2012年01月08日

イランとイラク(1)

 イラクからの米軍撤退によって、イラク国内の治安情勢が日に日に悪化しているのはなぜかNew York Timesが頑張って報道しているのですが、日本のメディアでは「イラク戦争オワタ」みたいな扱いで笑えますね。乱暴に単純化をすれば、シーア派の過激派の動向が問題ですが、イラン抜きでは描けないだろうと。他方、イランはイランで核開発からイギリス大使館へのデモという名の暴動まで、いろいろお騒がせ国家という風情で、こちらはさすがに検索すると報道はあるようです。最近の話題は、イランによるホルムズ海峡閉鎖のリスクですが、割と日本の報道では大したことないよと横並びのご様子で、アメリカのメディアでは見方が割れているのと対照的な印象をもちます。

 また、議会による国防予算削減にともなう米軍の戦略見直しも背景にあることを無視できないでしょう。いまだに、全体像がつかめていないので、こちらへの言及は「寝言」といえでも控えますが、イラクとアフガニスタンの引き換えにイランの核開発への制裁をオバマ政権とEU諸国が強めています。このあたりも今の段階では評価に苦しみますが、率直なところ、オバマ政権の中東政策は、アフガニスタン増派ですったもんだした頃よりはマシになっている感じがしますが、なんとも微妙な感じです。もっとも、積極的に関与するとなると、本当に難しい地域なんだなあとブッシュ政権でライスが切り盛りしていた頃を思い起こすと、しみじみ感じ入ります。表面的に見ていても本当に面倒なので。

 なお、「寝言」のお題に(1)といれましたが、続きを書くかどうかは私の気分しだいなので、あしからず。引っ越しの準備に多くをとられて、漸く年賀状を出し終えるのがやっとの状態ですので、ボケない程度にとどめたいということがあります。まあ、そんなわけで前置きが長くなっていますので、さっさと「寝言」本体に移りましょうか。

 まずはイランからです。ソースは英語ですと無暗にあるのですが、タイトルの変更があるのが気になるのを除けば、事実関係をざっくり抑えるのには、New York Timesが2011年12月27日付で配信したDavid E. Sanger and Annie Lowreyの"Iran Threatens to Block Oil Shipments, as U.S. Prepares Sanctions"という記事が良いだろうと。読み返していて、この時点で事実関係のみならず、論点がかなり整理されている印象もあります。遡ればきりがないので、この記事の冒頭にあるイランの副大統領Mohammad-Reza Rahimi(後で引用するZakariaのコラムでは実権はないとされている)がアメリカの制裁措置にホルムズ海峡を封鎖すると脅迫したことから話じゃなかった、「寝言」を始めましょう。当初と記事の内容が変わっていてちょっと残念ですが、オバマ米大統領がイランへの制裁強化に関する法律に署名したことへの反応でした。当初は法律の内容が詳しく書いてあったと思うのですが、そちらの記事が見当たらなくなっています。記事ではさらりと、"The new punitive measures, part of a bill financing the military, would significantly escalate American sanctions against Iran."と触れていますが、まずは、アメリカのイランへの制裁強化は、法律上では国防費削減に関連する一部であったという点を確認しておいた方がよいでしょう(と書いておりますが、自分用のメモです)。以下は、イラン制裁強化の内容です。

For five years, the United States has implemented increasingly severe sanctions in an attempt to force Iran’s leaders to reconsider the suspected nuclear weapons program, and answer a growing list of questions from the I.A.E.A. But it has deliberately stopped short of targeting oil exports, which finance as much as half of Iran’s budget.

Now, with its hand forced by Congress, the administration is preparing to take that final step, penalizing foreign corporations that do business with Iran’s central bank, which collects payment for most of the country’s energy exports.

The sanction would effectively make it difficult for those who do business with Iran’s central bank to also conduct financial transactions with the United States. The step was so severe that one of President Obama’s top national security aides said two months ago that it was “a last resort.” The administration raced to put some loopholes in the final legislation so that it could reduce the impact on close allies who have signed on to pressuring Iran.

The legislation allows President Obama to waive sanctions if they cause the price of oil to rise or threaten national security.

 5年にわたって、アメリカはイランの指導者に対して核兵器計画を疑われていることに再考させるとともに、IAEAからの質問に答えることを強制するよう、厳しい制裁を実行してきた。しかし、これまでの制裁は慎重にもイランの予算の二分の一にあたる石油輸出を目標とするには至らなかった。

 今や、議会による強制とともに、政権はイランの中央銀行(イランのエネルギー輸出の支払いのほとんどを集める)と取引をする海外企業を罰する、最終段階を準備している。

 制裁によって、イランの中央銀行と取引を行う経済主体はアメリカとの金融取引を行うことが事実上、困難になるだろう。オバマ大統領の安全保障補佐官の高官の一人が「最後の手段」と読んでいたほど、この段階は厳しい。オバマ政権は、イランへ圧力をかけることに合意した関係の深い同盟国への影響を減らすよう、抜け穴をつくる法案の成立を急いでいた。

 今回の法律は、オバマ大統領に、石油価格の上昇もしくは安全保障を脅かす原因となる場合、制裁を止めることを認めている。


 外務省のサイトで、「イランに対する国連安保理決議の履行に付随する措置について」(参考)を見ると、日本の場合、核開発関連を中心にイランとの貿易と金融取引が制限されていることがわかります。今回、オバマ政権が「最後の手段」として採用したのは事実上、イランを経済制裁によって破綻させることも排除しない効果をもつ可能性もあるオプションでした。「最後の手段」という表現は、直接的な武力行使を除けば、大袈裟ではないのでしょう。

 記事では、論点整理から政治的思惑を排除するために、今回の措置によって、エネルギー価格全般が上昇することによってアメリカ経済が打撃をこうむる可能性があることやオバマ氏の再選には影響がないことを政権側が認識していると指摘しています。NHKの夜7時のニュースで、共和党の予備選の段階でしかないのに(しかも候補者は小粒な印象がぬぐえないのですが)、あれほど時間を割くとは驚きです。まあ、アメリカは今年一年選挙の年であり、政治の季節になるので、党派性を抑えるために言わずもがなのことが入っているのかなと。以下、オバマ政権側の言い分です。

“I don’t think anybody thinks we can contravene the laws of supply and demand any more than we can contravene the laws of gravity,” said David S. Cohen, who, as treasury under secretary for terrorism and financial intelligence, oversees the administration of the sanctions. But, he said, “We have flexibility here, and I think we have a pretty good opportunity to dial this in just the right way that it does end up putting significant pressure on Iran.”

The American effort, as described by Mr. Cohen and others, is more subtle than simply cutting off Iran’s ability to export oil, a step that would immediately send the price of gasoline, heating fuel, and other petroleum products skyward. That would “mean that Iran would, in fact, have more money to fuel its nuclear ambitions, not less,” Wendy R. Sherman, the newly installed under secretary of state for political affairs, warned the Senate Foreign Relations Committee earlier this month.

