2011年05月12日

拡大するアメリカの貿易赤字 相変わらずのユーロ圏

 東北地方太平洋沖地震、巨大津波、東京電力福島第一原子力発電所の事故で久しぶりにスポットライトを浴びたせいか、日本が国際経済の撹乱要因なのだという自意識が強すぎるような。Economist Viewの"The Stagnant Employment-Population Ratio"という記事にある労働力化率の低水準はアメリカ経済が回復にはほど遠いことを実感させてくれます。オバマ政権の、気でもふれたような財政支出の拡張によって国内総生産の金額こそ極端な落ち込みを緩和できているとはいえ、金融市場以外の市場が回復するのかどうかすら、目途が立たないのが現状だと思います。また、ドルがこれほど弱っているのにもかかわらず、2011年3月期のアメリカの貿易・サービス収支は、481億8000万ドルに拡大しました。対中貿易赤字が縮小する傾向にあるのにもかかわらず(為替レートの調整以上に中国のインフレ率の上昇が効いている)、このありさまです。金融危機の最大の要因は、グローバルインバランスの拡大だったそうですが、その解消は容易ではないようです。もっとも、前月比6%の貿易・サービス収支赤字の拡大の大半は原油価格の高騰で説明ができるという話もあって、一時的な現象でしかないのかもしれませんが。

 米中経済戦略対話で日本のマスメディアではガイトナーさんのお名前が出てきますが、米紙の見出しにはほとんど見当たらず、空気のような状態が続いておりますなあ。私が中国共産党の関係者だったら、一時的な輸出産業への打撃による国内の混乱を力づくで抑え込めるのなら、変動相場制への移行の準備を進めるでしょう。だいたい、ご本尊のアメリカは弱っていますし、ユーロ圏はぐだぐだ、日本はと言えば、震災がなくても、気でもふれたように年金と後期高齢者医療にカネを費やす勢いで、現状維持勢力がバターよりも大砲を選ぶ余地はほとんどありません。変動相場制へ移行してショックを乗り切れば、アメリカの指しすぎをとがめるながら、まずは経済面で現状を打破して中国中心の秩序をつくる可能性が上昇するでしょう。後は、中国脅威論を黙殺して、どの道、旧先進国は社会保障とともに没落する可能性が高いですから(たとえば、どこぞの島国は震災に電力不足で忘れていますが、社会保障費の増加を前提にすれば防衛費の拡大などまず無理)、軍拡を進めて戦わずして屈服させる道を邁進すればよい。中国サイドに立てば、国内の不安定要因が大きいのでしょうが、分かりやすい情勢だと思います。

 それにしても、ユーロ圏は相変わらずで、なんともいえない気分ですね。Wall Street Journalが2011年5月7日付で配信したMarcus Walker, Charles Forelle and David Crawfordの"Euro-Zone Meeting Exposes Anxieties"という記事では、ドイツのシュピーゲル誌がオンラインでギリシャがユーロ圏から脱退するとの観測を配信してユーロが売られたと指摘しています。後で、簡単に見ますが、これ自体は無理筋のようです。この記事で目を引くのは、ギリシャは既にユーロ圏の各政府から1100億ユーロの貸付支援を受けているものの、2012年にはさらに300億ユーロを調達しなければならないという点です。金融市場にはギリシャ国債の買い手がなく、ユーロ圏の各政府は支援せざるをえないことを認識しているものの、具体的な決定はなにもなかったと指摘しています。

 さらに、Wall Street Journalが2011年5月9日付で配信したMarcus Walker, Costas Paris, Charles Forelleの"Euro Nations Divided Over Greek Debt"という記事では、ドイツはギリシャ国債の償還の延期に関して民間の債権者と対話を続けるべきだと主張したのに対し、他の国々は反対したと報じています。ヨーロッパの政府の間ではギリシャはユーロ圏の対等な一員であることを受け入れる方向です。しかし、そのことは、議会や有権者の反対が強いドイツなどにとっては政治的苦痛だろうと指摘しています。他方、ギリシャが債務不履行に陥れば、2008年のリーマン・ブラザーズの破綻にも匹敵する国際的な銀行危機を招くと政策当局者は述べたとしています。2011年5月6日に行われた非公式会議では、ギリシャがユーロ圏を脱退することは、ギリシャ国内の金融システムと国家そのものが破綻し、ヨーロッパに金融危機を招くという意見が大勢を占めました。そこで問題になるのが、ギリシャの財政再建ですが、ギリシャのGeorge Papaconstantinou財務相は、ドイツやフランス、イタリア、スペインなどに対し、2014年までに財政赤字をGDP比で3%以内に削減するのではなく2016年にまで引き伸ばす必要があるだろうと述べました。これにドイツは懐疑的であり、ギリシャ政府は経済と財政の再建の意思を失いつつあり、経済と公的部門の改革を強化するよう求めました。ドイツは、とくに、ギリシャが国有資産を売却し、徴税を強化する努力のペースに感心していないと記事は指摘しています。

 来年、ギリシャが債券市場で資金を調達できなければ、欧州金融安定化基金による300億ドルの貸付支援が必要になります。ドイツは、ギリシャやアイルランドに対してより厳格な改革を行えば、支援を行うというシグナルを送ってきました。また、ギリシャの国債償還の延長を行っても、ギリシャ自体の負担は減らないものの、ドイツの納税者にとってギリシャの債務のエクスポージャーの上昇を鈍らせ、来年、ギリシャが再調達しなければならない金額を減らすだろうと指摘しました。これによって、ギリシャ支援に関するドイツ国内の政治的反対は和らぐだろうと記事は指摘しています。しかし、ドイツ以外の国々は、アイルランドやポルトガルへの悪影響を懸念しているため、ギリシャの債務調整には難色を示しています。ギリシャの財務相は債券市場で調達できなければ欧州金融安定化基金に債券を売らざるをえなくなると述べました。

 昨年、ユーロ圏は問題の先送りを図りましたが、問題は再燃しています。ドイツがユーロ圏を支える余力がどれだけ残っているのかが問題なのでしょう。


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2011年03月25日

リビア戦争 エスカレートする空爆と混迷の兆候

 日本のマスメディアは驚くほど内向きのようで。アメリカのメディアも日本に関する報道が相変わらず多いのですが、見出しと記者名を見た瞬間に読む気が失せます。社内の喫煙所(わが社もほとんど隔離されました)で一服していると、福島第1の話も出ますが、60kHz地域に住んでいるおかげで、放射性物質の心配をするよりも、副流煙の方が害が大きいでしょうな、などと自虐的な話をすると、東電よりも有害な人物扱いされるぐらいなら、やっぱり禁煙しましょうかというオチになりまして、まことに平和な光景です。ちなみに、自己弁護ではないのですが、喫煙所での立ち話はバカにできなくて、○○電力の○○さんが東電は救いようがないと言っていましたわという話がでてきて、いやあ実は企画の○○さんも同じようなことを言っていましたよと。東電が計画停電を避けるべく火力発電を増やすのはやむをえないのでしょうが、60kHz地域の電力会社は原子力発電所を増設するのを断念せざるをえないという見込みの下、既に長期計画の練り直しを始めているようです(C電力さんとかK電力さんとか)。おまけに、東電にガスを融通しろとか、こちらも余って余ってしょうがないという状態じゃないんだけどね、だそうで。露骨に言えば、首都圏ほど優遇されている地域はないわけでして、東電の本社所在地は知っているよね。あそこは、万が一、他の電力会社が潰れる事態になっても、霞が関が死守するからと親戚に言われて、まあ、内幸町ですから歩ける距離だし、首都圏は保護されてどうせ地方は切り捨てられるんだろうなと。

