摘です。

If the package for Spanish banks was agreed to, Germany would be left directly responsible for more than $100 billion committed since 2010 to the rescues of Greece, Ireland, Portugal and Spain. The Bundesbank is owed nearly $900 billion by other central banks in the euro area. And its banks still have hundreds of billions in loans to banks in peripheral countries. It’s hard to say what would happen to this debt if the euro were to break apart and weak countries to default. But chances are much of it wouldn’t be honored.

And that’s just the direct financial hit. The German government has reportedly estimated that the German economy would shrink 10 percent if the euro were to break up, twice as much as it did in 2009, during the global financial crisis.

 もしスペインの銀行が包括案に合意するなら、ドイツはギリシャやアイルランド、ポルトガル、スペインの救済に2010年以来コミットしてきた1000億ドル以上への直接的な責任を負ったままだろう。ユーロ圏の他の中央銀行はブンデスバンクから9000億ドル程度借りている。加えて各国の銀行はまだ周辺諸国へ数百億ドルの貸出を行っている。ユーロが放火し、弱い国が債務不履行になった場合、なにが生じうるのかを述べるのは困難だ。だが、機会は首尾よくいかない場合と同じぐらいである。

 また、それは単に直接的な金融の打撃である。ドイツ政府は、伝聞によれば、ユーロが崩壊すれば、ドイツ経済は10%ほど収縮すると推定した。これは、世界的な金融危機の最中で2009年に生じた縮みの2倍に相当する。


 ここに書いてあることが事実であり、ドイツ政府がそれを正確に認識しているとすれば、ユーロ圏の崩壊を防ぐ強いインセンティブが生じるでしょう。もはや、ドイツのユーロ離脱はないということになります。逆に言えば、ドイツのコミットを強めよと言うまでもないとも思いますが。他方、ユーロ崩壊でドイツ経済が10%程度落ち込むということは、ざっくりとした数字ですが、3000億ドルから3500億ドル程度、付加価値が減少することを意味するのでしょう。ドイツがユーロ救済のために3000億ドルの資金を焦げ付かせた場合、国内総生産の減少よりも、犠牲が大きいとドイツの有権者が判断する可能性は十分にあるのでしょう。極論すれば、3000億ドルの救済資金にドイツ政府が保証を与え、一部が焦げ付いて返済不能になれば、ドイツ人の間に残りの3000億ドルに関しても疑念が広がる余地があります。

 これはWashington Postが2012年6月27日付で配信したAnthony Faiola and Michael Birnbaumの"Germany offers vision of federalism for the European Union"という記事ではヨーロッパの政治統合を進めて、アメリカの州のように各国の主権を制限することや汎ヨーロッパ軍の創設など意味不明の主張をメルケルがしているとあったので、思わずのけ反りました。他方、ドイツとしては、他の国々がとても飲めない話を持ち出してコミットの度合いを弱めようとしているのだろうかと。

 回り道が長くなりましたが、いろいろすっきりしないことがある中で、最初で取り上げたCaluculated Riskの記事で取り上げられている、Behavioral Macroというブログの2012年6月11日の"The takeaway: Germany is pot committed"という記事を読んでなるほどと。ポーカーのルールを忘れてしまいましたが、ドイツの掛け金が実質的にポットの中にある状態では、ドイツを困らせる目的ではなく、少しでも救われる可能性にかけてどの国も降りない、すなわち危機が続いてしまい、体力の弱い国から債務不履行になるという事態が続くわけです。つまり、日本のメディアが大好きな「ユーロ共同債」などなくても、溶けるまでドイツの資金をあてにして危機が続いてしまうわけで、楽観論の本質はまだドイツがユーロ圏の救済に十分にコミットしていないという現状認識にあることになります。Eduardo Porterのコラムが典型ですが、ドイツからユーロ離脱という選択肢が事実上ない状態で、なぜコミットをさらに要求するのかといえば、ドイツのコミットが足りないことが危機を深刻化させているという現状認識が根本にあるからでしょう。これは、私のような「弱気派」のドイツが掛け金の大半をポットに収めている状態だという現状認識の差なのでしょう。WaPoの記事は飛ばしの可能性もありますが、ドイツ政府の無力感とせめて取引をしたいというドイツの苦しい立場を示した政治統合の提案なのかもしれません。