Instead, the administration’s aim is to reduce Iran’s oil revenue by diminishing the volume of sales and forcing Iran to give its customers a discount on the price of crude.

 「重力の法則に逆らえないのと同様に需要と供給の法則に反することができると考えている者はいない」と制裁の管理を監督するテロリズム・金融情報分析担当次官のDavid S. Cohenは述べた。しかし、コーエンは、「われわれは柔軟さをえるとともに、イランに顕著な圧力となる適切な手段を選択する非常に良い機会をえた」と述べた。

 コーエンやその他の人々が表現するアメリカの努力は、イランの石油を輸出する能力を削ることよりももっと微妙で、直接的にガソリンや暖房用燃料、他の石油製品を高騰させうる一歩である。それ(制裁の強化)は、実際にはイランが核への野心を強めることを意味するだけで、弱めることはないだろうと政治担当国務次官のWendy R. Shermanは、今月の初めに上院の外交委員会で警告した。

 それどころか、オバマ政権の狙いは売上高を減少させることによってイランの石油収入を減少させ、イランに原油の価格を割り引いて顧客に引き渡せるよう強制することである。


 最後の一文は完全に誤訳ではないかと思うぐらい、「そんなことが本当にできるんですか?」と真顔でツッコミを入れたくなる話です。というわけで、制裁強化に対してeconomist(通常は経済学者で問題ないと思いますが、以下で上がっているのはカタカナのエコノミストの方に使い)からの批判が挙げられています。論点はいくつもあるのですが、大きなことだけ取り出すと以下の通りです。

(1)価格の変動をともなわずにイランの石油輸出を減らすことが可能であるのか。

 ご苦労なことに、オバマ大統領は任期のはじめからサウジアラビアやその他の産油国に供給量を増やすよう要請してきたそうですが、イランの最大の顧客である中国への代替的な供給を確保するために、サウジが増産してリビアが助けたとしても足りないであろう量をイラクやアンゴラの増産でなんとかならないかとしているようです。余計ですが、だったら撤退前にイラクの治安確保をなぜ徹底しなかったのかといろいろ問い詰めたいところですが。オバマ政権は、中国にずいぶん借りをつくっているご様子です。さらに、記事は致命的な問題を指摘しています。

(2)制裁が成功を収めてイランの石油収入が減少したとしても、イランは核開発の野望を捨てるのか。

 根本的な問題ですが、記事ではスタンフォード大学イラン研究の専門家Abbas Milaniへのインタビューによって、イラン経済が沈みつつある現状を概括するとともに、婉曲的な形で2番目の問いに否定的な展望を語らせています。本当はZakariaが核開発したイランでも怖くないよと書いていて、いいのかなという話じゃなかった「寝言」を続けるつもりでしたが、つかみの記事で疲れてしまったので、とりあえず、今日はここまでです。


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2011年12月13日

EUサミットへの懐疑

 豚の支持率が40%前後もあってドン引きしました。豚と書いては豚さんに失礼でありまして、本物の豚さんならばたんぱく質やミネラルを提供してくれますし、Pちゃんともなれば、その愛らしさにあかねにパフパフされるわけでして、所得税率を上げたいだの、消費税率を上げたいだの、えさばかりほしがってまともな成果が期待できない豚は、豚は豚でも「死せる豚」といったところでしょうか。

 それはともかく、英字紙では先週のEUサミットの結果に懐疑的な記事が目立ちます。Wall Street Journalが2011年12月12日付で配信したCharles Forelleの"Examining Europe's Crisis Deal"という記事やロイターが配信したAnnika Breidthardtの"EU summit may not calm investors for long"などの記事があります。素人目には、これらの記事より、New York Timesが2011年12月11日付で配信したSteven Erlanger and Liz Aldermanの"Chronic Pain for the Euro"という記事の方が明快に映りました。以下、自分用のメモです。

 この記事では、初めに(1)イタリアを投機筋から守るためにどれぐらいの資金が必要か、(2)銀行は危機によって失敗するのか、(3)英国の孤立、(4)ドイツが処方したブリュッセル療法は病気に対応できるのかなどの論点を提起しています。記事ではこれらの問題を一つ一つ解いていくというより、インタビューによって論点を掘り下げています。まず、Joschka Fischer独元外相は、メルケルが優柔不断で愚鈍であると批判して、結局はドイツはユーロ支援を増やさざるをえなくなるだろうという見通しを示しています。まあ、妥当なところです。

 興味深いの次のあたりでしょうか。緊縮財政とはまた間抜けな話だと思いましたが、さすがにNYTともなると上品です。

  But many argue that the core problem is less discipline than the lack of economic growth and the deep current-account imbalances − exporters versus importers − within the euro zone. Austerity tends to bring recession, not growth, and Europe needs growth to cope with its debt. But structural changes and investments to accelerate growth and competitiveness generally take years to bear fruit.

 だが、核心の問題は、財政規律ではなく、経済成長とユーロ圏内の、輸出国と輸入国の間の経常収支の不均衡だ。緊縮財政は成長ではなく景気後退を招くだろうが、ヨーロッパに必要なのは債務をやりくりするための成長だ。しかし、構造変化と成長と競争力を加速するための投資が成果をえるには一般的には歳月がかかる。


 ただ、上の見方にも問題は多くて、成長を促進したり、経常収支の不均衡を解決するために政府にそれほどの手段があるのかという点はあまり考慮されていないと思います。他方、間違いがないのはユーロ圏を確実かつ不可逆的に破壊する手段として緊縮財政ほど適切な手段はないというあたりでしょうか。Jean Pisani-Ferryはインタビューでスペインとアイルランドのここ数年の財政赤字がマーストリヒト条約の基準を満たしており、イタリアにいたっては、ユーロ圏では財政赤字が最も少ない水準の国の一つであり、プライマリーバランスが黒字であったと指摘しています。

 また、Bernard Avishaiは、南欧諸国がどのような環境下で最も成長しやすいかが問題であり、通貨切り下げは解決策にならないと述べています。成長の鍵となるのは安い労働力ではなく知的水準の高い労働力とハイテク産業への資本を海外から引き寄せることだと指摘しています。そんなうまい話が実現できるかは疑問ですが、「成長戦略」の一つであることは否定できないでしょう。

 時間がなくなってしまったので、いったん打ち切りです。お断りなく、この「寝言」を再開することがあるかもしれません。


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2011年11月25日

ドイツの動揺 ユーロ圏への重圧

 今日で、チャンピックスの服用を始めてから3週間が、完全禁煙を始めてから2週間が過ぎます。禁煙そのものについて書くことはあまりないのですが、チャンピックスの副作用はやはり厳しいです。不眠は相変わらずですし、油断していると便秘になります。困ったことに、木曜日は、疲れというよりも眠気でフラフラでした。4週目あたりから、朝1錠で済ませたいなあと。土曜は日帰りで出張ですので、日曜日あたりが試すのにはちょうどよさそうです。