 ちなみに、某電力会社の企画部の方が、4年前ぐらいでしょうか、電力自由化後、競争はやはり必要だとおっしゃっていたのを思い出します。あまりにも優等生的な発言だったので、無神経に電力自由化反対の某中央研究所の言い分をあえて反論としてもち出しましたが、自由化以前はコスト意識が甘く、顧客へのサービスという感覚も失いつつあったのが、自由化してから社内に緊張感が高まり、経営の意識がでてきたのですよと真面目に答えられてしまい、下心でいっぱいだったので、恥じ入りました。同じ話を東電の人にしたら、そんなバカなことをしているのは、そこの管区ぐらいですよ。競争なんてしたって、電力では無意味ですと全否定されました。そのバカにしていた会社がオール電化とかでガス会社を実質締め出すなど、本当にふざけた会社だなというのが率直な実感です。松江までも微量とはいえ、ヨウ素を撒き散らすなど、言語道断ですなあ。津波が天変地異の類に近かったことばかりが公共放送に登場する「専門家」のご意見のようですが、その辺も、地方在住者の耳に入ってくるのは、原子力がらみではどこも叩かれているのですが、東電は柏崎からひどくて、人災だそうで。書けないことが多いのですが、C電力さんとかK電力さんによると、要するに東電というのは「顧客最良 経営最悪」だそうで、かなわないのは政治力とマスコミ対策とのことでした。僻みも多いのでしょうけれどね。

 それはさておき、最近はリビアばかりだと嘆く方もいますが、開戦直後に報道があっただけで、国内メディアは完全に超ドメモードですね。自国が弱っているときには、用心深く海外情勢を見ておいた方がよいと思うのですが、なにせ首都が「脳死」状態だけにやむなしかと。『世界の論調批評』なるサイトが、1週間ぐらい前でしょうか、オワコンじゃなかった「ネオコン」としてならしたウォルフォヴィッツ(世銀総裁としてはゼーリックよりもひどく、イラクの民主化ではなく、ご本人の「民主化」が必要なのではと思うのですが)の作文に深い賛意を示し、「それにしても、今回の中東の激動には経済的不満も含めて様々な要素があり、簡単な説明を拒否するところがありますが、人間はやはりパンのみならず、正義と尊厳を求めるものだ、という感慨を持ちます」(参考)とのことで噴きだしました。およそ、人道といい、人権といい、「善意」というものの危険さに鈍感なんだなあと。

 2011年3月11日の「アメリカはリビアに深入り無用?」という「寝言」では、ハースCFR議長のコラムのメモをしておきました。私自身が、ハースのコラムを読んでいた時点では、安全保障理事会が飛行禁止区域まで深入りすることはなかろうと考えていたので、想像力の欠如という点では救いがたいなあと自分自身に失望する日々が続いておりました。

 ざっくり見ていると、国内の報道では空爆には限界があるという程度の認識ですなあ。この3日間ぐらいは仕事以外はリビア情勢をめぐるアメリカのメディアの報道ばかりを追っていたので、コメントへのリプライをする余裕がなく、ご容赦のほどを。Twitterで、デマを批判している軍事村の一人が国連安保理決議1973(参考)は陸上部隊の派遣をも容認していると主張していて、それはどうかなと。議論をしていた方があっさり同意をしてしまったので、安保理決議1973を読み返したのですが、ちょっと無理があるのではと思います。リビア戦争の現状に入る前に迂遠なようですが、この決議がどこまでの手段を容認しているのかが悩ましいところです。

“Reiterating the responsibility of the Libyan authorities to protect the Libyan population and reaffirming that parties to armed conflicts bear the primary responsibility to take all feasible steps to ensure the protection of civilians,


 ここでは"all feasible steps to ensure the protection of civilians"とあるので、海上封鎖や空爆だけではなく、陸上部隊の派遣を含めたあらゆる手段を含むとも読めます。次の引用部分もそれを補強しそうです。

“Recalling its decision to refer the situation in the Libyan Arab Jamahiriya since 15 February 2011 to the Prosecutor of the International Criminal Court, and stressing that those responsible for or complicit in attacks targeting the civilian population, including aerial and naval attacks, must be held to account,


 ただし、湾岸戦争のようにヘッジクローズを入れないほどの事態とも思えず、私の能力を超えますが、地上部隊の派遣はかなり難しいのではと思います。素人の読解力では怪しいのですが、飛行禁止区域の設定や武器禁輸措置にともなう実質的な海上封鎖でもリビアの主権を、「人道の名において」、カダフィを追い詰めるためとはいえ、制限することになるのですが、地上部隊の派遣となりますと、明確に領土を抑えることになるので、次の部分は抽象的ですが、ヘッジクローズのように、素人目には映ります。

“Reaffirming its strong commitment to the sovereignty, independence, territorial integrity and national unity of the Libyan Arab Jamahiriya,


 ぐだぐだと素人談義が続きましたが、既に飛行禁止区域の設定という目的を超えて、多国籍軍は空爆によって、カダフィの地上部隊を攻撃しています。リビア戦争で、アメリカのメディアの中でも、最も好戦的といってよい記事を書いているNew York TimesのDavid Kirkpatrickは、2011年3月20日に、Elisabeth Bumillerとの連名で"Allies Target Qaddafi’s Ground Forces as Libyan Rebels Regroup"という記事で、次のように連合軍の狙いを説明しています。

The chairman of the Joint Chiefs of Staff, Adm. Mike Mullen, also focused on those goals, talking about how allied forces had grounded Colonel Qaddafi’s aircraft and worked to protect civilians − both objectives stated by the United Nations Security Council in approving the military mission. “We hit a lot of targets, focused on his command and control, focused on his air defense, and actually attacked some of his forces on the ground in the vicinity of Benghazi,” Admiral Mullen told Fox News.

But the campaign may be balancing multiple goals. President Obama, Secretary of State Hillary Rodham Clinton and British and French leaders have also talked of a broader policy objective − that Colonel Qaddafi must leave power. In his comments on Sunday, Admiral Mullen suggested that objective lay outside the bounds of the military campaign, saying on NBC that Colonel Qaddafi’s remaining in power after the United States military accomplished its mission was “potentially one outcome.”