 ただし、危機の持続が安定的な解ではないのは自明ですし、Eduardo Porterが示しているドイツ経済の10%減を超える苦痛をドイツ人が救済から感じるようになれば、このポーカーは終わりを迎えます。時間稼ぎにも限界があり、現実には"muddle through"が続く一方で、事態が悪化する確率が高まったと思います。


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2012年06月30日

ウォールストリートジャーナル紙の「ブレ」

 とある動画の変な歌が聞きたくて、あるアニメを見始めたのですが、なんとか仕事に支障が出ないようにするぐらいどっぷりとはまってしまい、(年齢的な意味で)「厨二病×3(トリプル)」の恐怖を身をもって体験しております。どう考えても、普通の女の子がアイドルとして活躍するアニメの方が、まだ健全だと思うのですが、ヤバいものを見てしまった感じでしょうか。

 それはともかく、当初の期待値はかならずしも高くなかったEUサミットですが、スペインとイタリアが見殺しにされることはなさそうだという見通しが立ったようで、米紙の論調も変わってきている感覚です。とりあえずは歓迎しておくのが世の習いなのでしょうかね。Wall Street Journal紙が2012年6月29日午後12時18分(米東部時間)付で配信したGeoffrey T. Smith and Vanessa Mockの記事のタイトルは下記の通りでした。

Doubts Linger Despite Show of Euro-Zone Unity

http://online.wsj.com/article/SB10001424052702303649504577496452961191554.html

 市況欄に掲載された記事ですが、電子配信のみだったようです。米紙といえども、信用しない流儀です。昔の話ですが、こんな「寝言」を書きましたが、単に日本のメディアの質が低いだけではなく、英字紙でも誤報(誤解を招きかねない記事を含む)が生じうるということを忘れるのはちと危険かなと。

 上記の記事ですが、現在では2012年6月29日午後7時21分(米東部時間)付でStephen Fidler, Gabriele Steinhauser and Marcus Walkerが執筆者に変わり、タイトルも記事もほぼ差し替えられた状態です。

Investors Cheer Europe Deal

先のパーマリンクをクリックすると、上記の記事が開くはずです。"Doubts Linger Despite Show of Euro-Zone Unity"はWSJの記事からは完全に削除されています。ドイツがこれほど大胆に譲歩するというのが大きかったのでしょう。逆に言えば、ユーロ危機に関して、日本人の実感できない、悲観と楽観が激しく交錯していることを象徴している話だと思います。WSJはEUサミットへの期待値が低いという観測を流していましたが、現時点では市場が失望するようなボロは出ておらず、凌いだのかもしれません。

 もっとも、本当の地獄はこれからだと思うのですが。財政緊縮は最悪の選択肢だとは思うのですが、緩和すれば、今度は本格的に政府のソルベンシーが問われる局面が生じる確率が上がると思います。ユーロ圏は私の予想を超えてよく粘っていると思います。ただ、財政と金融システム、実物経済の負の相乗作用を止める有効な手立てはまだ見つかっておらず、逆に、今回の合意程度で静まるのであれば、ドイツがさっさとコミットを強めれば済むという、もっとも単純で楽観的なユーロ圏への見方が正しかったことになるのでしょう。時間稼ぎが必要だと考える理由は、現実にはそれどころではないと思いますが、財政制約の下で金融システムと実体経済の負の相乗作用を緩和するだけでも、相当の知恵が必要で、この種の知恵は土壇場にならないとなかなか出ないものですが、時間の経過が事態を悪化させる危険があるものの、知恵が出てくるには分析が不可欠なので、時間を稼ぐしかないだろうと。たぶん、これまでユーロ圏関係の「寝言」をお読みの方には私がユーロ圏をけちょんけちょんにけなしているようにしか映らないかもしれませんが、内心ではよく粘れるなあと感心しております。


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