 夜も公共放送様がドイツ国債の札割れで騒いでいるのですが、すぐに株価の話に移るので、かえって話がわかりにくいなあと。実を言えば、昨晩の10時に寝たのですが、3時には目が覚める始末で、木曜日の朝に頭が働かない状態で読んだ記事を読み返しました。正真正銘の寝言になりかねない感じですが、Wall Street Journalが2011年11月23日付で配信したGeoffrey T. Smith and EMese Barthaの"German Bond Sale Spurs Worries"という記事(配信時の記事タイトルは、プリントアウトした記事を見ると、は"Bond Auction in Germany Rise 'Alarm'"でしたが)によると、ドイツ政府は10年物国債を60億ユーロほど入札にかけたところ、36億4,400万ユーロ分しか売却できなかったとのことです。平均利回りは1.98%。その後、ドイツの長期金利(10年物国債)は2.09%に上昇しました(2011年11月25日午前7時現在で2.194%)。素人目には、6割しか売れなかったというのは残念な感じですが、英語でも"rose sharply"とあるものの、金利そのものは2%ちょっとかと。今のユーロ安の傾向を考えれば、あまり驚かない感じです。

 上記の記事では、このままドイツの長期金利が上昇すると断定するには時期尚早だと明確に述べた上で、金融危機以前は、ドイツの債務はアメリカの債務よりも質が良いとみなされてきたために、金利もドイツの方が低かったが、金融危機でその地位が逆転したと指摘しています。素人目には、ユーロがドルに対して持続的に減価していることはユーロ圏から資金が流出している可能性があることを示しているのだろうと。ユーロ安の傾向が続くとなりますと、ドイツ国債といえどもユーロ建てであれば、値打ちが下がりますから、敬遠されるのでしょう。なんのひねりもない観察ですが、ドイツ国債の札割れ自体は株式市場にショックを与えたこと自体は間違っていないとは思いますが、問題は、CalculatedRiskが指摘しているように(参考)、他のユーロ圏諸国の金利が急上昇していることでしょう。ユーロ圏が溶けるのにはギリシャが溶けるのに2年ぐらいかかったので5−10年ぐらいかなと思ってみているのですが、思わぬ「事故」で早くなることもありうるのかもしれません。

 あと、株式市場の心配をするのならTOPIXを使った方が良いと思うのですが。700円台割れ目前で2003年の「死んだ市場」がかわいく思える、バブル後、最悪の水準ですね。東証一部の時価総額も243兆円台と終値ベースでは発行済み株式数の変化を考えると、実質的にバブル崩壊後、最悪なのではと。そんな状態で増税を平気で口にする豚の神経だけは全く理解できないです。


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2011年11月07日

パパンドレウ首相辞任へ?

 なんとか日曜日は喫煙本数を17本に抑えました。いまのところ、チャンピックスの副作用らしきものはまったくなくて、快適です。問題は、禁煙を意識しなくてもまったく吸わなかった先週に比較して、扁桃腺の炎症から回復したせいか、風邪薬を飲まなくなったせいか、喫煙への欲求が戻ってしまったことでしょうか。今週の土曜までは助走期間なので、あまり禁煙、禁煙と気持ちを抑えつけずに、吸いたくなったら、歯を磨くとか気をそらす習慣をつけるのが目標です。

 日曜日の午後10時頃にグーグルのリーダーでWall Street Journalが2011年11月6日付で配信した"Greek Leader May Step Down"という記事を読みました。辞書を引かずにざっと読んだ程度ですが、パパンドレウが"Socialist party"と"New Democracy party"の間で超党派の合意を形成するプロセスがこう着状態に陥っているのを打開しようとしていることは読み取れました。パパンドレウが提案した住民投票で支援策の実施が疑問視されましたが、支援策が実施されなければ12月半ばにギリシャは資金調達に困難を来すだろうと記事は指摘しています。"New Democracy party"は、10月27日のユーロ圏の決定を支持していると指摘しています。住民投票を提案したり、引っ込めたりして慌ただしかったのですが、パパンドレウが合意形成の障害になっていたという印象をもちます。

 仮に、パパンドレウが退陣して挙国一致内閣が形成されたとしても、財政再建や構造改革が進むのかは、疑問があります。2010年2月15日にギリシャ問題に関する「寝言」を書いたときには、この時期までこの問題が長引くとはあまり考えておりませんでした。この状態でイタリアやスペインがさらなる困難に直面すれば、ユーロ圏の政治的混乱によって国際的な資本市場は巨大な不確実性と面と向かわなくてはなるのでしょう。

 G-20の機能不全やオバマの、国内だけではなく国際的な指導力の低下によって、ブレトンウッズ体制が形骸化する一方、新しい国際経済の秩序は見えないのが現状だと思います。このあたりがタバコを吸わずに書ける限界なので、中途半端ですが、このあたりで終わりにいたします。

Charles Forelle, David Gautheier-Villars and Sudeep Reddy, "G-20 Wraps Up With Little to Show", Wall Street Journal, November 5, 2011.

http://online.wsj.com/article/SB10001424052970203804204577017353037510564.html

Carol E. Lee and Sudeep Reddy, "Obama, on Periphery, Leaves Empty-Handed", Wall Street Journal, November 5, 2011.

http://online.wsj.com/article/SB10001424052970204621904577018172111629132.html


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2011年11月06日

禁煙助走期間+ユーロ危機+おまけ

 2011年11月5日からチャンピックスの服用を始めました。処方されたのは先週でしたが、風邪薬との相乗作用で眠気が強くなるかもしれないとのことで、今週の土曜日(2011年11月5日)から服用を介しました。最初の3日間は0.5mg錠を毎朝1錠ずつ服用することになっています。4日目から7日目までは0.5mg錠を朝晩に1錠ずつ服用します。1週目は禁煙の、いわば「助走期間」で、喫煙してもかまわない期間です。2週目から禁煙です。チャンピックスの服用も1mgを朝夕に1錠ずつの服用になります。実は熱を出してから、ほとんどタバコを吸っていなかったので、先週から始めておいた方がよかったかもなあと。風邪薬の効果かもしれないのですが、一番、タバコを吸いたい衝動を抑えるのが難しい朝でも、我慢すれば1時間ほどは耐えられる状態でした。今週の水曜日ぐらいから喫煙したいという衝動が強くなって、目が覚めてから3時間以内で6本は吸ってしまいます。1日当たりだいたい25本前後なので、発熱以前よりはかなり減っているのですが。

 11月は禁煙しなくてもまったく吸わない日がよくある不思議な月です。理由は自分でもよくわからないのですが。しかし、ちょっとしたきっかけで吸ってしまうので、やはり意識的に禁煙しないと難しいです。この「寝言」はテストみたいなもので、タバコを吸わずに書き終えられるかどうかを試しています。無理だったら、3カ月の治療期間中は更新を停止しようと。鬼門は頭を使う作業と酒と決まっているのですが、酒は弱くなったことにしてあまり飲まなければ大丈夫かなと。実は、半分空けていたワインをちびちびやりながら書いているのですが、いまのところタバコを吸いたいという気分ではないです。ちなみに、チャンピックスの服用は3か月間です。1年間は健康保険が使えない状態になります。金銭的なインセンティブというのは、実は人間の行動全体をみれば、それほど決定的ではないのではと思ったりしますが、バカにもできません。しかしながら、より決定的なのは、実は不眠や睡眠リズム障害の原因が喫煙ではないかと前から感じていて、やめられるんだったらやめたいというところです。嫌味もこめて民主党には感謝していますね。税負担をする上に疎まれるのだったら、さっさとやめてやれというきっかけぐらいにはなっている感じでしょうか。