 マレン統合参謀長は、防空網の破壊やベンガジ陥落の防止などの軍事的目標を掲げ提案しました。また、政治レベルではカダフィが権力の座から追い落とすことが戦略的目標だったことがうかがえます。カダフィを物理的に葬るのか、政治的生命を奪うのかは別として、オバマ米大統領がカダフィ後のリビアをどのように考えていたのかはわかりませんが、ハースが警告したように、飛行禁止区域の設定は、結局、全面的な戦争への突入を遮る障壁をなくすものでした。マレンはカダフィが生き残ることも想定していますが、人道という「大義」の下、ひとたび軍事介入を認めてしまうと、エスカレーションを招くのは必定といってよいのでしょう。

 2011年3月19日の「リビアに関するオバマ大統領の演説 『思い上がり』の克服への第一歩」の「寝言」では、オバマの演説をとりあげて評価しましたが、様々なヘッジクローズにもかかわらず、戦争へと突入していくプロセスでは、結果論になりますが、あまり意味をもちませんでした。この演説を読めば、アメリカが軍事介入の中心的な主体となる可能性はほとんどなく、米軍が攻撃を抑制しているのを見て軍事村が大騒ぎをしているのを見て、ドン引きしました。もっとドン引きしたのは、安保理決議に留保するらなく賛成した著名な国際政治学者が軍事介入を擁護しながら、いまさら迷っているツイートでしたけれども。

 リビア戦争で最も弱気といって記事を配信していたのはWaPoで、2011年3月22日にLiz SlyとGreg Jaffeの"Allied strikes pummel Libya's air force but do little to stop attacks on civilians"という記事を配信しました(2011年3月25日現在ではWaPoのHPには掲載されていないようです)。比較的、強気の記事を配信していたWSJやAPも取り上げたMisurataにおけるカダフィの攻撃を取り上げて、Misurata('Misrata'と表記されていることもある)の周辺では80人が殺害されたと報じています。また、医師は、カダフィの航空戦力はもともと貧弱であり、必要なのは飛行禁止区域ではなく、陸上の移動禁止区域だと主張していると報じています。ベンガジについても、この時点ではカダフィの攻勢が強まり、犠牲者が増えていると報じています。まあ、言いにくいのですが、当然でしょう。「窮鼠猫を噛む」というところで、戦争をしかけられた以上、カダフィからすれば反カダフィ勢力をありとあらゆる手段で潰してしまい、安保理決議で定められているレビューで、停戦やむなしの雰囲気をつくりたいのというのは、感情を抜きにすれば当然であろうと。人道の名における戦争が、非人道的な結果をもたらすという当たり前の洞察を欠いた現代人にはバカバカしささえ、覚えます。

 ベンガジをめぐる情勢では、Wall Street Journalが2011年3月24日付で配信したSam Dagher , Stephen Fidler and Nathan Hodgeの"Allies Target Gadhafi's Ground Forces"という記事が興味深いです。空爆は一定の「成果」を挙げて、カダフィを押し戻すだけではなく、反カダフィ勢力の戦闘機が食糧や医薬品をMisurataに空輸できるようになったとのことです(私の勘違いなのでしょうが、「飛行禁止区域」というのはカダフィ側であって、反カダフィは往来自由なんですかね)。しかし、カダフィ側は空爆を避けるべく、戦闘員を陸上から都市内部に浸透させ、大虐殺の危険が高まっていると指摘しています。

 なお、WaPoも木曜日あたりからSlyなどの連名の記事が、空爆と飛行禁止区域の設定に関してマレンが順調に進んでいるという発言を紹介するなど、当初の悲観的な報道から姿勢が変わってきていますが、依然として、カダフィ側の抵抗が根強いことも指摘しています。また、飛行禁止区域は湾岸戦争でもありましたが、実質的な内乱状態では、反カダフィを援助する効果をもちます。現状は、カダフィが倒れるのか生き残るのかさえ不明な状態がしばらくは続くのでしょう。


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2011年03月22日

3月19日と3月21日の「寝言」に関する訂正

 2011年3月19日の「福島第一原子力発電所をめぐる日米の微妙なズレ」という「寝言」と3月21日の「リビア戦争とエネルギー資源(原油・天然ガス)」という「寝言」に痛いミスがありましたので、訂正いたします。

 まず、3月19日の「寝言」です。こちらの「寝言を書いたときに、3月12日に出された福島第一原子力発電所から半径20km圏内の住民に対する避難指示と3月15日に出されたら半径20km圏から30km圏内の住民に対する屋内待避指示が混同していました。出所は、原子力安全・保安院の「地震被害情報(第40報)(3月21日21時00分現在)及び現地モニタリング情報」(参考)で、基本情報をもう一度、確認するべきでした。避難指示と屋内退避支持の区別は知ってはいたものの、基本的なミスで、恥じ入ります。

現時点では半径20kmではなく、30kmですので、どの程度、日本の現状を理解しているのかは疑問がありますが。


 次に、リビアからヨーロッパへのパイプラインですが、地中海の地形を理解していなかったのが丸わかりです。3月21日の「寝言」では、基礎的な事実も調べていなかったことが明白です。ちなみに、天然ガスの確認埋蔵量と生産量は問題がなく、論旨等はとくに変更いたしません。

 こちらもBPのデータを見ますと、世界全体で天然ガスの埋蔵量は 187兆4,900億立方メートルです。リビアの確認埋蔵量は1兆5,400億立方メートルと世界全体の0.8%にすぎません。天然ガスについても、中東全体で 76兆1,800億立方メートルの確認埋蔵量があり、世界全体の40.6%を占めます。また、ヨーロッパ・ユーラシアも確認埋蔵量が63兆900億立方メートルで世界全体の33.7%を占めます。ロシアやトルクメニスタンなどが大半を占めますが、ノルウェーが2兆500億立方メートル(1.1%)、イギリスが1兆6,800億ドルの確認埋蔵量を有しており、ロシアを経由しない天然ガスというのは主としてパイプラインでしょうが、日本のように船で液化天然ガスを輸入すれば、リビアの魅力がどれほどあるのかは、ごく表面的な数字の上での話でしかありませんが、極めて疑問です。

 2009年の生産量で見ても、ノルウェーが1,035億立方メートル、イギリスが596億立方メートルであるのに対し、リビアは153億立方メートルにすぎず、リビアからヨーロッパに天然ガスを輸送する際に液化しないというのは考えにくいので、ノルウェーやイギリスから供給を受ける方が経済的には合理的ではないかと思います。アフリカ内部でさえ、確認埋蔵量の点でも、生産量の点でも、アルジェリアやエジプト、ナイジェリアと比較してさえ、矮小な存在です。リビアの天然ガスは石油と比較すれば(石油でさえも疑問ですが)、カダフィの恭順を受け入れた理由としても、ドイツが棄権した理由としても、ドイツ政府が細かいことに目をとられすぎているのなら別ですが、根拠としては極めて薄弱な印象です。カダフィが大風呂敷を広げて、ドイツをはじめ、欧米諸国が基礎データも確認せずに、それを受けれいたというのなら理解できなくはないのですが。



 下記のページの下部にある地図を見ますと、リビアからシチリア島を経由してイタリア半島に至るパイプラインが存在します。

http://www.theodora.com/pipelines/north_africa_oil_gas_products_pipelines_map.html

 また、ヨーロッパ・ユーラシアに関しても誤解しておりました。ノルウェーやイギリスのガスはパイプラインで輸送されています。

http://www.theodora.com/pipelines/europe_oil_gas_and_products_pipelines.html

Googleを使って"gas pipeline"というキーワードで検索すればすぐにわかる程度のことを確認してせずに、国内のLNGを前提に論じたのは不注意を通り越して無知です。恥じ入ります。とくに、ご指摘を頂いてはおりませんのですが、わたくしの方で気が付きましたので、訂正いたしました。他にも事実誤認があるかもしれません。ご指摘を頂ければ、幸いです。

2011年03月21日

リビア戦争とエネルギー資源(原油・天然ガス)