 さて、ここまではタバコを吸いたい衝動に駆られることもない、他愛のない話ですが、ユーロ圏の動揺をどこまでタバコに頼らずに書けるかなと。昔、読んだ岩波新書にタバコの精神的依存性はコカイン並みで、禁煙して1年ぐらいは作業効率が20−30%低下するとのことでした。最近は、英語原文と訳文を並べるのをよしていますが、時間がないのが主な理由です。今回は、リンクも省略です。おびただしい量の記事が出回っており、日本語のネットでは単純な勘違いだと思いますが、意識的に書いているとすればデマとしか言えないような話が多いです。他方、日本語でも『日経ビジネスONLINE』の熊谷徹「ギリシャ危機が持つ第二次大戦以来の破壊力」(参考)などはよくまとまっていると思います。

 英字紙でもあまり触れられないのですが、ユーロ危機は、政治プロセスが脇役ではなく主役だという点が本質だと思います。この点が2008年の金融危機よりもはるかに問題の解決が見えない大きな要因だといってよいとすら思います。2008年の金融危機でも、TARP法案がいったんは否決されたことで、市場が大荒れになりました。ユーロ危機は前回の金融危機よりもはるかに政治プロセスが大きな要因であり、経済合理性とはかけ離れた主体が主要なアクターであることを忘れることが最も危険でしょう。EFSFの強化に1兆ユーロを超える金を用意しようというのはなかなか立派ですが、率直なところ、中途半端な印象です。サブプライムローンだけでも数千億ドルの損失が生じるという見通しがあったのですから、資本市場の根幹である国債への信頼が揺らいでいる状態ではせめて倍ぐらいはほしいところです。他方、そんな資金をどうやって調達するのかという問題はあるのですが。ただ、崩壊寸前だったDAXなど大陸ヨーロッパの株式市場は、ギリシャのヘアカット50%との組み合わせによくわからないのですが、好感したことは事実でしょう。問題の先送りに過ぎないことに気がついているのかもしれませんし、あるいはもうすぐ気が付くのかもしれませんが。

 Papandreouが"referendum"を提案したという記事のリード文を斜め読みしたときには、ニコチン切れの禁断症状もあって、当初から住民投票をする予定だったのかなと思いました。読んでいたら、まさかのスタンドプレー。WSJに限らず、国民投票にかけるというパパンドレウの提案にはネガティブな評価が多かったのですが、私は根っから「外道」なので、このまま突っ走って、救済策へのギリシャ国民の不支持が確定してくれれば、金融市場は大荒れでしょうが、独仏首脳もユーロからの退出を規定する気分になるだろうと。退出規定がすべてを解決するとは思わないのですが、ユーロ圏から退出させるという最終手段を欠いた状態では救済策とセットの「構造改革」には強制力を欠きます。もっとも、退出という手段を設けても、実際に発動するのは困難でしょうから、悩ましい部分はありますが。

 正直なところ、この1週間でユーロ関係だけで異常に記事が多かったので、どこに書いてあったのかを忘れてしまったのですが、パパンドレウの出身政党はギリシャ議会できわどく過半数を確保している状態とのことでした。また、信任投票を控えていたことも背景にあるのでしょう。いずれにしても、自らの統治の正統性に疑問符が投げかけられていたパパンドレウが分の悪い博打に出ようとしたのではないかと根拠のない憶測をしています。驚いたのは、これを受けてDAXがぼろぼろに下がったことでしょうか。取引に集約される経済合理性とはかけ離れた主体が前面に出てくる状態では、想定外のことが起きる方が常態といってよいように思いますが、さすがに狼狽しますか。頭でわかっていても、この種の不確実性は取引に慣れた人には嫌われるのでしょう。当初は、慌てすぎじゃないのと冷めた目で見ていましたが、書いているうちに、慌てる方が普通なのかもと思いました。パパンドレウが国民投票を撤回しても、DAXは微妙な感じです。信任投票もクリアしたので、今後は財政再建の実行力が問われることになりますが、あまり期待していないというのが率直なところです。財政再建に強制力がないとなると、イタリアやスペインなどユーロ圏のはるかに巨大な経済規模な諸国の国債への疑心暗鬼が広がる可能性が高いと思います。

 他方、景気後退が進む中で緊縮財政が好ましいのかというジレンマもあります。裁量的な財政政策の効果は疑問ではあるのですが、景気が悪化する過程で政府が需要を吸い上げるような政策をとるのが好ましいのかも疑問です。ああでもない、こうでもないの連続で申し訳ないのですが、歳入以上に歳出が野放図な状態では、今日の管理通貨制度の根幹の一つである国債への信認が揺らぐことを抑えるのは困難でしょう。2008年の金融危機で最も懸念していたのは、金融危機への対応で財政が悪化するであろうアメリカの国債への信認が失われることでした。幸いなことに、リスク回避の主要な対象として米国債が選択されたおかげで、どん詰まりの状態には陥らずに済んだと評価しています。その意味では、2008年の金融危機というのは規模という点では未曾有の事態だったと思いますが、現時点では(あれは発端に過ぎないかもしれないという杞憂を払拭できないからですが)リスク回避に米国債が選択されたという点では、金融派生商品によってバブル崩壊が増幅されたとはいえ、上がりすぎたものが崩れたという、昔からある普通の話であったとすらいえると思います。まあ、もちろん、しゃれにならない事態ではありましたが。ユーロ危機は、ユーロそのものの信認は崩れていないものの、加盟国の国債への信認が失われつつあるという点で、2008年の金融危機とは異なった深刻さがあることを忘れない方が良いと思います。


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2011年10月20日

金儲けが下手になったアメリカ

 節電を意識しているわけではないのですが、9−10月期の電力使用量が前年比50%減となり、支払い金額も3000円ちょっとと家計としても助かります。それでも1ヶ月で120kWhも使っているのかとびっくりです。月曜日の『日経』の経済教室によると、増税で将来の見通しを明確にせよとのことですが、既に将来の見通しなど明白で、(1)1960年生まれ以降の世代は年金制度の維持のためにはそれよりも下の世代を骨までしゃぶりつくすつもりでいること、(2)正規雇用は税務当局の所得補足率がほぼ100%なので現状のままでも総支給が増えても手取りはよくて現状維持がやっとであること、(3)税制などマクロ環境は努力するほど罰を受ける傾向が強くなるであろうことなどは自明でしょう。光熱費をはじめ、1ヶ月あたりの生活費をなんとか10万円以内に抑えて、月に30万円程度は貯蓄に回さないと、東証一部時価総額が260兆円をうろちょろする状態では公的年金制度は実質的に破綻していますから、社会保険「税」をとられた上で生き残りに必死になるしかないのでしょう。