 東北地方太平洋沖地震があってからもう10日がすぎたのですね。被災された方々が平常に戻るのには、まだ多くの月日がたつのでしょう。ご健勝をお祈りします。首都圏では連休で「計画停電」も一息といったところでしょうか。私事で恐縮ですが、日曜日に停電があって、東北電力や東京電力のエリア以外でも停電が始まったのだろうかとびっくりしましたが、20分ほど復旧しました。雷が鳴っていた形跡もないので原因がわからないのですが、ごくローカルな現象だったのでしょう。PCの電源が突然落ちたので作業中のデータが飛んでしまい、困りましたが、復旧してから作業を終えてホッとしました。

 国連安全保障理事会決議1973(参考)にもとづていて、英仏米を中心に武力行使が始まりました。主としてリビア市民や外国人労働者・ジャーナリストの保護など人道的な目的から、飛行禁止区域の設定や武器禁輸の実施、資産凍結などが行われるそうです。既に、日本語でも報じられているように、フランス軍の航空機がカダフィ政権の戦車を破壊し、トマホークによる攻撃も実施されています。マレン統合参謀本部議長によると、カダフィ側の兵站を断つ作戦が順調に進んでいるそうです。普通に見ればリビア戦争ですが、国内外では武力行使とかぼかした表現ばかりのようです。まあ、きれいな表現を用いれば、行為も美しくなるという言霊信仰が全世界に広がっているのでしょうか。

 クリントン米国務長官が今回の戦争をサポートはしますが、主導はしませんよと発言したとのことで(Mary Beth Sheridan, "Clinton says U.S. supports, but will not lead, military operation against Libya", Washington Post, March, 19, 2011(参考))、微妙な感じもしますが、戦列からアメリカが離れることはないのでしょう。要は、湾岸戦争時の多国籍軍のように、米軍が扇の要になる準備と意思はなく、サポートはするからフランスさんとイギリスさん、その他の国々さんも頑張ってねというところでしょうか。オバマ米大統領は2011年3月18日の演説で次のように述べています。

In this effort, the United States is prepared to act as part of an international coalition. American leadership is essential, but that does not mean acting alone -– it means shaping the conditions for the international community to act together.

 この取り組みでは、合衆国は国際的な連合の一部として行動することになっている。アメリカのリーダーシップは不可欠だが、単独で行動することを意味しない。それは、国際社会がともに行動するための条件をつくることを意味する。


 クリントン国務長官ほど露骨ではなく、上手な表現だなと思います。クリントン元大統領のように"reluctant"でもなければ、ブッシュ前大統領のように"unilateral"でもありませんよと。作戦が失敗しそうだから控えめというよりは、間違っても口には出せないでしょうが、アフガニスタンとイラクで手いっぱいの状況で、後のパラグラフでも出てくるように、カダフィの蛮行を抑えるための飛行禁止区域の設定には、アメリカならではの方法で手を貸しますよというところでしょうか。「参加することに意義がある」よりは意欲的なのでしょう。

 適当に某巨大掲示板を見ておりますと、英仏のねらいは「石油だろ、言わせるな恥ずかしい」みたいな雰囲気です。もう少し知的な方ですと、カダフィがイラク戦争後にアメリカに対し恭順の意を示し、これを許した背景としてリビア国内の原油と天然ガスの存在を上げる方もいらっしゃいます。石油、天然ガスというと、ガス欠気味の日本では目の色が変わるようでして、戦前も戦後も変わらぬ麗しい光景に感動いたします。ざっくりと、BPのHPにある"BP Statistical Review of World EnergyJune 2010"(こちらのページの右側にPDFファイルへのリンクがございます)で確認をしてみましょう。

 まずは、原油です。2009年の原油の確認埋蔵量は世界全体で1兆3,331億バレルです。中東全体で7,532億バレルと実に世界全体の56.6%を占めます。リビアの確認埋蔵量は443億バレルで全体の3.3%ほどです。「世界で第8位の産油国」という表現を国内で見かけることが多いのですが、確認埋蔵量ですね。他方、原油生産の方を見ますと、世界全体で日量7,994万8,000バレルです。中東全体で2,435万7,000バレルで、これは世界全体の生産量の30.3%にすぎません。チュニジアに端を発した中東・北アフリカ危機以前の数字ですので、供給量を抑制している可能性もありますが、投資不足なのでしょう。リビアは 165万2,000バレルと世界全体の約2%にすぎません。アフリカの中でも、ナイジェリア、アルジェリア、アンゴラに続いて4番目の生産量です。2003年以降リビアの生産量は伸び始め、2008年には頭打ちになり、2009年には減少に転じています。現状では、リビアの原油供給が止まっても、現物の取引に与える影響は微弱でしょう。目先の原油高は、リビアの内戦からリビア戦争への発展というよりは、バーレーンとその背後にあるサウジアラビア、イランなどの政情不安がはるかに投機筋に影響を与えているのでしょう。石油利権というのはおいしいように見えるようですが、油井の開発には最低でも1,000億円単位の投資が必要であり、リビアの確認埋蔵量を考えると、投資に見合うリターンがえられるかどうかは微妙な感じがします。もっとも、サウジアラビアをはじめとする中東諸国と比較すると、リビアの確認埋蔵量は1989年から2009年の20年間で倍近くになっており、資源へのアクセス確保を無視はできないのでしょう。他方、採算を考えれば、カダフィ政権をつぶすためにリビア戦争を行うのは、かえって投資環境を整えるまでに多くの犠牲を払う可能性もあります。英仏米が戦争を行う動機としては、ほとんど無視してよいのでしょう。他方、原油開発のためにカダフィの恭順を許したというのも、結果論であって、ナイジェリアでも確認埋蔵量が1989年から2009年でやはり2倍程度になっていることや1989年から1999年の期間に確認埋蔵量の増加がリビアを大幅に上回っていることを考慮しますと、1990年代から北アフリカの油田開発が進み始めており、カダフィが2003年のイラク戦争で恭順した結果、それがリビアにも及んだということなのでしょう。

 藤原帰一先生のツイートでは、国連安保理決議1973の採決でドイツが棄権したのは、リビアのエネルギー資源をめぐる思惑が大きいそうです。

軍事介入に消極的な理由は複数だと思いますが、ロシアを経由しない天然ガスを手にするために、ドイツにとってリビアが不可欠の存在だったことは見逃せません。ドイツばかりでなく、欧米諸国が西側との対決姿勢を改めたカダフィ政権を受け入れた理由も、石油に加え、天然ガスの開発でした。less than a minute ago via web



 こちらもBPのデータを見ますと、世界全体で天然ガスの埋蔵量は 187兆4,900億立方メートルです。リビアの確認埋蔵量は1兆5,400億立方メートルと世界全体の0.8%にすぎません。天然ガスについても、中東全体で 76兆1,800億立方メートルの確認埋蔵量があり、世界全体の40.6%を占めます。また、ヨーロッパ・ユーラシアも確認埋蔵量が63兆900億立方メートルで世界全体の33.7%を占めます。ロシアやトルクメニスタンなどが大半を占めますが、ノルウェーが2兆500億立方メートル(1.1%)、イギリスが1兆6,800億立方メートルの確認埋蔵量を有しており、ロシアを経由しない天然ガスというのは主としてパイプラインでしょうが、日本のように船で液化天然ガスを輸入すれば、リビアの魅力がどれほどあるのかは、ごく表面的な数字の上での話でしかありませんが、極めて疑問です。

 2009年の生産量で見ても、ノルウェーが1,035億立方メートル、イギリスが596億立方メートルであるのに対し、リビアは153億立方メートルにすぎず、リビアからヨーロッパに天然ガスを輸送する際に液化しないというのは考えにくいので、ノルウェーやイギリスから供給を受ける方が経済的には合理的ではないかと思います。アフリカ内部でさえ、確認埋蔵量の点でも、生産量の点でも、アルジェリアやエジプト、ナイジェリアと比較してさえ、矮小な存在です。リビアの天然ガスは石油と比較すれば(石油でさえも疑問ですが)、カダフィの恭順を受け入れた理由としても、ドイツが棄権した理由としても、ドイツ政府が細かいことに目をとられすぎているのなら別ですが、根拠としては極めて薄弱な印象です。カダフィが大風呂敷を広げて、ドイツをはじめ、欧米諸国が基礎データも確認せずに、それを受けれいたというのなら理解できなくはないのですが。

 リビアのエネルギー資源が、欧米諸国の対リビア政策を左右する主要な要因どころか、補助的な要因としてもデータ上は極めて弱いと思います。某巨大掲示板で、戦前の軍部程度の認識で石油だろというのはいつもの光景ですが、識者と思しき方からこのような認識が出るのはやや意外です。人道を守るための戦争というアクロバティックで、世論の理解をえることが難しい問題に苦し紛れにもちだしたのではないことを願います。


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2011年03月19日

リビアに関するオバマ大統領の演説 「思い上がり」の克服への第一歩

 下記は、前の「寝言」の「続き」として書きました。さすがに、いくら「時の最果て」とはいえ、内容に連続性がないので、別途、新しい「寝言」として呟きます。

 リビアに関する「寝言」を用意しようとしていましたが、日米間の微妙なズレが気になっていたので、こちらを優先しました。ホワイトハウスのサイトにオバマの演説がアップされました。19日の未明にはCNBCがツイッターで部分的に流れていましたが、全文を見たのは、午後でした。リビアに関する演説で最も重要なポイントは下記の部分だと思います。

This is just one more chapter in the change that is unfolding across the Middle East and North Africa. From the beginning of these protests, we have made it clear that we are opposed to violence. We have made clear our support for a set of universal values, and our support for the political and economic change that the people of the region deserve. But I want to be clear: the change in the region will not and cannot be imposed by the United States or any foreign power; ultimately, it will be driven by the people of the Arab World. It is their right and their responsibility to determine their own destiny.


 これは中東と北アフリカにまたがって広がっている変化のもう一つの章にすぎない。抗議の始まりから、われわれは暴力に反対することを明確にしてきた。われわれは、普遍的価値や地域の人々が享受するに値する政治的経済的変化を支援することを明確にしてきた。だが、私は次のことを曇りなく示したい。地域における変化はアメリカや外国の力によって押し付けられるものではありえない。究極的には、アラブ世界の人々によって達成されることである。それは、自らの運命を決定する彼らの権利と責任である。



 冷戦後の思い上がりの産物であった、いわゆる「ネオコン」の思想の全否定といってよいのでしょう。彼らは、力の論理に鋭敏であり、勢力均衡も正確に理解する側面があったと思います。他方で、世界を民主的に変革するためには武力の行使をも正当化しました。過去ログをお読み頂ければ幸いですが、私自身はイラク戦争そのものには賛成でした。中東の心臓部を抑えて、イスラエルをも睨みつけながら中東和平を図るという点で犠牲は多いものの、武力を用いることに見合うだろうと。ただし、民主化については明確に反対でした。それぞれの政体には歴史や地理その他の背景があり、外部から押し付けることはできるものではないと考えるからです。「ネオコン」がイラク戦争を引き起こしたというのは誤りだと思いますが、政策の理念として影響力をもったことは否定できないでしょう。私には、この理念が冷戦に勝利した旧西側陣営の思い上がりとしか映りませんでした。

 「時の最果て」の「寝言」ですので、クソ真面目なことを書くのも憚られるのですが、一方でアメリカに武力行使を迫り、他方で財政再建を求めるというのは、頭の中がどうかしているのではと思います。「羹に懲りて膾を吹く」と小バカにされて上等。イラク戦争で懲りたのではなく、冷戦後の思い上がりに、いい加減、気が付いてほしいものだと思います。オバマの演説が理念として燃え上がるような情熱には欠けていることに、むしろ共感を覚えます。相手は狂信の徒であっても、自分はそうではあってはならない。突き放して言えば、アラブ世界の今後など、数年で定まるものではないでしょう。オバマの最初の任期1年はヒヤヒヤの連続でしたが、ここにきて謙抑であることを示したと思います。だからといって、世の中が安定するほど甘くはない。ただ、思い上がりで没落するぐらいなら、謙抑で世界が混乱する方がマシだとすら思います。見通しが立つ状態ではありませんが、少なくとも、現時点でアメリカの最高指導者が謙虚であり、冷徹でもあることは、歓迎です。

福島第一原子力発電所をめぐる日米の微妙なズレ

 テレビをつけると、憂鬱になるので、ついに現実逃避ですねえ。某外資系Pによると、『大魔法峠』なるアニメは、「いかれた漫画に、いかれた監督を用意したら、いかれたフィルムが出来上がった」そうで。次なるいかれた漫画を読み返していたら、読者サービスでパンチラがあるなあと見ていたら、なんとパンツに万字の刺繍とか、もうね、いかれた漫画家ってなんでもありかよという感じ。満貫確定とはいえ、たかが東の暗刻をムダヅモを繰り返しながらつくるだけなのに、「人はポンのみに生きるにあらず」(人はパンのみに生きるにあらずとおっしゃる方から年金の減額の話がでないのは不思議で不思議でしょうがないのですが)とかくだらない上にシュールすぎて笑えます。この漫画、やはりスーパーアーリア人やハイゼンベルクストライクあたりが受けるところなのでしょうが、単にべたおりするのに、「神を試みてはならない」あたりで噴いてしまうあたりは、いかれた漫画を読む読者の中でもいかれている方なのかも。嘘字幕シリーズで「あんなにすごかったら、ドイツだけで、戦争に勝利してるわ!」とあって、正論すぎて噴きました(自粛期間中につき動画は略させていただきます)。

 まあ、しかし、リアルはリアルでいっちゃっている感じもありますなあ。CH-47が海水を福島第1原子力発電所3号機に撒いたり、過激派対策の放水車が出るのかと思ったら引っ込んだり(シャレにならない状態に過激派が原発で粘る根性はないでしょと嫌みの一つも言いたくなります)と大和田先生も思いつかない展開ではないかと愚考します。あの映像を海外から見たら、日本もヤキが回ったねえという感じではないかと。いくら今の首相がアレだからとはいえ、さすがにそこまでひどい案を出すとも思えず、どこから出たのだろうかと。木曜日のNHKのニュースで阪大の先生(誠に非礼ながらお名前を忘れてしまいました)が鉛などで遮蔽を確保した上で常温の水を注入して熱した水を排出するサイクルを確立することが本筋ですとおっしゃっていて、素人にもそれが普通だと思うのですが。サイクルを確立するまでには時間がかかるので、放水はやむをえないにしても、日本人が見てもひきそうな方法を使うというのはいかがなものかと。あまりに不謹慎ですが、ああいう変態的な方法でも自衛隊は優秀なので、何回かやっていくうちに、熟練しそうなのがなんとも。さすがに温度測定に変更しましたか。しかし、無理難題でもなんとかしてしまう自衛隊というのはすごいなあと。