 日本語でユーロ危機に関する記事がやたらと増えてくると、「寝言」が浮かばなくなるという根っから根性が曲がっている外道です。まあ、以前に書いた「寝言」でとりあげた記事の見通しがよくて(「寝言」そのものの見通しがよかったといういみではありません。念のため)、IMFが一枚かんでも大して改善しなかったことやユーロ圏からの退出が実現しなかったなど、外れている部分も多いのですが、率直なところ意外なことはあまりないので「寝言」も浮かばないです。CalculatedRiskが配信していた"Countdown to Euroday Oct 23rd: Another wild day"という記事が英字紙の混乱を手際よくまとめていて、脱帽です。ユーロ圏が、某動画の長安のように溶けるのに、半年程度なのか、5年程度なのか、意外としぶといのかまでの見通しはないのですが、ギリシャ一国でものた打ち回るたびに株価が乱高下したので、大変だだなという感じです。

 日本が亡き後、「先進国」でなんとか影響力を残してきたアメリカですが、オバマ政権が衰退へのロードマップをつくってくれていて本当にありがとうございましたという感じでしょうか。日本のエコノミストの"double dip"は鼻で笑っておりました。だって、バブル崩壊の後始末が容易ではないことは自国が経験済みですし、"deleveraging"が一段楽しても(これさえ楽観できないのが現状ではありますが)、資産効果が見込めない状態が続けば、先進国はジリ貧に陥るのも自明でしょう。ユーロ危機がしばらくは日本のマスメディアの注目点の一つになりそうですが、アメリカの金融機関の収益力低下も、地味に進んでいます。

 New York Timesが2011年10月18日付で配信したSusanne Craigの"Goldman Loss Offers a Bad Omen for Wall Street"という記事は、断片的ですが、1999年の上場以来、ゴールドマンサックスが金融危機に引き続いて2度目の損失を計上した背景を、ごく浅く描いてはいるものの、興味深いです。JPMは4%の利益減。BofAとCitiは際立った利益を計上したものの、業績そのものは回復しておらず、会計的な手続きによるものにすぎないと述べています。また、各金融機関の一株利益も金融危機以前はもちろんのこと2010年と比較しても、大幅に減少しているというデータを示しています。収益力が低下した背景の第一として、自己勘定売買を制限され、借入金を抑制され、自己資本比率規制が強化されたことなどが挙げられています。まあ、金融危機後に規制強化自体はやむえをないのでしょうが、オバマ政権でガイトナーの影が薄くなり(そういえば最近は米紙の見出しはもちろんリード文にも出てこないので財務長官は交代したんでしたっけ?)、古色蒼然とした「ボルカールール」が一人歩きするなど、オバマ政権の経済政策も混迷ばかりが目に付きます。

 そんなわけで、各金融機関は1980年代から1990年代の投資銀行業務に回帰しているものの、金融危機後の収益の回復は一時的な現象に留まる可能性があり、記事では2008年から3万2千人がレイオフされたのに加えて、2012年には1万人程度がレイオフされるというニューヨーク州の見通しを示しています。30年前の投資銀行業務では収益が伸びなくなったがゆえに、金融派生商品の取引が増えたので、30年前に回帰するというのは、とりもなおさず金融では食えないというほどではないのでしょうが、世界中から富が集まり、再投資するという金融の中心地としてのアメリカの地位が崩れる可能性が無視できないと思います。

 象徴的なのは、GSが中国工商銀行への戦略的投資(2006年)によって10億5000万ドルもの損失を出したという指摘です。中国工商銀行の株価は四半期で35%も下落し、これがGSの収益を直撃したとのことです。一時期は、経済における「米中融合」などという話がありましたが、事態は複雑で、GSでさえも、中国と互恵的な関係を築くのは容易ではないのかもしれません。もちろん、この損失の背景を私自身が理解していないので、長期的にはアメリカの金融機関や事業会社との協力関係が主になるのかもしれませんが、アメリカでもシビアに利益を追求する金融機関でさえ、中国での事業を成功させることは難しい可能性も考慮する必要があるでしょう。

 Michael Auslinのコラムについて書いたときに、触れて置けばよかったのですが、現在の日本社会では東北地方の復興に最も高いプライオリティが与えられることは当然だと思います。他方で、Auslinは、日米の絆を保つことにも注意をはらってほしいということを新政権に注文しています。それ自体には異論はないのですが、中東をはじめ紛争地域でのアメリカのプレゼンスの低下、防衛予算の削減などによるアメリカの相対的地位の低下、そして世界の富を集め再配分する頭脳集団の地位低下などを考えると、現状では非現実的な想定ですが、日米関係の懸案が解決し、日本側の種々のリソースの制約が仮に緩くなったとしても、アジアにおいても、もはや日米で現状維持勢力の要となることが難しい事態も想定する必要があるのでしょう。


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2011年09月22日

スマホとラーメン

 ネットで見ていたら、台風で愛知県が大変だなあと。帰宅してNHKの9時のニュースを見ていたら、なんとういう首都圏ローカルの情報しか流れないのかとびっくりしました。まあ、さすがに最初の20分ぐらいは大変だなあと思うのですが、延々とやられるとうんざりしますね。帰宅難民がどうたらこうたらとか、首都圏の交通情報とか、1時間を超えてやられると、もっとひどい被害のところは報道しないのかとなります。津波は別格ですが、堰止湖でもできないと、テレビとしてはおいしくないのかなと。9月11日前後の番組もおしつけがましいですし。東北地方太平洋沖地震を忘れることはないのですが、忘れるな、忘れるなとしつこく言われると、うんざりします。拉致問題のときに、1年たって母上が、毎日あの話ばかりされると、疲れるとこぼしておりましたが、週一でスイッチを入れるかどうかのテレビでも私には十分うんざりです。震災復興の財源がないから復興が進まないという流れをつくっているのには嫌味を込めて感心しましたが、世代を超える話となりますと、消費税率換算で2%(年間5兆円)もあれば十分で、最初の十年にお金がいるなら、なにも増税にこだわる必要はないでしょうね。通常の長期債で十分ではと思うのですが(世代間の公平なら、金額を考えても、年金の方がはるかに問題だとしか思えないのですが)、世の中的にはそうでもないみたいなので、この話題は避けているのですが、帰りの電車で信頼しているエコノミストに聞いたら、東京が変じゃないですかとのこと。地方都市に住んでいると、財務省の「魔の手」が伸びないので、とても気楽です。どうも東京の識者なりの話や報道を見ていると、下の画像のような目で見たくなりますね(職場からアクセスされている方はクリックしないことをお勧めします)。ちなみに、「復興目的」の増税が、それ以外の財源になるんじゃないのという疑念があるということです。関東地方のエコノミストとか経済学者というのはバカ正直にツイッターだと書いてますね。あれを読んだら、ああ、復興の負担を将来世代に回さないのが目的ではなくて、それ以外に、「専門家」(笑)の主観で必要だとみなした分野にお金を使いたくてしょうがないのがわかります。人から国家権力でむしとってきた金であるにもかかわらず、自分の主観でここに回そうなんて発想は私には『三國志』とか『信長の野望』とかでしかできないです。個人的には住民税の所得割を廃止して、均等割部分を月3万円で統一してくれたら、とても嬉しいのですが(本当はもっと多くても大丈夫ですが、自分の所得をネットにさらすほど、破廉恥ではないので)