 大魔法峠もムダヅモも及ばないシュールさは民主党のコア支持層でありまして、どう見ても、今回の事故で私の住んでいるところは安全地域なのですが、政府は絶対、なにかを隠しているというので、あなたは支持者じゃないですかと尋ねるのですが、どうも信用していないみたい。理解不能なのですが、公権力への信頼感というのが民主党コア支持層と私みたいに麻生は嫌だけれども、民主党はもっと嫌という、まあ、われながら、なかなかに、いかれたスタンスですが、非民主層との差なんでしょうかね。東電さんは前科があるので、疑われてもしかたないのかなと思う部分もあるのですが。そうはいっても、ロシアや中国、そしてアメリカも監視している中で、データの隠蔽・改竄なんざ無理ざんしょと内心、思いましたが、面倒になって、この話題はボツ。なんで民主党なんぞ消えてなくなればいいと思っている側が弁護しなきゃならんのかという感じ。

 しかし、放射線量の増加は首都圏ではいくら数値で説明しても、現在の環境では不安に思う人がいるのはやむをないだろうなあと。このあたりを感情論として片付けるのは、個人的には微妙なところです。もっとも、福島第1原子力発電所の半径30km圏から退避した方と比べれば、杞憂に近いとは思いますがね。現段階で結果論は言いたくはないのですが、早期に大事をとって移動していれば、混乱も少なく、周辺住民の方々の不安も少なかったと思うのですが。

 この不安に拍車をかけた要因の一つが、アメリカ政府による半径50マイル(約80km)内からのアメリカ人への避難勧告であったと思います。他国の政府も類似の措置をとっているようですが、やはりアメリカ政府が日本政府よりもはるかに広い範囲で避難するように勧告すれば、日本政府はなにか隠しているのではと勘繰る人たちがある程度、出てくるのは、やむをえないかなあと。この報道を聞いたときに、ふと頭をよぎったのは、空母ロナルド・レーガンが2011年3月13日に、軽度とはいえ、乗員の被曝を確認したという報道でした。例えば、2011年3月13日付でNew York Timesが配信したWilliam Broadの"Military Crew Said to Be Exposed to Radiation, but Officials Call Risk in U.S. Slight"という記事は、USS Ronald Reaganがどのような航路をたどっていたのかは明示されておりませんが、福島第1原発から北に60マイル(約97km)を飛行したヘリコプターに洗浄が必要な程度に放射線を浴びたと指摘しています。私が勘違いしている可能性がありますが、陸上と比較して海上は障害物が少ないゆえに風が流れやすく、不幸にしてUSS Ronald Reaganに放射線が到達してしまったのではないかと思います。しかし、この出来事と避難勧告との関係は私の憶測に過ぎず、裏付けはありません。米紙各紙が報じているのは、この事件がアメリカ側の不審を招いたというあたりでしょうか。"Operation Tmodachi"に関する「寝言」を書いた段階では、この報道を知らなかったので、触れておりません。あとで、まずいなあと思いましたが、追記をしている暇もなく、むやみに情報ばかりが流れてくるので、更新も面倒になりました。

 他方、この問題とは別に、Wall Street Journalが2011年3月17日付で配信したTennille Tracy and Ryan Tracyの"U.S. Nuclear Industry Questions 50-Mile Radius"という記事では、原子力エネルギー協会(Nuclear Energy Institute)がオバマ政権の避難勧告に疑義を唱えたことを報じています。記事のタイトルにある通り、原子力関連産業の業界団体ではありますが、健康への影響を防ぐという点では日本の12マイル(約19km)で十分であり、アメリカ政府の半径50マイルの科学的根拠を疑問視しているとのことです。現時点では半径20kmではなく、30kmですので、どの程度、日本の現状を理解しているのかは疑問がありますが。反対に、Union of Concerned Scientistsという団体は、逆に、アメリカの緊急時には半径10マイル(約16km)と定められているが、なぜ50マイルにしないのかという疑問を呈しています。なお、この記事では、アメリカ政府が半径50マイル以内を避難対象とした理由を次のように示しています。USS Ronald Reaganとの関係ではないようです。

Nuclear Regulatory Commission Chair Gregory Jaczko said Wednesday that the U.S. decided to clear a wider evacuation radius than Japan had imposed in part because of concerns over spent fuel pools in a fourth reactor at Fukushima.

Gregory Jaczko原子力規制委員会議長は、福島の4号炉にある使用済み燃料に対する懸念から日本が部分的に実施していた範囲よりもより広い半径から避難することを明確にすることを決定したと述べた。


 地震に続く津波は事前の想定を超えるダメージを原発にも与えました。福島第1原子力発電所が早期に落ち着いていれば、不謹慎かもしれませんが、マグニチュード9.0の地震、陸地を飲み込む津波にも耐えられる日本の原子力技術を海外で活用するチャンスだったともいえます。現状では、アメリカの反応は冷静だと思いますが、内部でも使用済み核燃料への懸念から避難範囲に関してはコンセンサスが確立しているとはいえない状況のようです。書きづらいことではありますが、現状では住民の方々よりも、原発で活動している作業員や自衛隊員の方が被曝の危険が大きいのですが、地元住民の信頼が揺らいだことは大きいと思います。現実には、土壌汚染による二次被害が大きいと思いますが、このあたりは現政府でも理解しているでしょう(枝野官房長官の記者会見を見ていると、既に対応が始まっています)。妙な情報がネットで流れていますが、あまり深読みするのは意味がないと思います。それにしても、2009年の総選挙でも民主党だけはダメと入れなかった私が現政府の擁護をしなければならない状況というのはなんとも面映ゆく、なんだかバカバカしさとおかしみをこらえるのに苦労する日々が続きそうです。


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2011年03月11日

アメリカはリビアに深入り無用?

 さっすが島国といったところでしょうか。アメリカの役人が講義でもにょもにょと沖縄の悪口を言ったらしいという程度で猛反発して、あわててキャンベル米次官補がKevin K. Maherの首を飛ばしたと。後任はNHKによれば日本通の方だそうで、まあ、アメリカさんも大変ですなあ。New York Timesが2011年3月9日付で配信したMartin Facklerの"U.S. Apologizes for Japan Remark"という記事が次のように始まっていて、なんともいえないけだるさをを感じました。

A senior American official apologized on Wednesday for comments attributed to an American diplomat that stirred charges of racism.


 "racism"かあと。Maherの発言が日本語で報道されている通りならば、なんだかなあという感じはしますが、こんな国を相手にするのも疲れるだろうなあと。むしろ、この記事を見たときに、パッと感じたのは、Kurt Campbellも"A senior American official"というあたりで、当たり前ですが、Assistant Secretary of Stateの一人なんだなと。3月10日の夜には米国務省のトップページにキャンベル国務次官補と松本なんとかという外務大臣との声明が3番目ぐらいにアップされているので、米国務省も今回の事態を重視したのでしょうか。しかし、この問題をアメリカと沖縄の関係に転化させてしまう政権が続く限り、普天間基地の固定化が既成事実になるのではと思うのですが。中東でお忙しい時期に大変だなあと(参照)。

 それはさておき、リビア情勢ですが、なにしろ目まぐるしく変化しますので、疲労感もあります。Wall Street Journalが2011年3月9日付で配信した Charles Levinson, Margaret Coker and Adam Entousの"U.S. Sees Stalemate Emerging in Libya"という記事を読んでいたら、膠着状態(stalemate)というよりは、だいぶカダフィ側が盛り返した印象でした。2011年3月10日付のAP電は、Paul Schemmの"Gadhafi showers strategic oil port with rockets"という記事を配信しており、当初はフランスが反政府組織との「国交」を樹立した日に手痛い敗北を喫したという趣旨の描写がありましたが、NATOが飛行禁止区域の設定に前向きなせいなのか、大幅に書き換えられているようです。フランスが前のめり気味なのは、やはりアメリカを引っ張り込んだ上で、難民の問題を極力、抑えたいのでしょう。日本だと原油の話に目が行くようですが、難民の増加はイタリアをはじめ、ヨーロッパ諸国にとっては社会の安定にかかわるだけに、深刻な問題でしょう。

 アメリカもどこまで関与するのか、現段階ではわかりません。CFRのハース議長のオピニオンがウォール・ストリート・ジャーナルに掲載されていて、正直なところ、私の素朴な実感に近いのでホッとしました。そのうち、日本版に全訳されるのかもしれませんが、とりあえず、メモでも。


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2011年03月07日

騒乱後のアラブ諸国における新しいイスラム主義体制へのオバマ政権の準備

 日曜日の各紙朝刊の一面トップを見て、読む気が失せました。今週の日曜日も仕事以外には出かける予定はなく、夕方というよりは晩から床屋でのんびり。いつも髪を整えてくれている人が独立されるとのことで、新しいお店ができたら連絡しますとのこと。あまり髪にこだわりはないのですが、若い人では40過ぎの中年の心理というのはわからないでしょうから、お店ができたら変えなくては。20代後半から3か月に1回程度セットするようになったのですが、このお店の2代前の店長さんのおすすめでした。なにしろ、剛毛で髪の量がやはり多いようでして、寝起きに横の髪がボッと開いて、前髪に変な癖がつくのがたまらなく苦痛でしたが、軽くセットすれば楽ですよとのことでした(昔は2か月に1回ぐらいで我慢していたのですが、いい年なのに髪が伸びるのが速くて、1か月放置するとかなりまずいですね。20代のときには分け目すら見えないぐらいでしたから、30代後半から少しは減ったかなと思いますが)。最初はパーマに抵抗がありましたが、伸びてくると前髪が重たいので垂れてきて鬱陶しいですし、短くしたらしたで、やたらと立つので、試してみたら、実に快適になりました。もう7年近いお付き合いなので、とくに注文をする必要もなく、髪を切って顔の印象が変わらなければよい(仕事であった人に「あ、髪を切ったな」と思われても、髪型そのものが変わって妙な印象を与えないことがキモ)という散髪に関する私のニーズを理解してくれていたので、新しいお店の常連さんになる予定です。

 それにしても「復路」の作業は意外と厳しくて、日曜もあれこれいじりましたが、思ったほど捗りませんでした。床屋で読んだというすちゃらかぶりですが、オバマ政権ウォッチャーのScott Wilsonの記事はおもしろくもなんともないのですが、「時の最果て」では一度だけ取り上げたかもです。WaPoの中でも、オバマ政権に近く、社説ほど粗雑な部分が少ないので読むと安心はするのですが、フォーマルすぎてやや退屈な印象もあります。本題に入る前の寄り道ですが、バーレーン関連の記事が日本語ではあまりに少ないような。年がよってくたせいか、日本のマスメディアはうんぬんかんぬんという前に、自分でまとめようと思うのですが、こちらは「復路」の作業が完了してからでしょうか。今週中に終えないとさすがにまずいので、オバマ政権が中東のイスラムにどのように対応しようとしているのかを簡単にメモしておきます。


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2011年03月05日

中東・北アフリカ情勢の断片 海をめぐる不確実性

 遅れて筋肉痛がやってくるのを忘れておりました。というわけで金曜日は腕を中心に鈍い筋肉痛に悩まされて作業がはかどらないまま、そそくさと帰宅。最近では珍しいのですが、NHKの午後7時からのニュースを見ることができました。例のカンニング事件はあっさりとした報道で、こんな原始的な手口だったのかと。それ以上に驚いたのは、中国の軍拡について空母に偏っている印象はありますが、さらっと公表されている額の倍はあるでしょうというあたりで、この手の話にオブラートをかけなくなりつつあるのだなあと。ざっと見た範囲ではNew York Times("Beijing Resumes Rapid Increase in Military Spending" by Michael Wines, March 4, 2011(参考))とWall Street Journal("China Strengthens Military Budget", by Jason Dean and Jeremy Page, March 4, 2011 (参考))が記事を配信していましたが、公表されているだけでも915億ドル(WSJの記事で914億ドル)に上る金額とあわせて、装備の側面にもふれながら、尖閣諸島の問題を二紙とも報じているのが印象的でした。中国の軍拡に用心深く対応しなければならないのですが、日本の国内政治は訳がわからない状態の上に、アメリカも、ゲーツ米国防長官は国内外で叩かれているとはいえ、それ相応の資源を割こうとはしていますが、アフガニスタンにイラクを抱えている上、リビアにまで対応すべしとなると、尋常ではない負荷がかかるのでしょう。正直なところ、エジプトの騒乱が始まった1月末には、それがなくても年が変わったという実感がなく、なんともいえないピリピリした感覚がありましたが、重苦しい気分になりました。

 エジプトで騒乱が始まったときに、感覚的に"upheaval"の始まりなのだろうかと思いました。『世界の論調批評』の「ムバラク辞任」という記事を読んだときに、さらに重苦しい気分になりました。次の一文は、岡崎久彦さんが書いているのかはわからないのですが、非常に珍しい表現でしたので。

 また、情勢は流動的なので、将来の見通しを立てるのは極めて難しく、現時点では、成り行きを見極めなければならないとしか言えないのが実情です。


 他の方なら「成り行きを見極めなければならない」というのは珍しい表現ではなく、まあ、ぶっちゃけて言えば、よくわからないというだけの話ですが、こちらでこの見通しは非常に珍しいです。2007年の暮れに「グランドデザインのない国際経済」という「寝言」を書きましたが、不確実な事態なりにどのような自体が起きそうなのかということを考えても、確率の素朴な定義である起きうる事象が読み切れず、困り果てたとき以上の感覚でしょうか。分母がわからなければ、分子も意味がないので、確率の計算自体が無理という感じです。