http://imas.ath.cx/~imas/cgi-bin/src/imas9393.jpg

 まったく話は変わりますが、AT&TがTモバイルを買収する件を取り上げたら、あまり説明がよくなかったような。アメリカの合併・買収の実務に疎いので、この程度の合併で裁判になっては大変だなあと。司法省の言い分自体は理解できるのですが、いまだにHHIとかで買収をブロックするというのは古色蒼然としているような。かなり端折った「寝言」ですが、AT&T分割による通信の規制緩和というのは、分割のスキーム(主として長距離通信市場と市内通信市場を別の市場として分割する)や自然独占とされた市内通信でベル電話会社と持株会社に異常なほどの規制強化が行われたという点で問題が多かったというのが原点にあります。垂直分離というのは、規制緩和という「大義名分」の下に、行政府が仕事をつくる側面があって、需要側のニーズや供給側の技術進歩を行政府が把握して適切なスキームをつくることは原理的に無理な以上、新規参入を認めて、AT&Tに相互接続を義務付ければよく、そのルール作りは面倒かもしれませんが、FCCは1980年代に利用者アクセスチャージの引き上げで議会や州の公益事業委員会を説得できなかった時点でアウトでしょうね。私が見ていたのは主として、1995年ぐらいまでのアメリカの通信産業でしたが、その頃はまだ、電話料金も下がり、通話料は増え、分割されたAT&Tが1991年には史上最高利益を上げるなど、AT&T分割後の通信産業がバラ色にアメリカのウォッチャーには映っていたようです。いわゆる「ITバブル」を経て後、金融危機を経験する前には、かなり悲観的になっていて、1996年通信法は欠陥だらけだし、そもそもAT&T分割なんてやらなきゃよかったという見解をロバート・クランドールあたりが出していて、ずいぶんと変わったなあと。個人的には、遅きに失したとはいえ、加入者アクセスチャージ(SLC: Subscriber Line Charge)を引き上げたのは、通信自由化によって期待される、内部相互補助の抑制へと大きく進んだということでしょう。最も、ITバブル崩壊後には、足回りを十分にもたない事業者が競争の結果、内部補助の原資を出す体力を失ってたために、結果的に市内通信会社に料金の引き上げが可能になったことが大きいのでしょうが。分割直後から1980年代後半にはAT&TやMCIなどが負担した事業者アクセスチャージ(CCLC: Carrier Common Line Charge)は、15年以上前に作った資料によると、実に売上高の4割を占める状態でした。AT&T分割の意義は、独占の解体というよりも、規制の下で、市内電話料金を抑制したい連邦議会や州の公益事業委員会の政治的な圧力によって、いかに料金体系が需給を反映しないという意味でゆがんだものになるということをアクセスチャージ制度を導入することによって、白日の下にさらしたということでしょう。

 話を元に戻しますが、アメリカの移動体通信(向こうでは"wireless"という表現が多いので、無線通信とした方がよいのかもしれませんが)では、この10年ぐらい合併が多くて、AT&Tに待ったをかけるのは市場シェアやHHIだけの問題ではないだろうなと。Wall Street Journalが2011年9月18日に配信した L. Gordon Crovitzの"AT&T and the Economics of Monopoly"というコラムは、AT&Tがいまだに独占の象徴として扱われていることを示していて興味深いです。ただし、加入者もしくは有料記事でしょうから、あまり紹介できませんが。司法省がHHIとか市場シェアなど形式にこだわる限りは、市場支配力の強化につながると懸念するのは、当局としては当然でしょうと言わなかったので、些末なツッコミを入れられたのは鬱陶しかったですが。個人的には、米紙の報道で興味深かったのは、New York Timesが2011年9月1日付で配信したJenna Worthamの"T-Mobile May Suffer if AT&T Deal Fails"という記事です。最近になって、TモバイルがiPhoneの発売を来月あたりから行うという報道もあるので、記事でTモバイルは買収が完了するまで端末の新規契約を凍結しているという叙述は、疑問が残るものの、もし、Tモバイルの買収が失敗すると、ウェブ上ではいろいろな投機目的の憶測が流れているが、CATV事業者以外には買い手がつかないというのは、それが正しいかは別として、推論のプロセスが興味深いです。

(1)スプリントは、異なる規格を採用している事業者を買収すれば、巨額の投資が必要になるため、買収が困難であろうという指摘は、この部分も技術的なことがわからないので留保月ではありますが、それが真であれば、AT&Tの側には投資のインセンティブが存在するとともに、投資の原資を確保する体力があるということなのでしょう。なお、Verizonの基地局数が4,300に対し、Tモバイルの基地局数は5,400だと指摘しており、周波数帯の確保とあいまって、AT&Tが投資するインセンティブがあるとも思えます。

(2)アップルやグーグルがTモバイルを買収した場合、(本業ではない)通信ネットワークの運用に労を割くことを避けたいだけではなく、他の通信事業者との関係を悪化させることを懸念しなければならないという指摘も興味深いです。iPhoneはアメリカではAT&Tが独占的に販売していましたが、とっくに崩れており、他の国でも複数のキャリアがアップルと取引を行う、あるいは取引を行う交渉をしていました。日本だけがソフトバンクだけでしたが、こちらもauが販売するようで、元々、スマホ自体、個人的には利用したいとも思わないのですが、通信では投資をケチって再生エネルギーがどうたらこうたらとか胡散臭い会社が武器を失うのは悪くないなと。

 話がそれましたが、AT&Tによる買収が失敗した場合、Tモバイル単体では落ち目の状態で、代わりの買収相手となるとCATV事業者だというのは、説得力があると思います。ちゃんと確かめていないのですが、CATV事業者がAT&Tに代わって買収する場合、州のPUCの規制下に入るので微妙な部分がありますが、AT&Tが買収する場合とCATV事業者が買収する場合を比較した場合、現段階で前者の方が消費者にとって不利益を与えるのかどうかは、私では判断がつきかねます。寡占化が進むことへの懸念を明確に反証するのは難しいのですが。スプリントが提供しているパケット制限なしの料金の維持可能性には疑問を呈する向きも多いので、iPhoneの発売とともに制限なしの新料金プランがあるから、これをもって市場支配力の形成に懸念をもつ必要はないという意見にその場で同意しましたが、説得力に欠けますね。AT&TやVeriozonは極端に通信料が多いユーザーに課金ではなく、通信量そのものに上限を設けているので、技術進歩とともにボトルネックが解消するかもしれませんが、過渡的には市場支配力が高まる可能性を否定するのは難しいでしょう。簡単に言えば、移動体のトラヒック増加を口実に、現状はトラヒックを制限しているものの、通信料金を値上げする素地があり、AT&Tのシェアが高まれば、寡占化によって競争が制限され、料金の値上げが生じるという問題を排除することはできないでしょう。