 カダフィが暴れ回っているおかげで、震源地となったチュニジアやエジプトが後景に退いている感がありますが、とりわけエジプトはいまだに見通しが立たないと言ってよい状態だと思います。「寝言」すら書くのがつらい状態ですが、やはり書かない方が不安になりますのと、私にはツイッターは無理と実感するので、とりあえずリンクのみですが、New York Timesが2011年2月25日付で配信したLiam Stackの"Egyptian Military Cracks Down on New Protest"という記事がAhmed Shafiq首相(当時)を退陣したムバラク大統領の代弁者とみなす人たちが再度の騒乱につながりかねない状態だったことを示しています(武装警察("military police")の性格や組織上の運用がわからないので軍の一部とみなすべきのが適当なのかどうかがわからないのですが、ムバラク退陣後は軍の実質的な指揮下にある警察部隊と見てよいのでしょう)。このあたりがEssam Sharafへの首相交代の伏線になっていて、エジプトでは国民的信頼をえている国軍も政治をコントロールするのに四苦八苦しているのが現状です。リビアのように内戦が生じる確率は、計算できないなりに低いだろうと思うのですが、エジプトでさえ、「一寸先は闇」の状態だということは留意が必要でしょう。


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2011年03月01日

中東・北アフリカ諸国の騒乱の向こう側

 先週は徹夜をして肉体労働でしたので、「寝言」も浮かばない日々が続きました。寝不足でリアルで寝言を言っていたかもしれませんが。周囲でも、腰を痛めて体が動かなくなる人が続出する有様で、一時的とはいえ、気候がよかったのが救いでしょうか。先週が「往路」なら今週は「復路」というところで、「往路」ほど肉体への負荷は少ないかもしれませんが、なにしろ時間がかかるので、過疎地ということもあって「時の最果て」も適当に放置するでしょう。

 それでも、なんとか9時直前には帰宅できたので、まあ幸せなのかなと。PCの前に座るのも、キーボードを叩くのも苦痛なのでNHKのニュースを見ていたら、トップが京都大学の二次試験の問題がウェブ上に流出した話とはちと意外でした。日曜日はさすがにぐったりして久しぶりに某巨大掲示板群のスレッドをざっと見ておりましたが、監督が適当なんだろうという意見が意外と多くて、今の国立大学法人や私立大学入試は知らないのですが、やや鬱陶しいぐらい監督者が巡回していて、ただでさえナーバスになっているところにあまりいい印象がなかった記憶があります。NHKのニュースは比較的、要点をついていましたが、手口もまだわからない部分が多いのにもかかわらず、『産経』あたりがネットで適当に情報を集めたとしか思えないネタを元に記事にしているのを見て、唖然としました。監督体制に責任があるという思い込みを前提にして記事を書くとこうなるという典型で、『毎日』も似たような雰囲気でしたが、まだ直接、問題となった高校生に取材したり、監督体制に問題ありというのを受験生に取材しているあたりは多少はマシかと。恐ろしいのは、文部科学省でありまして、手口がわからないまま、携帯電話対策を行うとのことで、大学が厳重な体制をとるのはやむをえないのかなと思いますが、不正行為と無関係な圧倒的多数の受験生には迷惑な話でしょう。バランス感覚が皆無という点では、『産経』や『毎日』あたりはネット世論(笑)と親和性があるのでしょうか(そのうち潰れるんでしょうけれど)

 予算がどうたらこうたらも騒がしいようなのですが、スルーでしょうか。昨年の参議院選挙で民主党が敗れた時点で今の状態は素人でも予想がつくので、一体、政府と与党の執行部はなにをしていたのだろうかと。「夏休み」と「冬休み」の宿題をやらずに、このまま「春休み」までとろうというのは驚くべき鈍感さです。無能にも程度というものがありそうなものですが。

 しかし、テレビや新聞ではリビア情勢はとりあげても、私のようにずれた人が関心をもつバーレーン、そして橋でつながっているサウジアラビアの情勢を取り上げているメディアは少なく、フラフラになりながら英字紙を追っていたのですが、不確定要素があまりに多く、断片的で、なかなか整理できません。当座は睡眠時間を確保して作業を進めないと、まずいので、まとめる余裕がないのですが、Foresight誌のサイトに池内恵先生の「中東諸国に走る社会的亀裂 リビア、バーレーンの大規模デモで何が起きるか」という記事が見通しがよくて、とても助かりました(無料コンテンツのようなのでリンクを貼っていますが、勘違いだったら、リンクも含めて以下の内容はお断りなく削除させて頂きます)。バーレーンが、王家の譲歩にもかかわらず、体制が覆るとなると、サウジアラビアも危機を迎える可能性が高く、まさに中東・北アフリカの"Years of Upheaval"へ突入するのだろうかと不安に感じておりましたが、ドライな分析を読むと、ごく個人的なことでバタバタしているときに、あたふたする必要もないのかなと思いました。

 世界経済上、サウジアラビアが最重要なのは言を俟たない。サウジアラビアがそう簡単に揺らぐとは、多くの専門家が考えていないが、今回の中東の革命の連鎖は、ほとんどあらゆる専門家の予想を覆してきた。米国にしても、サウジアラビアが石油を安定して供給できないほど混乱すれば、サウド家の支配を無理に支える理由はどこにもない。逆に、イラン、イラク、バーレーン、そしてサウジアラビア東部州までの「シーア派の弧」を民主化して新たな同盟国とするような可能性も(ここまで来るとほとんどSFのような事態であるが)、10年の将来を視野に入れれば、あり得ない話ではない。ここのところの、たかが2カ月ほどで生じた変化の大きさからいえば、それほど荒唐無稽でもない想定である。


 「民主化」を実施すれば、アメリカと同盟を結ぶことがかえって容易になるというのはなるほどです。他方で、西欧流の民主化がアラブ諸国で可能なのかどうかは私では判断がつかないです。その点を留保すれば、体制の崩壊と移行期を見るポイントが、(1)中間層の厚みと成熟度、(2)国民統合の度合い、(3)政軍関係のあり方、(4)米国や国際社会との関係というのは非常に整理されていて、欧米の解説記事でもここまで見通しの良い記事は、私が見落としているだけかもしれませんが、非常に珍しいなあと。ちょっと日本人離れした冷徹さがあって、私あたりの好みでしょうか。比較的、新しい記事ですが、Wall Street Journalが2011年2月28日付で配信したJoe Parkinsonの"Bahrain Protesters Pressure Rulers"という記事も、簡潔すぎる部分もありますが、バーレーンの人口の7割程度を占めるシーア派が王家が提示する妥協案に応じるのかどうか、今の段階では見通しが立たないのですが、かなりシビアな状況であることが伝わってきます。池内先生の記事やWSJの記事にもあるように、原油の問題も大きいのですが、なによりも、バーレーンが湾岸戦争後に米軍の駐留を受け入れており、アメリカから見て最もコントロールを及ぼしにくい地域であるがゆえに(ペルシア湾という地理的な位置も大きい)、原油には還元できない戦略的な要地であるのだろうと思います。もっとも、中東や北アフリカに原油が存在しなかったら、これほど注目しないのも否定はできないのですが。

 現状は、ありきたりですが、予断をもたずに情勢を見ていくほかないのだろうと。「丁寧に」観察する時間がとれないので厳しいのですが、日本語でも情勢分析が進んでいるというのは歓迎すべきことなのでしょう。他方、情勢の見通しが難しい状態が続いており、「中東・北アフリカ諸国の騒乱の向こう側」などというのは私にはわからないことだらけですが、いくつか気になる点を、時間がないので簡潔にメモしておきます。


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