 ラーメンの話ができませんでした。まあ、よほどお暇な方は「続き」でもどうぞ。



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2011年07月07日

中国の地方政府の債務問題

 眠い日々が続くので、英字紙も大半はプリントアウトして後で読む状態ですが、中国はまずいなあと。Wall Street Journalが2011年6月28日付で配信したTom Orlikの"China Tallies Local Debt"という記事によると、中国の公的債務はGDPの82%に上り(ファニー名などの、そのうち27%は地方政府が発行したものとのことです。まあ、国と地方の長期債務残高が180%を超える国に住んでいる者としては、まだまだ「メタボ」には遠いわねという感想とともに、利上げしてもインフレを鎮めるのは大変なんだろうなと。

 まずは、地方債の大部分は不動産と関連しており、不動産価格の下落は地方政府の償還能力を損なうだろうと指摘しています。また、水関連(上水道でしょうか)の投資も資金繰りが苦しい事例が紹介されており、公的資本形成などというのは本質的に非効率だと思うのですが、なかなか大変なご様子です。商業銀行の不良債権問題にも多くを割いていますが、ハッと息を呑んだのは次のあたりでしょうか。

A report published early this month by China's central bank suggested that just the debt taken on by local government financing vehicles−entities created and backed by local governments to get around legal constraints on their borrowing−could equal 30% of loans in the banking system. That would be about $2.2 trillion.

 今月(6月:引用者)のはじめに中国の中央銀行によって公表された報告は次のことを示唆している。地方政府の金融機関(地方政府が借入れに関する法的制約を逃れるために創設し、支援している)が引き受けた債務は銀行システムの30%に上る。これは、約2.2兆ドルだろう。


 共産党中央が地方のグリップをどの程度まで握っているかどうかは、中国の国内情勢で最も不透明な問題の一つですが、これはさすがに。いわゆる「不動産バブル」が崩壊しなくても、地価の上昇が鈍り、成長率が低下すれば、高い成長率を前提とし、またそれに拍車をかける要因の一つであった地方政府の公的固定資本形成の原資が厳しくなり、金融システムにも負荷がかかるリスクがあることを示していると思います。私自身は、中国の経済成長に関して10年単位では楽観的に見ておりますが、中国共産党がマクロ経済政策の舵取りを間違えると、かなりきわどい状況なのかもしれません。この記事だけで論評するのはあまりに危険ではありますが、地方政府の公的債務の膨張を考慮すると、金融政策のみを用いたインフレーションの沈静化は容易ではないのでしょう。他方で、地方政府も含めた財政政策も本格的に引き締めると、それまで脱法的な手段によって調達されてきた地方の公的債務問題が表面化し、単に成長率の低下に留まらず、地方政府の共産党中央への向背や社会的不安にもつながるのかもしれません。財政状況はひどく、中央銀行もゆるゆるなのに物価が上がらない国にいると、感覚が麻痺してきますが、中国の方が、政治システムの透明さという点で分からないことが多いのにもかかわらず、起こっているであろう事態は、昔の教科書レベルなのかもしれないなと思いました。

 あとは南シナ海だけではなくインド洋まで人民解放軍のプレゼンスが高まっていますが、財政に負荷をかけられる余地が低下している可能性もあるのでしょう。あえて軍拡競争へと巻き込まなくても、既に中国の側に"overextend"を抑制するインセンティブがない状況では、下手を打たなければ、財政における脆弱性が顕在化するのかもしれません。


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2011年05月19日

ストロスカーンの収監によるIMFの権威失墜とギリシャ問題

 過去に電力関係の問題を書いた「寝言」でキロワットを「kw」と記していました。「やはり正しくは、「kW」ですので、気がついた範囲で訂正をしております。寝言」とはいえ、シフトキーを押しながらWの文字を打つのが面倒というのは、あまりよろしくないだろうと。また、自分でもどの「寝言」が該当するのかがわからないのですが、ECBがインフレ目標を採用していると記した記憶がありますが、誤りです。恐らく、BOEと勘違いをしていたのだと思います。こちらもあわせて訂正させて頂きます。

 羽生善治名人がパッとしない将棋ばかりと文句を言いながらも、第69期将棋名人戦のBS中継まで見てしまいました。やはり名人戦では相矢倉が見たいですし、挑戦者が森内俊之九段となればなおのこと。興味深いのは、68手目で自著では有力とした手を選ばなかったあたりでしょうか。実戦心理というのは興味深いのですが、棋譜解説では深くは立ち入っていないので、私の棋力では到底、読める範囲ではありません。結果的には、後手の成桂が働かず、羽生名人の巧みな差し回しで攻めが続いて、寄り切った形になりました。横歩どりのような一発を秘めた将棋も好きですが、相矢倉のように、じっくりと陣形を整えながら、位や一歩などで損得計算をシビアに行い、攻撃態勢を整えてから戦いが始まっても、すぐに有利不利がはっきりしない、お互いが四つに組む将棋はやはり楽しいです。とくに、羽生名人と森内九段のどちらをもっているわけでもないのですが、第23期竜王戦に続いて、勝負とは関係なく羽生名人らしい将棋が少ない印象がありましたので、番勝負の結果はともかく、直線的に進む将棋ではない局を見たいと思います。森内九段は自然体で、よいところが目立っていますし。

 それはともかく、ユーロ圏に関する「寝言」ですが、クルーグマン先生がストロスカーンIMF専務理事を擁護するコラムを書いていて、欧米では思った以上にストロスカーンへの擁護論があるのだなあと。ストロスカーンを擁護したり、貶めたりすることには興味がないのですが、このコラムで注目したのは、ストロスカーンが「ケイジアン」だということでした。アジア通貨危機の「IMFコンディショナリティ」には辟易したので、2010年2月25日の「ヨーロッパを変貌させた『ギリシアの悲劇』 "The Greek Tragedy That Changed Europe"
」という「寝言」ではIMFの関与に関して懐疑的でした。この間の英字紙の報道を読んでおりますと、ストロスカーンの収監によるIMFの権威の失墜は、ギリシャ問題への影響が大きいと思います。

 鄙びたところに昔からお越しいただいている方はご理解頂いているもの存じますが、私自身は、金融自体、無知ですし、国際金融となると、さっぱりです。なので、わからないなりにメモを残そうという感覚で「寝言」を書いております。なにかを主張したいというより、どうなるんだろうという感じでしょうか。

 まずは、New York Timesが2011年5月15日付で配信したLandon Thomas Jr.の"With Europe in Crisis, Fragile Time for I.M.F."という記事です。この記事は、ドミニク・ストロスカーンがギリシャで緊縮財政を続けることは事態を悪くするだけだということを理解していたと主張しています。この記事は、緊縮財政によってギリシャ経済は今年に入って4%もの「縮み」を経験したと指摘しています。データの扱いはWSJなどと比較すると、ずいぶん粗い印象もありますが。なお、理事の一人は匿名を条件にして、ストロスカーンの後任を決めるのは時期尚早だと述べたと指摘しています。

 私にはIMFの権威が失墜した後、ECB自体がユーロ圏の撹乱要因になりつつあるように映ります。Wall Street Journalが2011年5月18日付で配信したGeoffrey T. Smithの"ECB Stern With Greece"という記事は、ECBの幹部であるJurgen Starkが、債務の再構築や「ヘアカット」など債務のリスケや再編成はギリシャが直面している問題を解決する手段となると言うのは幻想だと述べたと指摘しています。さらに、記事は、ギリシャ国債の大部分は国内で保有されているため、アルゼンチンのように債務不履行の痛みを「輸出」することができないだろうと指摘しています。ECBの対応は、アジア通貨危機とも背景が異なるとはいえ、ギリシャ経済の構造改革を徹底的に行うという点で、当時のIMFの姿勢とも類似することに注意が必要なのでしょう。

 また、記事は、債務危機によるギリシャ国内の金融システムや年金、生命保険などへの"contagion"を招くリスクがあるという意見を紹介しています。また、ドイツ政府の高官は、ESM(European Stability Mechanism)は、最後の手段として民間の債権者に債務減免を強制できるが、ESMが機能するのは2013年中頃だと指摘したと述べています。IMFの権威が失墜した結果、ギリシャの債務を負担したくない、相対的に裕福な国が国内においてギリシャ救済のための基金を拡充するインセンティブを失い、ECBも「取立て屋」のごとく振舞うようになり、ギリシャ問題は解をえる可能性が著しく低下しているのが現状でしょう。また、インフレーションの沈静化を図るべく、ECBは利上げを行い、さらにインフレ警戒を強める傾向にありますが、その結果、圏内の金融引き締めの効果に加えて、ユーロ高を招いていることはユーロ圏全体を停滞させてしまうリスクを高めているように映ります。


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2011年05月16日

ドミニク・ストロスカーンIMF専務理事の醜聞の影響

 ふとしたきっかけでニコニコ動画で「信長の野望 天下創世PK 合戦トライアル 日本史編」を見つけました。戦術レベルではあるのですが、意外と難しかった記憶があります。6、7年前ですが、織田信長編、豊臣秀吉編、徳川家康編、武田信玄編はすべて金(攻略日数が短い順に金・銀・銅)の評価でしたが、日本史編では後三年の役が金だったものの、保元・平治の乱は銅、源平合戦が銀、南北朝の戦いが金で応仁の乱で金をとっても「群雄」の評価だった気がします。XPを起こすのが面倒になってきているので、あいまいな記憶が頼りですが。動画を見ていて、記憶が戻ってきて、これほど精緻に作戦を立てたわけではないのですが、後三年の役は、攻城戦の攻撃側で、守備部隊を囮で釣り出した後で、城を一気に落とすという感じだったなあと。保元・平治の乱も同じ手口で城を落とせばよいのですが、動画を見てなるほど。源義朝を囮に使うという発想は浮かばなかったです。所詮、と言ってはなんですが、ゲームですので、本陣、もしくは本丸を落とすか、敵総大将の部隊を壊滅させれば勝利という単純なルールです。源平合戦が一番、感心しまして、源義朝を囮部隊にするのもなかなかできない発想ですが、野戦で本陣を落とすために木曽義仲を囮にするとは。同じような作戦ですが、木曽義仲を本陣攻めに使いたいので、もっと小規模の部隊を囮にしていたと思うのですが、これですと、本陣攻めに取り掛かる前に囮の部隊が簡単に壊滅してしまって、乱戦模様になるので、何度やっても銀どまりだったと思います。最も戦闘力が高い部隊が壊滅しても、本陣を落とすという目的からすれば、非常に合理的な発想でひどく感心しました。動画は冒頭のキーワードで検索してください。リンクを貼るのが迷惑な場合もあり、判断が悩ましいところです(3分で終わる応仁の乱には噴きました)。

 国内のニュースを見ていると、今頃メルトダウンがどうたらこうたらとあくびが出るほど平和なので、適当にリーダーを見ていたら、ドミニク・ストロスカーン(Dominique Strauss-Kahn)IMF専務理事がお縄になったようでありゃまと。事件そのものは日本語でも報じられていましたが、あまり興味がありません。まあ、容疑が固まったわけでもないので、深入りは避けておきます(私自身が性がからむ事件に興味がないだけですが)。英語でも、日本語でもフランス大統領選がどうたらこうたらという記事が多くて、ユーロ圏の債務危機への影響はないのだろうかと。Wall Street Journalが2011年5月15日付で配信したSudeep Reddy and Ian Talleyの"IMF Leadership Thrown Into Disarray "という記事が事実関係を主として伝えていて、ストロスカーンIMF専務理事は、日曜日にメルケル独首相と、月曜日と木曜日にはユーロ圏の財務相と会談する予定だったとのことです。記事は、メルケル首相はギリシャやアイルランド、ポルトガルの現状に関してストロスカーンの意見を聞きたがっていたとのことで("want"というのは私の語学力ではかなり強い表現に映ります)、今回の事件はユーロ圏に微妙な影響を与えそうです。また、記事は、"Having Mr. Strauss-Kahn sidelined could give them more power to push back against deeper involvement in some European nations."と表現しており、ストロスカーンが、ヨーロッパ諸国の中でもギリシャ問題に深入りするのに反対する国々を抑えて、介入する政治力を持っていたという観測を伝えています。ユーロ圏に与える影響は、それほどでもないのかもしれませんが(どの道、地獄でしょう)、ユーロ圏の混乱を抑えるのは困難になったのかもしれません。

 当然とはいえ、ゲームでは合理的に割り切ることができますが、現実はロジックでは動いていないことを実感します。正直なところ、ECBの政策指向は理解不能ですし(日本語でも英語でも解説記事を読んでもさっぱり)。歴史というほど大げさではないのですが、20代までは論理ですべてが理解可能という若さがありましたが、徐々に「気分」や「たまたま」の要素が大きいのではと思うことが多く、それだけではニヒリズムになりますが、どうも理性的と考える範囲ではとらえることができないことが多いのだなあと実感する日々です。

 アニメ好きの人に陰陽座がいいよと勧められたので、聴いてみたらなかなかでした。聴いて心地よければよいというわれながらのちゃらんぽらんさで、クラシックとへヴィメタをちゃんぽんで聴くのも平気です。『バジリスク』というアニメの方は見ていないのですが、この曲が主題歌とは贅沢な時代だなと思いました。

陰陽座 / 甲賀忍法帳



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